77 あ、もしかしなくても私のせいか。
……まあでも、普通の貴族の対応としては満点なんだよなあ、これでも。
魔力は使わず、視線だけでイライラアピールをした後に、そんなことを考えた。
「……ささっ、話を変えるんだけど、ね?側近さん、早く起きて?いい加減、蹴るよ?」
にっこにこの営業スマイルに戻して、立ち上がって。
側近さんのことをちょっと足でつついた。
側近さん、反応はしてくれるのに、なんかさっきから起き上がろうとしないから、なんというかそう、ヘイトが溜まってたと言うか。
一触即発の雰囲気になった現場ですが、えー、未だ起き上がらない側近さんです。
「さーん、にーい、いー――」
「カヴィナっ、こら!」
「……へ?」
「人のことを蹴ったりしてはいけませんよ!ほらほら、足を退けてあげてください!」
椅子から立ち上がってこっちまで来た王妃様に、一同沈黙である。
……いややっぱ、この子もKYなのだろうか。
嘘だと言ってくれ、近辺にKY枠が多すぎる。たいっへん。
「……うーん?あのね、この人、起きてるんだよ、王妃様」
「?……はい、知っていますよ?」
「……ん??」
知っていますよ……あ、そういえば、気配とか足音とか訳わかんないことを前に、言っていたような。
「ん、ならなおさら、王様の前で寝たふりとか、不敬じゃない?」
「……でも、その方にも理由があるかもしれないでしょう?」
なるほど、確かにと思い直した私は側近さんの片腕、手首辺りを軽く踏んだ。
踏んだと言っても、軽く乗せたくらいである。
「ねえねえ、言い訳ある?今なら聞いてあげるよ?王妃様の慈悲で」
……用途としては、脅し?
頭の中で即決した行動だったけど、あ、もしかしたらこれも怒られるかと思い、王妃様をチラ見。
……したところ、どうやらその心配は杞憂だったらしい。
「申し開きがあると言うのなら今すぐ起き上がりなさい、デヴィット・フィニアンダ」
王妃様は、凄く“王妃様”な声色と表情でそう言った。
……わあ、かっこよ。
側近さんはザッと素早く立ち上がる。
……最初からそうしてくれれば良かったのに。
ちょっとイライラっとしてしまって、でもそう思ったのも、束の間。
「弁解の余地もありません……!!!」
「……」
側近さんったらもの凄い勢いで土下座したのだ、何の脈略もなく。
「……テディー商会長、此度は余の側近が申し訳ない」
「いや、良いですよ?別に気にしてないので」
黙った王妃様と私に、自分が出るべきかと思ったのか、王様が座ったままで謝る。
まあ、別に、うん。
私心広いから、気にしてないとも、うん。
「え、ちなみに側近さん、何で黙ってたの?王様になんか言われてた?」
真面目そうだったから、土下座から顔をあげただけの正座をする側近さんの近くにしゃがみ、からかうつもりでそう聞いたところ、首がもぎ取れるんじゃないかってくらいの勢いで首を横に振られた。
「そんなことは、一切ありません!!」
「……じゃあ、何で?」
びくっと怯えられてるところ悪いけど、いや本当、怒ってるとかじゃなくて、興味である、とても純粋な。
ちょっとの間、躊躇う様子を見せた後、側近さんは言いづらそうにそう言った。
「…………その、あなた様の魔力に、畏怖してしまい……」
「……ああ、なるほど。んじゃあ、私が悪いなあ……」
「どういうことですか?」
多分王妃様はあんまこういうことに詳しくない、というか魔力がそもそも少ないんだろうな。
魔力の多いひとならわかる悩み、あるあるである。
「魔力がある程度多いひとはね、自分より魔力の多い人といると、体の魔力がそれに感化されちゃって、で、体は拒否反応を起こすから、寒気みたいな、人によっては激痛だったりもするらしいけど、まあそういう状況ってことだよ、今の側近さんが、正に」
「……なる、ほど」
分かってるように見えない王妃様の反応に、ちょっと苦笑した。
……というか、いま、私が適当に頷いてた時の神様の気持ちがとてもよく分かった。
絶対分かってないだろって、分かっちゃうのか。
今度からもっと自然にしないと。
「動けないくらいってことは、魔力の相性が悪いのかな……?」
「え、あの……?」
いつも垂れ流しにしてる魔力も全部、しっかり体に押し込んで、側近さんの片手を握ってみる。
あ、何かピリピリするな。不思議。
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