75 いくら罵倒しても足りない
「んー。さっきも思ったけど、何で今日君、そんなに謙虚なの?」
側近さんの近くにしゃがむ。
もう起きてるはずなのに、何で狸寝入りしてるのか分からなかったから、頬をを指で数回小突いてみながらリーに話しかける。
というかさっきのもそうだけど、リーに対して色々疑問は抱えてたので、この際、と聞いてみたのだった。
「……俺はいつだって謙虚だが」
「凄い嘘つくじゃん」
「嘘じゃない」
素早く返された反論に小さく苦笑しながら側近さんを揺さぶる。
……まだかな。
「だって君一応、魔族領のラ位魔王国の代理魔族長でしょ?それも魔王様公認の。……なんで偉そうにしないの?」
ぺちぺち。
今度は頬を叩いてみる。
……本当に何がしたいんだろう、この人。
「さっきも言ったが――」
「それって、国の制度を魔族側から申し出て変えるとかいう戯言であってる?」
「……お前……戯言とか言うんじゃない」
リーは呆れたようにそう言う。
……いや、口にするのも面倒だから、さっさと自分の力で気付いて欲しいんだけど。
「え、リー、阿保になった?」
「……は?」
ちゃんと正気だってこと、態度で表しとこって思って、一端リーの方を見る。
しゃがんだまま、やれやれと腕を組んで肩をすくめて。
むしろリーに正気かとツッコミたくなった。
「ふー……問題。魔族の二番目に偉い人と、たかが人族の小国の王様。……どっちが偉いと思ってる?」
かなり、そうかなり、私は真面目にキレていた。
「リーはさ、ちょっと前まで魔族の一番だったんでしょ?私には敵わなくてもさ、一応はそうだったんでしょ?……そんな人が、たかが小国にお願い一つするだけでへりくだっちゃダメでしょ、馬鹿が」
「……お前、口が悪いぞ」
リーはそこまで言ってやっと反論を始め、なのに言わなくてもいいようなことを返す。
よって文句なんて受け付けてませんと言わんばかりに無視。
「魔族だよ、人間より強いの、アホンダラ。恐怖で支配するのは良くないけど、恐怖が全くないんじゃだめなの。知ってるでしょ、魔族長代理なら。仮にも世界で三番目に強いなら」
「……ふむ」
ちょっと言い過ぎたかなとは思ったけど、このくらい罵倒しても足りないとさえ思ってるし、後悔はしていない。
リーはそれまで腕を組むだけで。
すんごいお行儀よく椅子に納めていた足を、やっといつも通りに組んだ。
「一理あるな、お前の理論も」
「……は?正論ですけど?」
マジギレモードのまま、即座に言い返す。
リーは調子を取り戻して、その場で顔を歪め苦笑した。
「……ああ、そうだったな。魔族の方が……俺の方が強いのだったな、この場の誰よりも」
「私には劣るけどね」
水を差す気はなかったけど、ぼそっと呟く。
……多分側近さんには聞こえたんだろう。ぴくっと指が動いた。
「……で、手。……貸してくれるよね?」
立膝にチェンジして、見上げる形で手を差し出した。
わりかし近くにしゃがんでいたので、リーは座ったままでも手を差し出せば届いた。
もう片方の手で側近さんの服の裾を持つ。
「ベルちゃん、王子に自己紹介してな」
「……え?」
「……は?」
転移際に、後ろを振り返って声を掛けた時の二人の表情は結構面白かった。
読んでくれてありがとう!
いいね、ブックマーク、コメントなど、このお話を少しでも面白いと思ってもらえたら(主に作者のやる気アップに繋がるので)、評価の方よろしくお願いします。




