72 「こんな所で終われるか!」×3
「ねえねえキャロル、明日から私がいなくなったとして……どれくらいなら耐えられる?」
「意味の分からない質問をどうもありがとうベリーちゃん、ところで後にして貰ってもいいかな!?」
「全然いいよ~」
地下にあるキャロルとの秘密基地だけど、場所としては第一と王城の中間より第一よりの、ただ第二側妃様が王都から馬車で手軽にいけるくらいの距離にある。
この世界、実はちゃんとした地下室の作り方がなくて、まあキャロルを取り込んだ時に「できる?」って聞いたらやってくれたので発想の問題だろうけど、地下に部屋を作ること自体そもそもない。
この地下室を作った方法について聞かれた場合、私の無尽蔵な魔力とキャロルの器用さによる偶然の産物ですとしか答えようがないのが現状で、多分私一人じゃ……というか、この世界のこの時代の人たちじゃ作れないのだ。
ま、その辺は省くのだけど、今はキャロルとベルちゃんがそんな地下室の一つでバチバチに争っていた。
「キャリーはもっと走り回りな~?」
「あとでっ、聞くから!!――黙って、てっば!!」
ベルちゃんが火属性一本だからだろう、キャロルは土属性しか使っておらず、んでもってあんま動こうとしないで突っ立っているんだから、まあこの結果は妥当だろう。
……走り回ろうと思えば魔法を発動させながらでもできるんだろうけどね。
そのくらいの器用さが、キャロルにはあるのだった。
多分、魔法を教えたら飲み込みが早いどころじゃなくて、吸い込むくらいの勢いがあったってことだろう。
ベルちゃんの髪の毛は薄く光っていて、周りで燃え盛る炎の帯やら渦やらと見分けのつかないくらいに同化して見えた。
「ベルちゃんは息をするための酸素にもっと気を使いなー!?今も息止めてるでしょ~?」
そう助言して一瞬で、ベルちゃんの周りにあった炎たちはキャロルを囲み、新しいベルちゃんの周りの炎は、確実に1メートルより遠い位置にできあがる。
「――はい!」
……やっぱり飲み込み早いなあ。
ベルちゃんが攻め、キャロルが土の壁やらで押しつぶすという攻防戦が繰り広げられている中、私はそう思った。
私はと言うと、二人の戦う部屋の壁近くにて木の椅子を浮かせて座っており、すっかり高見の見物状態である。
……まあ、飛び火しないように避けたりだから、何もしてない訳じゃないけどね。
ベルちゃん贔屓で助言したりしてるし。
私が12時過ぎに帰宅してからかれこれ1時間。
その時すでに戦い始めていた二人は水飲み小休憩を挟みながらもぶっ通しでここまでやっていた。
見始めた時、土属性で手加減ありのキャロルに押されていたベルちゃんの姿はもうなく、今じゃあ本気を出してないといえども土属性一つだけじゃあ物足りないと言いたげな笑顔である。
「キャリー!そろそろ帰りたいから、光属性も使っていいよ~!!」
「――……いいんだ、そう……?」
そうキャロルが小さく呟いた瞬間に、キャロルとかなりの距離離れていたはずのベルちゃんは地面に伏しており。
「――はい、一丁あがりっと」
反対にキャロルは相変わらず突っ立ったままで、勝敗は一目瞭然となっていた。
ベルちゃんには何が起きたかすら分からないだろう。
……ただ、予想はしていたはず。
キャリーの髪は亜麻色だ。
髪の色で属性の判別をするこの世において、キャリーの明るい亜麻色は白に近いとされる。
私としてはいまいち納得しがたいし、もっと言うなら薄茶っぽい色だから橙の土か黄色の雷、あるいは黒の闇じゃないのって感じなのだけど、多分髪色のこともあって色感が合わないんだと思う。
この世界の人にとって、白、赤、橙、黄、緑、青、紫、黒の8色の中で一番亜麻色に近い色は白なのだ。
納得うんぬんは置いておいて、つまりはキャロルが髪色を隠そうとしない限り、得意属性が光だということが初見の他人でも分かるということである。
当然、ベルちゃんにも。
髪の色とか目の色とか、外見変更で色々いじった時に反則だとかずるいとか言ってくるけど、一般人からしたらキャロルだってチート扱いになるのを忘れてはいけない。
得意でもない土属性で十分戦えるくせに、第二形態の光属性まであるとか……いや、雷属性も闇属性も使えたんだったか。
てことは、第四形態まであるの?
……いや、そんなの最強じゃん。
反則じゃん……てかそこまでいったらもう、ラスボスでは?
「んじゃベリーちゃん、口止めと例の“設定”の話はしといたから。私もそろそろ限界だし……んじゃ、おやすみ」
座っていた椅子を片付ける片手間に、そう言って出て行くキャロルの背中を眺めなていた私はふと、とあることを思い立って、凄く追いかけたくなった。
……もしかしてキャロル君、オールしてたの?
よくよく振り返ってみれば、得意属性ではないといえ動きや反応が鈍かったし、まさかのまさか、である。
なにか興味のあることでも見つかったのか、まあ知らない。
知りたいとも思わない、が。
てか、結局「あとで」って言われたこと聞くの忘れてたけど……まあ、今度でいいか。
「ベルちゃん、ベルちゃん……?」
指で小突いてみるけど、気絶してるなあコレ。
よっこいしょ、とベルちゃんを担いで、私は転移した。
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