65 お姉ちゃん(自称)
「あ、え、ごめん。あの、いやなら、いいんだけど……」
「……いえ別に、それくらいなら良いですよ」
そんなに駄目だったかと思ってちょっと焦る。
けれど、ルー君は躊躇ったことなどなかったかのようにサッと手を差し出した。
お昼までやれることと言ったら勉強か仕事なのだし、暇だし?
手を両手でとって、むにむにする。
「……それ、何か楽しいんですか?」
「え?楽しいよ?」
しばらく私の様子を静観していたルー君は、ふと思い出したかのようにそう言った。
「会った時に比べて大きくなったなあとか、固い手になったなあとか、見てても触ってても面白いし、楽しいかな」
「……そうですか」
「君が良いって言ってくれさえすればハグするんだけどねえ、駄目なんでしょ?」
「駄目というか、嫌です」
頑なだなあ、と思って苦笑した。
前は甘んじて受け入れてくれてたのに、最近はよっぽど久しぶりでもないと駄目みたいなのだ。
思春期が来ちゃったのか。
それが理由なら、本気で思春期なんて一昨日きやがれだが。
お姉ちゃん(笑)は悲しいよ、ルーク。
「あ、じゃあ頭撫でるとかは?」
「……まあ、まだ?」
「ん、こっち来て」
「……――っ!?」
「…………わあ、バレた」
頭に置いた手が数秒持たずに離れた。
無論原因は私である。
……いやハグくらい良くないだろうか?
何をしたかというと、手で頭を抱き寄せたというか、引っ張ったのだ。
寸前で身を引かれたから未遂。
「やめてください」
「……ん、そんなに嫌?こないだは許してくれたのに」
「嫌です」
――反抗期だ。
パッとそう思った。
……なんか、ルー君にもあの子に重なる部分があるんだなあ。
「酷いなあ、一年前みたい。……なにかあった?」
「……別に、何もありませんが?」
言われて見れば確かに、何の脈略もなく出た言葉だったけど、思い始めたらそうとしか思えないのが人間である。
じいっとルー君の深い闇みたいな黒の目を見つめた。
ルークは表情一つ変えずに、そう返した。
……んー?
いや、迷走してきたぞ。
何で今、そう思ったんだろうか、私は。
「ちょっと、ごめんね?」
「……?」
何が理由で、と思って両手でルー君の頬を触った。
ルークは私にキスをする気配がないのを察知したのか、今度は抵抗しなかった。
あ、分かったかも知れない。多分なんというか、その――。
「人間不信がぶりかえしてる?」
「……?」
多分、私は自分で思うより焦っていたようで、『人間不信』というこの世界にないと知っている言葉を、自分用語を出してしまったことにすら気づかなかった。
だって次の瞬間にはもう、私は怒りやら焦りやら、いろんな感情を混ぜて立ち上がっていて。
「――何があったか、正直に話しなさい、ルー」
「…………」
なけなしの理性を駆使してできることと言えば、真顔にならないように意識することと、オーラ的なアレを出さないように気にすることくらいだった。
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