64 記憶喪失
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。
「……うるっせえ」
おっといけない、お口が悪うございました。
げふんげふん。
頭の中に響く音で目が覚めた。
テディー魔法にて確認してみると、うん、ぴったりだ。
時刻は7時。
丁度いま、定時報告の頃かな。
ベットから起き上がる。
鬱陶しいと思うくらいには長い、白い髪が垂れた。
……あれ、私、髪ほどいたっけ?
でも髪ゴムが棚の上に置いてあって、やっぱ私がやったんだろう。
時間に猶予がある訳でもないし、面倒に思ってしまって、ポニーテールにしてみた。
毛束が一つしかないのって新鮮である。
「ん、そしたら……ありゃ?私ミスったか?」
頭で考えていたのは、今日の予定についてである。
ミーのもとへ来て寝てしまったけど、ベルちゃん受け取ってからじゃん。そういえば。
……しくったぁ。
そうだ、そうだよ、そういえば。
ベルちゃんを受け取るまでは魔力の増強と例の魔法の研究しよって思ってたのに。
……どうしようか。
帰ってきたはずなのに朝ごはん前にいなくなってたら不審に思われるよね。きっと。
でも、帰ってきたくせにまた出かけたら、おかしくないか?
……いいや、もういいや。
時間に猶予があるとは言えないけども、好きな人たちと朝ごはんを食べられるんだから、別に、うん、いいや。
「あれ、ルー君?」
「……おはようございます、カヴィナ様」
台所に誰かがいるな、見覚えのある頭だ、と思ったら本人か。
話しかけて見れば驚いたように目を丸くされた。
……ん、なんで?
むしろ驚いて飛び上がりそうなのはこっちなのだけど。
「今回は早いね?なんかあった?」
「……すみません、今、定時報告で」
「あ、あとででいいよ」
別のところに意識を向けながら喋ってるなあと思ったけど、よく考えたら今定時報告してるのか、申し訳ないことをしたな。
「……」
ルー君は食卓についていたので、机を挟んで反対側の席に座った。
しばらく待って。
多分、7、8分くらい?
ルー君が空気のどこかに触れるような手ぶりを見せたので、終わったと予想する。
「ん、ごめんね?邪魔しちゃって」
「……いえ、大丈夫です。何か御用で?」
「や、朝ごはんどうしよっかなって思ってたとこだよ」
それにしても、約一ヵ月ぶりかな。
めっちゃハグしたい。
凄く抱きつきたい。抱きしめたい。
……いいかな?
「駄目です」
「んえ、何の話?」
「そこから立たないでくださいね。あるいは机よりこっちに来ないでください」
「……意地悪」
拗ねたような声でそう言えば、ルー君はちょっと気まずそうな顔をする。
……の割に、椅子ごと私から遠ざかっていないだろうか。
「あ、じゃあさ、じゃあさ?」
「……はい?」
「て、貸して?」
「――……」
凄く自然に言ったつもりなのだけど、ルー君は何故か固まった。
……え、何で?
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