59 保険のイヤリング
明日の午前は出せないなんてこと絶対ないので!
ご安心ください!
「……は?」
「シーッ!小さな声で話して、リー」
指定した場所とずれていないことにまず安堵する。
転移した先は、王城の庭。
メイドちゃんもとい、アンを助けたとこだ。
呆けているリーを放って、歩き始める。
もう既に、完全に日は昇っていて、時計塔は5時過ぎを表していた。
「……おい待て、カヴィナ。ここはどこだ?」
「え?アンドレアスの王城」
「……は?」
この辺りの草を漁る。
噴水の真ん中にある石造の向いている方向に直線を引いたときに5番目にぶつかる花壇の下だから……多分、この辺りだと思うんだけど。
「おい、何をしている?」
「んー?探し物、かな?ほらこれの、片方をなくしちゃったんだよね」
そう言ってリーに右耳を見せる。
着けていたのは、白い花飾りのイヤリングである。ただし左耳にはついていない。
「……あ、あった」
「そんな簡単に……って、本当にあったのか?」
しゃがんで早々に目当ての物を見つけた私を、リーが驚いたように見つめる。
立ち上がると手の中を覗き込んできた。
「?……そりゃあるよ?」
「そんな簡単に見つかる物を失くしたとは言わん」
「いやまあ……保険だしなあ」
大事な物の方が良いかと思ってこれにしたけど、結局要らなかったし、違うのにすれば良かったな、と今更ながら後悔した。
「……どういう意味だ?」
「そのまんまだけど?あ、ちょっとこっち来て」
言えば、すぐにリーはずいっと寄る。
「それで、保険とは一体――」
「“転移”」
「……は?」
さっきまでの『は?』との絶妙な違いを感じた私は、あーこれ怒ってるなあ、とどこか他人事のように思った。




