54 カヴィナ・テディーは知っている。
ちょっ、あの……やっぱ変更で、おねしゃす。
1時と、13時で。
間に合わないです。お騒がせしてすみません。
「……ないな」
「ないですなあ……」
「やっぱないか……」
「「……!?」」
しれっと会話に混ざってみた。
リーは勿論のこと、一緒に探してくれてたらしいおじいさん(?)の体も跳ね上がる。
「……カヴィナお前、今転移を使ったか?」
「うん」
「ティファニー様、そちらのお方は……?」
とりあえず角生えてるし魔族だと思うので、魔族の礼式に則り、胸に両手の手のひらを重ねてお辞儀をした。営業スマイルに見えない営業スマイルもばっちし。
キャロルに教えて貰った雑学によると、昔の武器なんか持ってませんよアピールらしい。
「人族の国で商人をしている、カヴィナ・テディーです。初めまして、おじ様」
「……これはこれは、どうも丁寧に、ありがとうございます。私はこの国の宰相を務めております、バルティモアラスト・アダ・ラパレットと申します」
静かに目を丸くしたあと、見てる側がほっこりするような優しい笑顔でおじいさんは笑った。
ただ私は知っている。この人がリーの同類で、とっても腹黒いってことを。
おじいさんは私と同じように手のひらを重ね、礼をした。
……ふむふむ、もう少し頭を下げる時間は短めでいいのかな。
胸に手を当てなきゃいけない訳でもないらしい。あるいは女性と男性で区切られてるとか、ありそう。
手を重ねたままに少し俯く。儚い子アピール。
てか、アダって。普通に偉い人だ。こっわ。帰りたい……。
「アダ位の方でしたか、それは失礼。ただ事態は急を要しておりまして、砕けた口調にさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ」
一回瞬きをしたら、すぐに気持ちも考えも改める。
全て塗り替えて、上書きする。
「……リー、リー。印鑑を最後に見たの、ちょうど今年の冬で合ってる?」
「ああ。何故知っているのかは知らんが。それとお前、こちらの礼儀作法を知っていたのもそうだが、礼儀というものを知っていたんだな」
「…………死にたい?」
「冗談だ」
なーんだ、冗談でしたか、そうですか。
面白がるような顔でニヤニヤしながらいうものですから、ね。
ちょっと、うっかり、本音が。
「……ね、書斎ってどこ?」
「俺の書斎か?」
きょろきょろ廊下に出て見渡してみた。
当然初見なので分からない。
「ん、そう。確かね、リーは書斎の入って右の棚の、上から二段目、右端の本を奥まで押し込むと出てくる秘密基地の、三階の、歴史に関する禁書が収まってる部屋の第三番机の下から二段目の引き出しの奥に魔族長の印鑑を置き忘れたんだよ」
「……ちょっと待て、何故知っている?というか、ここにはこいつもいるんだが」
よく分からないことを言われたので、首を傾げた。
「ん?ラパレットのアダ位って、リーの仲良しさんだけじゃなかったっけ?」
「……本当に、お前にはどこまで見えてるんだ……」
なるほど、これも気持ち悪いの対象になるのかと思い、とりあえずかわい子ぶることにした。
くすっと小さく笑って、口元に手を寄せて、ちゃんと笑った。
「見えてるんじゃなくて、知ってるんだよ、リー?」
「「……」」
多分、二人とも結構引いていた。
ドン引き状態。
まあ、否定するのも面倒だし、いいかなあって。
どうせリーは薄々感づいてたんだろうし。
言いふらされるならともかく、知られてるのは別にいいもん。
「あ、バレッティ・アヴァンさまも黙っててね?」
「……」
おじいちゃんは黙る。
……そう、私は知っている。
ラパレット家のアダ位が一人で、その人がリーの弟だってことを。
魔法で変装してるんだよね。
心底大好きなお兄ちゃんのために。
家督争いを起こさないために。
「……で、リー、早く取ってきて。私今結構忙しいから」
「…………ああ、分かった」
リーはもの言いたげな顔をして部屋を出た。
……さて、次は王子のとこか。
あ、リーに一緒に来てって言うの忘れてたな。
……うーん、頭がパンクしそう。やること多すぎ。死ぬ。
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