53 魔王さまの権利と義務
ちょっと11時は無理でした。
「えっと、ひとまず、好きに呼んで頂いて構いません」
「あ、本当?」
「……ただ、その……それで、良いんですか?」
「うんっ」
「何がしたかったんだ?」
……君にだけは言われたくないかな、リー。
「あ、でねー、私がここに来た理由なんだけど、『奴隷を返せ、こちらも返す』って感じの書簡?それを書いて欲しくって……」
「分かりました」
「持ってくる、魔王様はここで待っていてくれ」
リーが退出する。
少しの間沈黙が訪れた。
「ねえディラン君、リーに言われたか分かんないんだけどさ?」
「……?」
「君は魔王だから、沢山の義務に縛られることになる。戦争をする時は絶対に前線に出なくちゃいけないし、みんなの不満はカバーしたり、時に解消させたりしなくちゃいけない。……でも」
ディラン君が余りにも真面目な顔をして聞いているから、“悪戯っ子の笑顔”で笑ってしまう。
「君が魔族の領で好き勝手するのを止められる人はいないんだ、ディラン君」
「――……!」
「全員が全員、君に好意を抱く訳じゃないかもしれないけど、君のその目と髪の色は、君が魔王である証なんだからね」
「何の話だ?」
「あ、リー」
リーが戻ってきた。
何の話……何の話だろうか。
「まあ、世界が少しは良いと思える現実の話かな」
「……何を言ってるんだ?」
「期待通りの返事をありがとう、ティファニー・リー・トランペット」
やっぱりリーもKY枠だな。
漫才より、多分だけどそっちの要素が強い。
「……なんて書けば良いでしょうか」
「とりあえず、態度が高圧的じゃなければいいや」
「分かりました」
「もしかして、印鑑証明も要るか?」
「……あー、持ってる?」
「探してくる」
またもリーは部屋を出た。
じいっとディラン君の手元を見つめる。
私と同じくらいの小さな手が、羽ペンできれーな文字を書いていた。
……うん、やっぱり完全日本語。そういうものなんだろうね。
サラマンダー様のとこで、滅茶苦茶意気込んで字を覚えようとしていたあの頃が懐かしい。
見られるのが気まずくなってか、ディラン君はこっちを伺うように見る。
パチッと目が合った。
「ん、続けていいよ?」
「いえ、あの……」
「……あ、もしかしてやりづらい?」
「…………すみません」
「ううん、大丈夫……ちょっとリーを手伝ってくるね」
申し訳なさそうにそう言われて、こっちとしても大変申し訳ない気分になったので、駆け足で部屋を出た。
読んでくれてありがとう!
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