52 主人公の真似事じゃないけども
ちょっとすみません、無理でした。
明日こそ頑張ります。
「んー。奴隷っていうのはね、首輪つけられて働かされてる人たちのことかな。魔族の奴隷も人族の奴隷も、もっと言えば翼人族の奴隷だっている。辛くても、面倒でも、やめたくてもやめられない。魔法で命を握られて、死にたくたって死ねない人たちを奴隷って言うんだ」
心の優しい魔王さまは顔を歪める。
「彼らは望んで奴隷になっているんですか?」
「ん、勿論違う。中には親に売られた子だっているかもしれないけど、奴隷は職業じゃないからお金ももらえないしね」
「……」
うん、誰が望んで奴隷になるかよって話なのだ。
奴隷制度が残っているのは、貧しい家庭にとって売れるものが労働力しかないからである。
つまり人口を維持するため。後は労働力の確保、とか。
「でもね、魔王さま。魔族の領にも攫われて奴隷になっている人族の子が一定数いるんだ。……どっちが最初に悪いことを始めたのかはもう分からないけど……どっちかが言い出さなきゃこの論争は終わらない。そのための私だから、どうか思う存分利用してね」
ディラン君は困惑していた。
多分、『助けてあげたい』と『できるか分からない』が揺れてるんだと思う。
ちなみにリーはどうでも良さそうに遠くを見つめていた。おい。
「……あなたの、メリットは?」
「ん?」
「あなたがこの件に関わることで得られるものは、何でしょうか?」
「……なんだろうなあ?」
「…………」
メリット。メリットかあ。
ちょっと考えてみる。
ただ、そもそも私の行動理由は基本『好きな人たちのため』だ。
それがメリット。利点。
てか私、結構適当に動いててもメリットが発生してるんだよね。多少運が良かっただけ、なんだけど。
「今回奴隷をちょっとでも取り締まれるっていうのは、まず私の部下の心の安寧が得られるかな」
勿論ミーのことである。
「でもって、私の国は他より一歩進むことになるから、王家に結構大きな貸しがつくれる」
そもそも王妃様の件とかあるし、大体は協力してくれそうだけども。
「最後に、私の気分が良くなる」
「……」
ディラン君は目を丸くしたまま惚けていた。
「ああでも、申し訳ないって思ってくれるなら、一つお願いしてもいい?」
「――駄目だ」
返事をしたのはリーである。
「……君に聞いてないんだけど」
「お前は得をしているのだろう。矛盾してるぞ」
「良いじゃん、厚意くらいのお願いだよ?本当だよ?」
「……聞きましょう」
リーが答えるより先にディラン君が答えた。
多分、ディラン君が意見をきちんと言ったのは、これが初めてなんだと思う。
てか私も驚いた。
「たとえ一国からでも、少しづつでも、僕は人族と手を取り合っていきたいと考えています。……なので、1つなら、どうぞ」
「……そう?」
びーっくりしたあ。
不安そうな黒目がいきなりステラみたいな澄んだ目に変わった。
……ディラン君の中で何かが変わったんだろう。
リーは不満そうにこっちを睨んでいる。
多分無茶なことを願うなよ、という牽制……かな。
とっても無用な心配である。
いや、だって、主人公の真似事じゃないけども、私が頼みたかったのは――。
「じゃあ、ディラン君って呼んでもいい?」
とっても利己的なお願いだったのだし。
「それだけですか?」
「おい、もう少し欲張っておけ」
「……だから君はどっちの味方なの!?何がしたいの!!?」




