49 聞こえますか?いま、あなたの心に直接命乞いをしています……。
「……ふむ?」
“メニュー”で地図を開いてみたのだけど、ここ、他国だな。
それも反魔のところの反対側?
うわあ、最悪。
いや別に、転移すればいいのだ。距離が遠かろうと魔力は有り余っているのだから。
……ただ、問題が一つ。
ここに知らない人が馬車ごと倒れております、どうしましょう。
血がドバドバ出てまして、放っておけば死にます。多分。
馬は既に逃げ出している模様。
人が通りかかるような気配もなく、ええ、どうしましょう。
何なら問題が今増えました。二つになりました。……わあ、二倍。
魔物……ドラゴンかな?なんなのかな?
もしかして、君がこの馬車を転ばした犯人だったりする?
うっわあ、面倒な。
【貴様か、我が子を葬ったのは】
おん?
なんか、声が聞こえてきた。
……幻聴かな?
ちょっときょろきょろしてみるんだけど、あたりには馬車に半分下敷きになって血がドバドバ出てる、男の子(?)しかいない。
魔力の反応もない、と。
……幻聴か。
「とりあえず……“固~い結界”……“あっち行ってて”」
【!!?】
ドラゴンが入ってこれないように結界を張る。
ついでくらいに、馬車邪魔だなあと思って呟いた言葉がポーンと馬車を飛ばした。
……もう見えないし。
うん、これは盛大に力加減ミスったな。
ちょっとしゃがんで、男の子(?)に手をかざす。
「“治って”」
……これでいいね?
すっくと立ちあがった。
よし、あとは転移で――。
【ま、待ってくれ!命だけは!!】
……幻聴が悪化したかもしれない。
いやどういう状況なんだよ、こんな野太い声の奴に命乞いされるとか。
私の想像力は果てるところを知らない。
字的にも、どちらかと言うと妄想力な気がするけど。
【詫びならする!どうか見逃してくれ!!】
ちょっと考えた。
……もしやこれ現実?
でも、どこから声が聞こえてるか分からないんだよな……。
「ちなみにさ、君、今どこいるの?」
【……?……貴様の目の前にいるだろう?】
「目の前?」
え?っと思って周囲を見渡す。
相変わらず、存在を忘れかけていたドラゴンしかいない。
……存在を忘れかけてた?
「ん、君ってもしかして、魔力がないの?」
【ないが?】
「……なるほど、そういうことだったのか」
【……?】
ああ違うのだ、ドラゴン=声の持ち主って気付いてなるほどなんじゃなくて、ドラゴンが魔力探知で引っかからないのはなんでかようやく分かったなあって意味のなるほどである。
そりゃあ、いくらきめの細かい網があったって、空気を通すんじゃ引っかかるはずないよね。
「え、私って君の子供殺したの?」
【……おそらく、としか言えん。少し前に我が子の力が戻ってきたのだが、その時感じた物とよく似た反応があったので参った次第である】
少し前?
ドラゴンの少し前ってどのくらいだろうか。
これは私の主観で答えても大丈夫なやつなのかな?
「はへえ、じゃあ違うな。私ついさっきまで寝てたし」
【それはすまなかった。……ところで、我を見逃してくれるのか?】
思わず点々々……である。
「見逃すって、私、君を殺そうなんて思ってないけど?」
【そうなのか!?それなら――】
「あ、嘘。ちょっと用事を頼んでも良い?」
【……なんだ?】
大きなドラゴンの体が、突如として思いつきのように(まあ思いつきなのだけど)そう言った私を警戒するように身をすくめた。
「この子が目を覚ますまで見守っててくれる?で、起きたらこの山を下りるまで見ておいてあげて」
【分かった。それだけか?】
「ん、大丈夫。じゃあ私、もう行くね」
【ああ】
転移先は、リーのもと。
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