44 可能な限りのお膳立て(リリアンヌ視点)
「――着きました、パラルフィニアー夫人」
「ありがとう」
これまた丁寧にお礼を言って、シャーベティ・パラルフィニアーは馬車から下りた。
「やはりあなたは不思議ですね。第二側妃様」
「……そうかしら?」
「激しく同意です」
青色の髪の方が頷く。
「王族なのに傭兵や使用人を馬車に乗せるところとか、業者にすらお礼を欠かさないところとか……」
「普通じゃない?それに、イリアネスは子爵家の令嬢なのよ?」
「行き遅れですけどね」
「あ、こら」
そうだとしても、使用人である者に対して砕けた対応をできる貴族というのは少ない。
と言うか珍しい。
こういうところも雨実に似てるわ。
同じ転生者だからなのかしら?
しばらく城の中を歩くと一つの部屋に通された。
「それじゃあキャンドルさん、この部屋でイリアネスと待っていてくれるかしら。わたくしは話をつけてくるわ」
「分かりました。あと言い忘れてましたが、リリーで構いませんよ。さんも要りません」
黄金色の眼が瞬きを繰り返した。
後に、頬を緩める。
「いいの?ならそうするわ、リリー」
そう言って、シャーベティ・パラルフィニアーはあたしたちを置いて部屋を出た。
「「……」」
……ん?
え?
なんでこいつも残したのかしら?んん?
会話が弾むとでも思ったの?
まさか雨実と同様にお前も阿保?
「あなたは強いんですか」
「……」
別に話そうとしなくて良いのだけど……。
「とりあえず、裏の舞台では一番だと自負しておりますよ」
「そうですか」
「……」
黙る。
ひたすら黙る。
その後も話すことなく、ただ静かな時間を過ごした。
暇ね。
しばらくして、ガチャッと音が鳴った。
領主……エイダン・パラルフィニアーとシャーベティ・パラルフィニアーが部屋に入って来たのだ。
従者の鏡とでも思えばいいのか、あたしと同じようにソファに座ってくつろいでいたはずの青髪の女はすぐさま立ち上がり壁に寄った。
領主とその従姉弟が何の用だと思ったけど、彼らに続いて続々と人が入ってきた。
……会議でもするのかしら?
なんでこんなに大量にソファが置いてあるのかと思っていたけど、きちんと用途があったのね。
「リリー、貴方はこっちよ」
一番奥の領主と同じ席についた側妃が、自分のすぐ近くを指名した。
……仕方ないわよね。
あたしの席も誰かが座る予定かもしれないもの。
立ち上がり、背筋を伸ばして座った。
貴族の真似事をする、『所詮は傭兵』を心がけた。
段々と席が埋まっていく。
人が増えていくにつれて、あたしを見定めるかのように凝視する視線が増えてきた。
中には、第二側妃の横にいる小娘は誰だと小声で話す者すらいる。
……茶番ね。
雨実の記憶にあった、小説の断罪待ちみたいな気分だわ。
そうだとしたら悪役はあちらでしょうけれど。
読んでくれてありがとう!
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