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43 進行する同一人物多すぎ問題(リリアンヌ視点)


「お待たせしました」

「――!」


艶やかな赤い髪をした女は振り向く。

どうやらあたしの声に驚いたようだった。


……普通に出れば良かったかしら?


「イリアネス!」

「はい」


ローブを脱いだらしきその女はどこかに声を掛ける。

すると即座に、どこからか明るい青の髪を持った女が出てきた。


「ええと、キャンドルさん?でいいのかしら」

「ええ。お好きにな様に、シャーベティ・パラルフィニアー第二側妃様」

「……気付いていたの?」

「勿論」


……ていうか、隠す気あったのかしら?

()は全ての知人に魔力のピンを打っているから分かったみたいだけれど、そうでなくても魂の質が同じだったもの。


「紹介させて頂戴、キャンドルさん。彼女はイリアンシンス・ライド」

「初めまして、本日はよろしくお願いします」


丁寧にも、イリアンシンスと呼ばれたそいつは平民のあたしに礼をした。


「そしてイリアネス。彼女はリリー・キャンドル……偽名なのよね?」

「……え?」


すごく怪訝な表情で見られてるわね。

まあでも、どうせ次に会うのはカヴィナ・テディーとしての雨実(“私”)でしょうし……。


「そうですよ、偽名です。一応顔見知りにバレると怒られるので。ではお二方、どうぞよろしくお願いしますね。準備は終わっていますか?」

「ええ、大丈夫。あそこに並んだ馬車と5台、あとはわたくしたちだけよ」

「なるほどそれはそれは……チッ、これ間に合うかしら……」


こっそり舌打ちをしてしまった後で後悔した。

……あたし、独り言が多いのよね。


「……?何か言った?」

「いえいえ、何でもないです。混乱を避けるためにも、転移先はパラルフィニアー領の首都……現在、領主がいる場所の門前でいいでしょうか?」

「ええ。けれど、あの、魔力は大丈夫なの?先程もわたくしの転移に使ったでしょう?」


少し瞬きをした。


……ああなるほど、魔力、確かにそうだったわね。

転移を魔力でやろうとすると、消費が激しいのだったかしら。


「私が使っているのは呪力なんですよ」

「……え?」


怪訝な表情を浮かべたのはシャーベティ・パラルフィニアー。


「魔力もあるにはあるんですが、何分少なくて」

「……あの、わたくし、国に仕える貴族なのだけど?」

「どうぞ見つけられるものなら。変装は得意なので、ご安心ください」


パチンッと指を弾いた。

途端に景色が移り変わり、気がつけばどこかの野原にいる。


初めて体験した転移のこの瞬間の驚きと言ったらそれは大きいもので、体験している側も見ている側も面白いのだけど……。

様子を見るに、生憎この二人は体験したことがあるらしい。


「……無呪文もできるのね」

「はい。見かけはなんら魔力と変わらないでしょう?呪文を口にさえしなければ、案外バレないんですよね」


魔力と違って、呪力の有無は検査を義務付けられている。

それも、ほぼ世界中の国で。


……危険なのよね、呪力って。

神力と反対の力だし、悪意がある程力を持つもの。


「シャーベティ様、そろそろ向かいましょう」

「ええ。行きましょう、キャンドルさん」


青い髪の……イリなんちゃらの方が声を掛けてきたので、馬車の中で混乱している者たちも含めたあたしたちは、少し馬車を走らせた後にパラルフィニアーの首都であり城下町でもある町の門をくぐった。




内心)まあ、あなたはその顔見知り側なんですけどね?

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