41 気分は五度見。(キャロル視点)
二人とも頭いい設定なので話が飛躍します。
解説はあとがきを読んでください。
「……えっと待って頂戴、どういうことかしら?」
「うん?え、違った?」
「違うわ」
バッサリ切られたし。
なんだ、心配して損した。
「ん、なら良いんだけど。じゃあ、眠りにつくっていうのは?」
「……説明が難しいのだけど。私たちは今、お互いが譲り合っているの」
「……うん?」
「分かってないわね?」
「うん」
「……そう」
いや、そんな目で見られても困る。
譲りあってる、とは?
さっきから分からない言葉がありすぎて、こっちだっていっぱいいっぱいなのだ。
「二つの魂が共存しているというのがそもそも不具合なの。つまりどちらかが体を使っているときは使えないし、無理やり体の権利を奪ったら、元々体にいた方の魂は出てこない。……分かる?」
「うん」
リリアちゃんが手のひらを天秤のように上げたり下げたりしながら説明する。
……うん、よく分かった。
今はリリアちゃんが出てきていて、ベリーちゃんは出てきてないってことだ。
「……つまり、君たちは不具合に不具合を重ねてるってこと?」
「よく分かってるじゃない」
少し目を瞬いた後、リリアちゃんはそう答えた。
……わあ。
すごいこんがらがってきたな。
「……そういえばさっきあたし、あなたの名前を呼んだわね」
「ん、その通り」
「まあ、大体当たってるわ。強いて言うなら、重ねた不具合はどちらも意図的に起こっているってことね」
ちょっと最悪を考えて反応してしまった。
え、『魂が共存』っていう不具合なんだよね?
で、それに重ねて不具合を起こしてると。
それが両方とも意図的?うん?
……だって、魂なんて次元でもろに干渉できちゃう人って。
どう考えても、どう足掻いても……。
「ちょっと待って欲しい……。もしかして、神様とか出てくる?」
「正解」
「わあ~……」
やっば。
……でも心のどこかで、一瞬なるほどって思ってしまった。
「じゃあさ、やっぱ本体は君なの?リリアちゃん?」
「ええ、そう」
「はえ~……」
……でもそういうことなら、やっぱり『流石ベリーちゃん』で合ってたじゃんか。
「話を戻すのだけど、眠りにつくっていうのは、体を使える権利を一時的に手放すってことよ」
「……うん、なるほど?」
「……言い換えるなら……意識を沈める、かしら。今までは水面に顔を近づけて情報を入手していたのだけど、それをやめて完全に沈むの」
「……なるほど。それなら確かに『眠る』ってのはぴったりだね」
不安定な天秤のまま、一応は釣り合っていたものの片方が、完全になくなる。
――すると、どうなるか。
もう片方に傾く。
今度はもう、揺れることなく静止する。
「でもじゃあ、君の魂はどうなるの?」
「……あなた、本当に頭が良いのね、雨実みたいだわ」
「…………そう」
ちょっと、メイド時代を思い出した。
苦々しい気分になって、リリアちゃんから視線をずらす。
「それでね、私の魂はあなたの予想通り、この世から消えるわ」
「――」
なんとそこにきて、苦々しいなんて思いを吹き飛ばすような爆弾の投下である。
思わずリリアちゃんを二度見した。
気分は五度見。
「……え、それでも幸せになれるって決まってるの?」
どうしてそこまで軽々と、自分の体というものを手放せるのかと考えて、幸せが確約されているのだろうかって思い直した。
流石に、『ええ』って、『うん』って――、
「……いいえ」
ハッピーエンドを、教えて欲しかった、んだけど。
解説
〇『不具合に不具合を重ねている』について
まず大前提として、カヴィナ・テディー(ベリー)とリリアンヌの共存は、不具合の上に成り立っています。
次に、リリアンヌはキャロルの名を呼びました。
つまり、リリアンヌはカヴィナの活動時にも情報を仕入れられていると分かります。
また、二人の魂は釣り合っていて共存できているのですから、カヴィナも今この時、情報を仕入れていると考えるほうが自然です。
ただ、それならリリアンヌが口頭で『カヴィナの幸せ』をキャロルに依頼するというのはあまりにも不用心です。
なんたって、作戦を丸々知られてしまってはその作戦に意味などありませんから。
(まあカヴィナなら念話とかも盗聴できそうですが)
とすると、片方は情報を入手できるが片方はできないというエラーを重ねていることになるわけですね。
人ってこんなに長いことを秒で考えられるんでしょうか。
キャロルの登場、結構適当にしたんですけど……チートが過ぎるかもしれません。
〇『君の魂はどうなるの?』について(大雑把)
こっちはですね。とりあえずエラーを起こさなかった場合(普通の人)について考えましょう。
体が一つに対して魂が一つなのがデフォルトですし、とりあえず普通な人たちはカヴィナたちよりは魂と体の結びつきが強いです。
で、カヴィナとリリアンヌが釣り合えているのについては、ネタバレになるので言いません。
とりま釣り合ってるんです。そういうものです。
それが普通の人と比べてどんな感じなのかといいますと、魂と体の結びつきがやベーほど薄いです。
この特徴は、二つの魂を押し込むっていう役割も果たしているんですが、同時に第一章5話にある別々に死ねないという不具合を埋め込むためにも利用されています。
本題で、一応本体なリリアンヌが眠りにつくとどうなるのかなんですが、第一に、釣り合っていた天秤がカヴィナに少し傾きます。
この訳もネタバレです。言えません。すみません。
別にリリアンヌが起きあがろうとすれば何ともなく終わるんですが、リリアンヌがここで浮かんで来ようとしない場合……、第二に、不安定だった天秤にて、少しの差だとしても勝敗が決したため、カヴィナの魂のほうが体との結びつきが強くなります。
すると同時に、リリアンヌの存在が希薄になります。
命を定義づける体との繋がりが薄れたせいです。
そうやって、リリアンヌが深い眠りにつくついていくほど、塵積で天秤は最終的にカヴィナに傾きます。
でもってカヴィナの魂とリリアンヌの体がきれーに結びついてしまった時、リリアンヌの魂は行き場を失う……。
までが解説です。これ以上はネタバレ。
「おん?なんかここおかしくね?」とかはとりあえず無視してください。
作品が完結するときには解決しているはずです。多分。
それでは、ここまで長々と読んでいただいてありがとうございました。




