39 私のような誰かのような誰か(キャロル視点)
すみません一週間でした。
本日から投稿再開になります。
視点は違いますが本編です。
それとお詫びで今日から可能な日は午後の12時にも出そうかと思います。
目指せ二日で三回投稿。
「……あ、良かった、まだいた」
「リリーちゃん?」
仮眠室へ戻ったはずのベルちゃんが、なんでかすぐに出戻ったから驚いた。
「どしたの?気が変わった?こっちとしてはシフォンを出そうかなって話してたんだけど……」
「ええ、気が変わりました」
ああもバッサリ断ったくせに、いけしゃあしゃあとそんなことを言い出す。
……うん?え?
「本気?」
「はい、勿論」
即答し、余裕のある笑みでベルちゃんは微笑んだ。
……なんだろうか、なにか。
なにかが、おかしいような、んん?
「……ええっと、どうします?」
「お願いしたいわ。わたくし、依頼を受けてもらうために来たのだもの」
「だってよ、リリーちゃん」
「喜んで、お引き受けします」
「……ついさっきまで断固拒否って感じだったのに?」
だって、流石にここまでコロコロと意見を変えるのはおかしくないだろうか。
「気が変わったんですよ……本当に」
「……なら、良いんだけど」
「――ただ」
ピシッと、手のひらをベリーちゃんが挙げ、
「今日のうちに出発できますか?」
「「……え?」」
毅然とした態度のままにそう言った。
……うん?え?
それは大丈夫、なのか?
だってベリーちゃん、君今、奴隷商関連で結構やってたじゃん、え?
「……ええと、それは願ってもいないことなのだけど……忙しいのではなかったの?」
「まったく。今はちょうど3時を過ぎた頃ですが、何時になら出発できますか?」
「……今すぐにでも」
「分かりました、ならさっさと向かいましょう。ただ、依頼に構っていられるのが明日の午後までですので、移動には転移を使わせていただきます。食料や着替えなどは今日と明日の2日分あれば十分ですから、余った馬車に従者等も乗せてしまってください。今からあなたが向かうべきところに送りますので、西門に至急準備を整えて来るように。それでは、【転移】」
私がぼーっとしている間に話とんとん拍子に進んだようで、挙句の果てに、ティア様はいなくなっていた。
……いや、は!?
いなくなっていた、の前に、え、今の詠唱は、呪文は――。
「え、君、だあれ?」
「……何言ってるの?キャロル」
いつものように、作り物とは思えない、困ったような笑顔で頬をかいた。
「……今の、古代魔法の【呪文】だよね?」
「うん、そうだけど?」
あっけらかんと、あくまで当然のように彼女は答える。
「……君に、呪力はないはずだ」
ほとんど確信があった。
なんたって、呪力の有無は一緒に調べたのだから。
「……最近使えるようになったんだよ」
「へえ、具体的にはいつから?」
「……君に言う義務はないよね?」
どうやら、答える気はないらしかった。
彼女は表情を作ったまま私の向かい側、ティア様が座っていたところに座る。
「……でも、それだけじゃないよ?」
「私に誰って言ったこと?」
「うん。だってほら――」
私は彼女の足を指した。
「珍しく、足を組んでない」
「……たまたまだよ?」
だって、ベリーちゃんはもう少しお行儀が悪いのだ。
本人曰く、『やろうと思えばできる』らしいけども、基本座れば足を組んでいるし、頬杖をついている。
しかしこのベリーちゃんはしっかりと『女の子』らしく足を閉じているし、背筋も伸びている。
……まるで、貴族のお嬢様のように。
「あとはね、表情がある」
ぴくっと、ベリーちゃんのような誰かは反応した。
どうやら、これが鍵だったらしい。
彼女は不満そうに眼を細める。
「……仕方がないでしょう?あたし、あれはできなかったの」
「多分人としてはそれで正しいんだよ?」
苦笑気味にそう言うと、不快そうに顔を顰めた。
……やっぱり、違う。
顰めっ面からベリーちゃんじゃない、誰かだ。
「で、結局君、誰なの?」
「……」
見慣れない赤茶色の前髪が重力に沿ってぶら下がる。
答える気がないというよりも、なんと答えるか迷っているように見えた。
「……あたしの名前は、リリアンヌ」
「へえ、偶然」
それっきり言葉を発するのをやめたかと思えば、どこかを触るような手つきを見せた。
一瞬の間に、リリーちゃんはベリーちゃんに戻る。
……もっとも、この子はベリーちゃんですらないみたいだけど。
すっと。
視線と共に、彼女は顔をあげた。
「あなたに。キャロル・ライチに、依頼があるの」
「――ほう?」
読んでくれてありがとう!
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