36 依頼人A
「ベリーちゃ~ん?起きてー?」
「……何」
「そんな顔しないでくれる?お客さんだよ、お客さん」
お客さん?
ここに?
そんな私の疑問が伝わったのか、仮面をつけたキャロルは軽く頷いた。
「なんかね、怪しい人だったから、依頼かもしれないけど断っていいと思うよ」
「……わかった。どこ?」
こちとら寝起きに見たのが君の顔なせいで気分最悪なんだけど、まあ。
お客さんとあらば仕方ないな。
まあ割り切れる。
「普通にフロント。部屋用意するの面倒臭くてさ?」
「了解」
おもむろに入り口まで足を進めていくのだけど、後ろから聞こえる足音が気になって足を止めた。
「何でついてくるの?」
「え?紹介するんだよ?」
「……ああ、そう」
納得しかけたけれど、うん?
待てよ?
「え、何でそいつ、私のこと知ってるの?」
「え?いや?知らないと思うけど?」
「……はあ?」
後ろを振り向けばそんなことを抜かす。
「どういうこと?」
寝起きも相まって滅茶苦茶に短気になっていたので、私はキャロルを睨んだ。
しかしキャロルは私の視線をもろともせず、私を追い越して通路を歩く。
つられて私は追いかけた。
「一番強い子を紹介してくれって話だったから、ベリーちゃんでしょ?」
「護衛任務とか?そんな時間ないんだけど?」
第一、私への依頼は断ってくれって再三言ってるのに、何なの?
「だから断ってくれていいって言ってるじゃん。一応こっちも一番強い人を紹介したっていう名目がいるの。はいこれ、仮面ね。君の好きな真っ白な奴。てか、髪は絶対に色変えた方が良いよ、目立つし」
「あーはい、分かってるって……」
メニューから外見の変更を選んで、いろいろいじる。
髪は無難に……赤茶とか?その辺でいいや。
瞳も黒くして、で、髪は短くして、声もパラメータをいじって低くする。
そんなに色々いじって元に戻せるのか問題についてはリセットボタンで元通りなので心配ない。
あとは、背も大幅に高くして、ツインテールも解いて。
髪を短くしてしまえば、もう別人といって差し支えなかった。
「相変わらず気味悪いよねえ、その力」
「あっそう」
どうでもいい。
君の感想なんて求めてないから、どうだっていい。
そして歩くにつれて部屋が見えてくる。
「あ、お待たせしました~、一応彼女がここで一番強い……どしたの?リリーちゃん?」
そう言われて、やっと私は息を吹き返したような気分だった。
いや別に、例の睡魔も来てないし、リリーは私の芸名みたいなものだからなんともないのだ別に。
そう、私は。
「ちょっと来て……」
そう言って私より少し背の高い彼女を引っ張って通路側に引き戻した。
ついでに念のため防音結界を二重で張っておく。
「何?ベリーちゃん」
「キャリー、あの人、第二側妃様!!」
小声で私は叫んだ。
キャロルは私と依頼人を交互に三度見する。
「うっそお」
それは私が言いたい。
何なの、本当に、何で気付かないの。
フード被ってるだけで気付かないとか、主人公補正じゃあるまいし!
やめてくれ、どうしろというのだ、私に。
依頼人が元ご主人の姉で知り合いとかもう、関係図がややこしすぎるのだ。
同一人物多すぎ問題。
キャロルよ、君の場合、むしろ何故気付かれなかった。
何回も会ったことあるって自慢してたじゃん。
少しは成長してるといえ、仮面しかつけてないのに、大丈夫かそれで。
何ならもう気付かれてるんじゃないか。
うちのセキュリティーガバガバすぎるって、流石に。
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