35 仲良しこよしな私たち
「はあ」
「――」
「……はああああ!」
「ねえ黙ってくれる?ベリーちゃん?」
明るい蜜柑色の双眸を細め、キャロルはそう言った。
「友達が溜め息ついてるのに無視する方が悪くないかな?」
「んな訳ないじゃん」
「ソウダヨネー、知ってた」
「なんなの……?」
そんなどうでもいいやり取りを適当に交わす。
……いやしょうがないじゃん。暇なんだよ、こちとら。
キャロルは嫌そうな顔を隠しもせずこちらを睨む。
「大体、ベリーちゃんってばシフォンを鍛えに行ったんじゃなかったの?」
「え?聞きたいの?」
「……」
「うそうそ、話すって。……ていうか、そもそも私は鍛えに行ったんじゃなくて、叱りに行ったんだよ?」
結局無視されかけて、慌ててそう返した。
なんていうか、さっきと立場がまるで逆である。
「は?そうだったの?なんで?」
「え……聞いてない?ベルちゃんここに連れてきたの、シファニなの」
そう答えると、キャロルは理解を示した。
「……ああ。“完全”の研究だっけ?」
「そうそう、」
「「趣味悪いよねえ~」」
声が揃って、お互いを睨み合う。
……はあ。
そういうところ。
そういうところだ、君が嫌いな訳は。
きっと君も同じようなことを考えているんだろう、なんたって似た者同士なのだから、もう仕方ないと言える。
この心のモヤモヤたちを言葉にして表すのならば、そうだな……強いて言えば。
――同族嫌悪という、そういう類のものなのだ。
きっと君もそんなどうでも良いことをつらつらと考えているに違いない、いや絶対とさえ言えよう。
仮面を張り付けて金策に奔走する君も、顔を塗り替えて妄想を叶えようとする私も、執着の対象が違うことくらいしか変わらない。
……だから君は嫌いんだ、キャリー。
幸せの正解を求める君と、愛の正解を曲げにいく私では、あまりにも行きつく先が違っていて。
お互いに普通ではないことを自覚しているから、目指す幸せを見せつけられているような、そんな気分である。
ああ、本当に嫌だ。
君はきっと仲間に囲まれる私に憧れていて。
私は正しく家族を愛せる君を羨んでいる。
揃っているのは、『羨ましい』と思う一点で、それでも変わりたいと、変わってあげたいとは思わないのだ。
きっと君もそうなんだろう。
ああ、面倒だ、本当に。
何もかもに絶望して、心と感情を切り離した後で未練をつくりに来るとか、神様ってば性格終わってるよね。
良くないと思う、本当。
「……ねえキャロル。君の望みは?」
一応、確認したくなって、視線を彼方へやったまま私はそう問いかけた。
ちらりと向かいの席を見て見れば、頬杖をついたままの彼女も同じようにまた、どこか遠くを見つめていた。
「幸せになりたい。みんなが憧れるような、幸せを手に入れたい。……ベリーちゃんは?」
こちらを見返してきたから、軽く口角をあげて嗤う。
「幸せにしてあげたい。寿命で笑って逝けるような、後悔のない人生を送って欲しい」
「……それは、変わらずベリーちゃんの仲間たちだけ?君は?」
私は少しも躊躇せずに声を出した。
「要らないよ」
そう、答えた。
私のことを未だにベリーちゃんと呼ぶ彼女は、何回聞いても変わるはずのない私の答えに目を瞬かせた。
――こういうところだろう、私と君が唯一違うのは。
決定的に、違うのは。
「何回も言うけど私、やり遂げたあとは死ぬつもりだからね」
「……そっか」
どこから壊れたのかは分からない。
おもちゃの電池が気付いた時には切れているように、気づいたら私はそうだったのだから。
だから、私たちは違う。
君は愛し方を知っていて、私は愛され方を知っている。
君は幸せになる方法を知らなくて、私は逆に不幸になる方法を知らない。
「じゃあ、私仮眠とってくるから」
どうでも良くなったから、もう考えるのはやめにした。
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