34 僕らの秘密基地
とある路地裏の行き当たり、そしてその隅。
地面を軽く二回踏み、ジャンプしてそこへ飛び込む。
一瞬の浮遊感をあとに目を開けると、綺麗なクリーム色の髪が一番に目に入った。
「やほ、キャリー?」
「ん、久しぶり、ベリーちゃん」
キラキラと輝く橙色の瞳は細められ、口元には弧が描かれている。
明るい亜麻色の髪もその目も。
どう考えたって彼女の容姿にこの空間は似合っていなかった。
王子から拝借した名簿を、座っていたキャロルの机上に置く。
「はい。これね、敵の名簿。斜線引いてあるのは“違う”から」
「おー、助かる。感動。マジ感謝」
感動する素振りなど欠片も見せず、微笑を浮かべたままで彼女はそう言った。
キャロル・ライチ。
人族の女の子であり、サラマンダー様のところで働く時に同期として出会った。
何を隠そう、このキャロルちゃん。
テオさん――この世界で最初に会ったパラルフィニアー領の門番さん――の妹なのである。
なんの偶然だろうって思ったよね、その時は。
「で?うちのベルちゃんはどちら?」
「ああ、奥にいるよん?あとこれ、こないだの件」
「んー、ありがと」
キャリーの向かい側に座り、すっと差し出された薄い紙の束を受け取った。
相変わらず気付けば足を組んでいる。
別に治したいとも思わないんだけどね。
ところで、王妃様は『国家転覆を目論んでる商会』の崩壊の片棒を担がされていた。
答えることを少し躊躇っているように見えたので、多分真実。
で、誰に“お願い”されたのかというのも聞いたのだけど、どうやら面倒なことにお茶会で話題が出て、気づいたら決まっていて、んでもって『陛下のため』って言われて断れなかったそう。
君、気配とか魔力は分かるくせに何でそういうとこ抜けてるの。
……何々?
王妃様を唆した主犯はガボッデド侯爵だったのか。
知らんな。
誰だそりゃ。
「面倒なことになってるよね、ベリーちゃんも」
「……君もなの?」
「きゃははっ、秘密だよ~」
「そう」
さほど興味がなかったので、というか基本キャロルは面白くないので聞き流した。
そんな私を見てか、ここまで口以外を動かしていなかったキャリーは表情を変化させる。
つまらなそうな、拗ねたような顔。
「……聞いてくれないの?」
「聞いて欲しいの?」
「うん、勿論」
「お金とるんでしょ?」
「うん、勿論」
書類に目を通しながら聞いていたけど、あまりに破綻しすぎじゃないかと嘆息した。
長居しても意味ないしなと立ち上がり、書類は――。
「“今日の服はどうしましょう?”」
異空間に放り出した。
「どこに行くの?」
「シフォンのとこ」
「そ。あの子は?要らないの?」
「……明日の、昼くらいに受け取りに来るから。適当に遊んどいて」
「りょーかい」
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