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32 『天使は悪魔を認知した』


「……あったぞ、これだ」

「ん、ありがとー。ついでにペンとかある?」

「ほれ」


奴隷商の名簿は、存外薄かった。

あ、一応写しらしい。


部屋を出ている間、レティーちゃんに変なことするなよって鬱陶しかったけど、すぐに持ってきてもらえて助かったよ。本当に。


王子より拝借したペンでサササッと“違う”奴隷商に斜線を引いていく。


「……それは、何をしているんだ?用が済んだのならさっさと帰って欲しいんだが」

「え~?いーじゃん、魔力残しとかないと後々面倒なんだよ?」


王子は呆れたようにカップを、持ちあげアイスティー(自前らしい)を口にした。


「……それで、今は何をしているんだ?」

「んー…………」


長いとも短いとも言えないような沈黙の後。

私はあくまでも端的に、


「絞ってるの」


と、そう答えた。

私の答えが曖昧なのには慣れていると言わんばかりに王子は頷く。


「そうか。だが、どうやって絞るのだ?国外の奴隷商が関係しているかも知れんぞ?」

「……それはないよ」


ほとんど右から左に聞き流していたつもりだったけれど、私の口はほぼ無意識にそう言った。


「ふむ?何故そう言い切れる?」


王子は不思議そうな顔をした。


何故言い切れるのか、と聞くのだから、私は今の言葉について確信しているように見えたのだろう。

あるいは、私の――テディ―商会長の持つ手管への、好奇心だったかもしれない。


「さあ、どうしてだろうね?」

「……はあ」


とりあえず、何もかも面倒だった私は適当に誤魔化すという選択をした。


「……あ」

「なんだ?」


思わず声を出してしまって、後悔する。

ズラッと書かれたその名簿の中に、私は見つけたのだ。


――妖精市場という、悪の組織の名を。




読んでくれてありがとう!

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