31 恐怖の枠へのご招待
「あ、それでね?私がここに来た訳なんだけど――」
「くどいぞ、帰れ」
イライラされているのは分かってたけど、こうもバッサリとは。
小さな女の子になんてむごいことを。
「……話くらい聞いてくれても良くな~い?」
「良くない。帰れ!」
ちょっとこのネタ飽きてきたな。
なんていうか、若干面倒になってきた。
「で、お願いなんだけどさあ、――?」
「断る!」
「……うーん」
どうしようかな、どうしようかな。
これだけ嫌われてるならもういい気がするけど、私は特に他人の感情が分かってないらしいから。
「じゃあ、脅させてもらうんだけどね?」
王子を恐怖の枠に入れ替えた。
で、さらっとレティーちゃんに『あなたは段々眠くなーる』の魔法をかけて抱きしめた。
「レテイーちゃんを傷つけたくないなら。……お願い、聞いてくれるよね?」
あとになって考えてみると感じるのだけど、私はやはりこれに対する沸点が低いようだった。
他の人だったら、というか王族じゃなかったら。
もうちょい粘れたと思うのだ。
……いや、嘘じゃないよ?
あのね、私が意図的にオーラ的な何かのアレを出すのは、本当に話が通じない奴か気に入らない奴だけなはずなのだ。
そうやって、決めたのだ。
あれを私は使いこなせないから、無闇に使わないって。
「何が望みだ?」
王子は手をあげて、そう聞いた。
……別に、そこまでしなくても良いんだけどね?
私はあくまで『お願い』をしてるだけだから。
ていうか、王子じゃなくて王妃様にすればよかったかも知れない。
いや間違いなくそうだ。絶対そうだ。
「奴隷商の一覧。ああ、この国のだけで良いんだけど……」
「分かった。さっさとレテイーシアを返せ」
……それでも、この言葉には驚いた。
秒で頷いて、早々にこれとは。
「……はえ~、本当に好きなの?この子が?」
「お前には関係ない。何故要るのか問わないだけ感謝しろ」
「別に、聞いてくれて構わないけど?ちょっと知り合いが攫われちゃってね、探さないといけないんだよ」
そう答えながらレティーちゃんを魔力で創ったベッドに寝かせた。
顔を上げると、王子は苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
「……何?」
「何故それを早く言わんのだ」
「え?聞いてくれなかったじゃん」
「……はあああ」
王子は大きくため息をついた。
はあ?
「もっと深刻そうな表情をしろ」
「……今の君みたいな?」
「はあああああ」
演技なのか本気なのか分かんないけど、そうため息をつく姿が王子としては悲しすぎて苦笑した。
「胃に穴が開きそうだ」
「へえ、大変だねえ」
「ちなみに原因は雲のような髪をした女なのだが」
「それは綺麗なんだろうねえ」
「……ああ、外面だけだがな」
思わず本気で笑う。
「王子って、冗談言えたんだね?」
「どこぞの女のせいだがな」
仮面と言っていいのか分からない演技をしていた阿保の言葉は面白くて、いちいち笑ってしまったけど。
――けど、その時すでに私は笑顔を繕うのをやめていた。
私の頭の中での認識として。
その時にはもう、コレは大嫌いな敵だった。
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