30 「お前には分かるまい?(切実)」
「……断る!」
「えっ」
ふてぶてしくそう言った王子に、女の子が小さく声を上げて驚く様子を見せた。
「へえ、そう?なら時間はいらないや。……帰る気はないけど」
つま先をトンッと地面に当てた。
硬いヒールタイプの靴だったので、しっかりと音がする。
……よく考えたら、早くこうすれば良かったな。
「いや帰れ」
ちょっと意味が分からなかったので、これについては無視することにした。
チラッと王子の側にいたガールフレンドの方を見てみると、青くなって震えている。
……まあ、普通の反応はそうなんだよ。
だって急に目の前に赤の他人が出てきたんだもの、怖いに決まってる。
不意に、女の子が口を開いた。
「あ、あの、ウィ、ウィリアムさまっ……こちらの、お方は……?」
「ん?ああすまない、レティーシア。そうだな……テディー商会長までしか俺は知らんが……」
その王子の言葉に、ふかーく頷いた。
なるほどなるほど、レティーシアちゃんね。
レティーちゃん、レティーちゃん。
「正式なのはもっと長いんだよ?私も正確には覚えてないけど……テディー商会代表取締役会長兼テディー商会実力ランキング一位、指名額一位の従業員筆頭、カヴィナ・テディー、ってとこ?」
「長いな」
「でしょ?だから基本は、というか最近はテディー商会筆頭って名乗るかな?」
「……だ、そうだ」
王子はレティーちゃんに視線をやる。
「な、成る程……それで……」
よく分からないけど、答えとして間違っていたわけではないのかな?
と、そこで私は気になっていたことを聞くことにした。
「ちなみにさ?王子とレティーちゃんはどういう関係なの?婚約者?」
「レティーちゃん……??あっ、はい、そうです!!」
「そうだ!折角レティーシアと、久しぶりに、会えたというのに!!わざわざ邪魔をしにくるんじゃない!」
王子は凄いイライラした感じでそう惚気けた。
こういうのに対する対応は知らないので、適当に返す。
「……はえ、旅行にでも行ってたの?レティーちゃん?」
「えっ、いえ……」
「お前っ、本当に、誰のせいだと……!!」
「え、私?」
思わず目を瞬く。
最近私が私の知らないところでなにかやってた感じの事件多くなかろうか。
流石にそこまで大暴れした記憶は持ち合わせていない、と、思う。
大体私は前期決算で忙しいのに、いつそんなどうでもいいことをする時間があると思ってるのかな?
寝てる間とか?
「王宮に魔物が溢れた日から、俺や父上や義母上は本ッッ当に忙しいのだ!!」
「……へえ〜」
確かにそれは私のせいかもしれない。
いや私のせいだな、多分きっとおそらくメイビー。
「でもまあ、レティーちゃんに会えないってのは、単純に王子の力不足だよね?」
「……はああ」
私としては火に油を注いだ感じなんだけど、予想に反して王子は大きくため息をつくだけだった。
「いつもの業務が二倍以上に膨れ上がる恐怖……。お前には分かるまい?」
なんか、無駄に王子がニヒルを漂わせている。
ていうか二倍って。
割と切実だったな、王子の業務量。
「いや分かんないに決まってるでしょ?」
「……分かろうとする努力を少しでもしたらどうだ?」
「いやいや……そもそも論、私、上司とかじゃなくて会長だから。どちらかというと仕事を増やしにいく立場だから、ね?」
「……そうか」
王子の返事には諦めが混ざっていた。
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