28 準備
トントン、と階段の音が鳴る。
やることもないし、降りてきたのだ。
……いや嘘。
やる(べき)ことはあるんだけど、や(りたいと思え)ることがない。
つまりはやることがない。
「メノウ~、いる~?」
「はい、ここになのです、カヴィナ様。……お話は終わったのです?」
案の定というか、メノウはキッチンでお昼の準備をしていたみたいで、振り向きびしっと敬礼をしてみせた。
わあ可愛い。
「ん、大丈夫。ちょっとさ、ご飯食べたらベルちゃん救ってくるから、今日は夜の定時報告出れないかも」
包丁で何やら切り刻んでいた様子のメノウ。
そんな可愛い妹分に抱きついて、片手で頭を撫で回した。
「……帰って来ないのです?」
上目遣いでそんなことを言うので可愛いったらありゃしない。
「うーん、さっさと終わらせちゃった方が良いでしょ?」
「でも、原因不明の睡魔も……」
「あー」
そういえばそんなこともあったなあ。
すっかり記憶から抜けてたよ。
「ま、なるようになるって」
「……くれぐれも、ご自愛を、なのです」
「ん、ありがと。あとね、明日の朝は多分出れるんだけど、帰ってくるのは夕方近いかも。それまでご飯は考えなくて良いから、まあ、やりたいことやってて」
「の……」
ついさっきまで笑顔だったのに、落ち込んでしまったみたいで表情が暗い。
「……別にちゃんと帰ってくるから、安心してね?」
「逆に帰ってきてもらわないと困るのですよ……」
「ふふっ」
ちょっとは元気を取り戻したみたいである。
やっぱりメノウに暗い表情は似合わない。
……ちょっと気障だったかな。
「準備、手伝おっか。何すればいい?」
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