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番外編 2−7 笑顔(ステラ視点)


「面倒なんだよね、本当」

「……」

「ステラはさ、結局私たちの仕事を増やしにいってる訳でしょ?私さ、こう見えても忙しいからさ?そんなちまちました面倒なことやりたくないんだよね、はっきり言って」

「……」

「――ねえ、分かるかな、ステラ?」







第一印象という話をすると、あたしが最初に白髪に抱いた感情は“気持ち悪い”だ。


なんで楽しくもないのに微笑んでいるのか分からない。

なんでこんなところまで入り込んできたのか分からない。


要するに、頭が『理解不能』と判断したから、あたしは何となく、どうしようもなく気味悪さを感じていた。


仮に本当に楽しくて、嬉しくて笑っているなら、そうだとするのなら。

貧民街(スラム)の薄汚れた子供たちに囲まれて何が楽しいのかしら。


施しを与えたつもりになって満足しているの?


いいえ、そうじゃないわ。

言い切れるわ。

あたし、()()()()()には自信があるもの。


あいつ、()()()()()()()()()()()()のね。

本当に気持ち悪い。


あたしの少し上くらいなはずなのに。

そこまで綺麗に作れるなんて、いつから()()()()癖をつけてるのかしら。

気持ち悪い。


あたしはそれからというもの、そいつが来たらすぐにその場を離れることを繰り返した。

幸いと言っていいのか、あいつはおかしなことに貧民街(スラム)で有名になりつつあるようで、周りの声に耳を傾ければ逃げられた。


けれどあいつは1週間半程経ってもいなくならなかった。

そればかりか、あいつが貧民街(スラム)にいる時間は長くなっていく。


“その日”は運が悪かった。


あいつが来たと話している人がいたから、耳をすましながらその話が聞こえない場所へと走るというすっかり慣れてしまった動作を繰り返していた。

細い路地へ次々と入っていって、とにかく必死だったのだ。

――気が付くと、白い髪が目に入っていた。


貧民街(スラム)は入り組んでいる。

家が脆くなって崩れたり、新しく壁が造られたりで、当の住民たち(あたしたち)も正確にどことどこが繋がっているのか把握しているわけではない。


いずれにせよ、あたしはしくじった。


呆けている内にあいつと目が合ってしまって慌てて逃げ出したけど、走る最中後ろから追いかけられているのを感じて、これは無理かしらって頭の中で諦め始めて。

そんなに時間は経ってなかったと思うけれど、最終的にあたしの逃避行は、適当に右を選んだら行き止まりだったっていうなんとなく締まらない終わり方をした。


崩れかけの希望だったけれど、せめて、あいつじゃないことを祈るくらいしかその時のあたしに残された道はなかった。

現実といえば、白いあいつで、その時、確実に運が尽きたと思った。



――なんであたしを追いかけてきたの?


――最初から最後まであたしが目的だった?


――どうしたら逃げられる?


――こいつは誰?



とりあえず疑問は尽きないから、考えることはやめた。

あたしの頭のごちゃごちゃを理解もせずに、諸悪の根源は目を丸くしていて、()()()()表情を()()()と思ってしまった自分に内心舌打ちをした。


しまいには間抜けな表情のまま喋りもしないから、あたしは痛む肺を無視して息を整え、声を震えないように絞り出した。


「……何?あたしに何の用?」

「声まで可愛いっ!!」

「……は?」


思わず素で反応して、小さくだけど声に出してしまった。

……こいつ、頭おかしいの?


だってあなた、あたしがさっき見かけた時も完全に作り笑顔だったじゃない。

なによそのキラキラした笑顔は。


それすらも作ってるの?

だとしたら相当な化け物だと思うのだけれど。

分かる人には見抜ける作り笑顔と完璧な作り笑顔を使い分けられるって、何よそれ、気持ち悪い。


こいつ――白髪にしましょ――は、ゆっくりと近づいて来た。

勿論離れたいから、故意も無意識も含めてあたしは後ろに下がっていく。

近づかれて、離れて。


けれどもここは残念なことに行き止まり。

白髪が後から追ってきた以上、あたしが壁に追い込まれたのは言うまでもない。


白髪は唐突に座り込んだ。

膝をついているからか、立っているあたしと同じくらいかそれ以下の高さに目線がある。

こちらを伺うように、恐る恐ると言った感じで見てきた。


その時の白髪は、見てるこっちがひれ伏したい気分になるような、けれど作り笑顔のような満面の笑みではない、余裕を感じさせる微笑を浮かべていた。


――それは、怖いくらいに見とれてしまう笑顔だった。




読んでくれてありがとう!

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