25 一か月経たずに実務で転移
「……ふぅ、疲れたぁ……」
「ありがとうございました、なのです」
二人でお互いに頭を下げる。
ミーとの作戦会議が終了した。
……想像してたより大変かもしれない。
「あの、そう言えばカヴィナ様?」
「ん〜?」
「ベルさんは、どうやって誘拐されたのでしょうか?」
「……どういうこと?」
私が首を傾げると、ミーは言葉を探しながら話し始めた。
「えっと、ベルさんの匂い、ジェフの部屋で途切れていたのです」
「……うん?」
――ひょっとして、それは誘拐事件でもなんでもないのでは?
そんな考えを振り払って、ミーに続きを促す。
「けれどジェフは本当に知らないみたいで、そして最後にジェフが部屋を出たのは昨晩らしいので、ベルさんはご飯を食べた後くらいにジェフの部屋で行方不明になったことになるのです」
……じっとミーの目を見る。
見返される。
どうやら、本気で言ってるようだ。
「……それって、転移ってこと?」
「おそらく」
「……そう」
「そんなに顔を顰めないで欲しいのです」
ミーに注意されたので、やめる。
だがしかし、転移て。
1か月経たずに実務で転移て。
天才かよ。
「確か火属性だったよね?」
「はい、それも完全な」
「……そう、うん」
完全な、火属性。
この“完全な”という形容詞には、れっきとした意味がある。
……人は魔力さえある程度あれば、魔法が使える。
操れる魔法の種類は1つから9つまであるわけだが、当然魔力だって属性だって沢山ある方が便利だ。
――そう、実を言うと、便利なだけだ。
属性の量だけ魔法の勉強を頑張らなくてはいけないし、魔法は一定の基準を超えると使える人が急激に減る。
魔力が足りないからだ。
要するに魔力が足りず属性を持て余す人が多い。
では魔力が多ければ属性が一つでもなんだってできると思いきや。
魔力が多い程制御が難しい。
あ、経験談ね?
んでもって、制御が難しいので、簡単な魔法が使えないことが多い。
その結果どうなるかと言うと、そこらのハエに山を吹き飛ばせる魔法を使わなくてはならないのだ。
あ、経験談ね?
つまるところ、魔力の多い人には多い人なりの、属性の多い人には多い人なりの悩みがある訳である。
あ、私は両方ね?
そんな中、である。
……“完全な”属性型という人たちがいる。
例を挙げるならサラマンダー様、某王子、某側妃様。
今回の発端であるベル、あとはルー君、魔王やリーといったところ。
彼らの主な特徴は、属性を一つしか持っていないこと。
一定以上、その属性を極めていること。
ああ、判断基準は知らない。
生まれた時からそうである人も、老人になってからそうなる人もいる。
あとはそう、魔法の成長速度が異常に早いこと。
あのベルという子は、初めて会った時から完全だった。
本来なら護衛側に振り分けるんだけど、バランスが悪かったんだよねえ。
1ヵ月待たずに転移を身に着けてしまった、あるいは無意識に発動させてしまったとしてもおかしくはない。
おかしくはないけど。
「……ね、もしかしてステラかな?」
ベルに魔法を教えたのは。
読んでくれてありがとう!
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