24 何なんだろうか、うちの子たちは。
「ごっめん!本っ当に、ごめんっ!!」
「いえ、別に大丈夫なのです」
メノウが泣き止んでくれたので、ソファに座らせる。
その上で、メノウの正面の床に正座して頭を下げた。
いや、本当良くないね。
本当に今のは良くなかった。
奴隷市場なんていうトラウマに直結するような言葉使うなよ。
阿呆か、馬鹿野郎。
すっと上を向いてミーの目を見る。
綺麗な、透き通った琥珀色の目。
「……今ならどれだけ殴っても文句言わないから」
「やめて欲しいのです」
ミーが目を逸らした。
流石に居た堪れないのか、比喩抜きでミーの目が死んでいる。
「……それに」
ぽつりとメノウは呟いた。
明確な意思を持って、彼女は言葉を紡ぎ出した。
「ミーも、そろそろこれを克服したいと、そう思っていたのです。……だから――」
「メノウ」
だから、私はその声を遮った。
「まだ、1年だよ。君の人生の五百分の一程度の時間しか経ってないんだよ」
できるだけ、穏やかに、言い聞かせるように。
まあ、考え直してくれるかって言うと望み薄だけど。
……魔族は、人の4倍から10倍もの時間を生きる。
もしかしたら、角や尻尾、髪色などの外見意外、なんら人と変わりない魔族を人が畏怖する理由はそこにあるのかもしれない。
メノウは8才。
時間はまだまだ残されているのだ、焦る必要はない。
聞いたことがないから、いつから奴隷商にいたのかは知らない。
知らないけど、あのおっさん曰く、1年はいたはずなのだ。
そう、少なくとも、1年である。
予想できる最長の期間で考えるなら8年、最短で1~2年。
――もっと。
もっともっと、2倍3倍の時間をかけて、心の傷っていうのは埋めていくものなのだ。
「時間なら、有り余るほどあるんだよ。幸せで埋もれた後で、面倒なことはやればいい」
「――……」
何に驚いているのか。
ミーは軽く目を見張っていた。
「私が君にこの話をしたのは、克服して欲しいからじゃないんだよ。理解して、納得して欲しいからなの」
これは、まぎれもなく本心だ。
誰だって、知らないところでこそこそされて、『ああ、あの件?もう終わったよ、気にしないで!』は嫌だろう。
まして、自分以外は皆知っているのなら。
……けれど、これはあくまで誠意だ。
「はっきり言って、私は今回のこと、ミーに関わって欲しくない」
つい先程、あれだけ泣いていたのに。
怖いって、考えていたはずなのに。
「もっと言うなら、なんでわざわざ関わろうとするのか理解できない」
だって、良いじゃないか別に、奴隷商が怖かろうとも。
普通に生きていれば一生関わらないで終わる物事ランキング1位になれるような、光の傍にある闇と言えばである。
「……ね、良いんだよミー。無理して頑張らなくたって、君は充分にキラキラしてるから」
私の言葉に、ミーは悩んでいるのか、状況が吞み込めていないのか、私の目を見たまま固まっている。
しばらく待って、ミーが瞬きをした。
「……カヴィナ様」
穏やかな声ってこういう感じかあ、と場違いなことを考えた。
黄金色に輝く橙色の瞳が細められる。
「それでも、ミーは――――」
やっぱり、と、そう思ってしまった。
いつもは可愛いと感じる微笑が、途轍もなく綺麗だと感じる。
何なんだろうか、うちの子たちは。
カリスマ性ある子が多すぎないだろうか、特に初期メン。
「……うん、じゃあそうしようか」
私は、ミーの願いを聞くことにした。
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