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23 君を傷つける人は、どこにもいないから。


「では、ベルさんはそれが原因で消えたのです?」

「うーん……そればっかりは本人に聞いてみないと分かんないよぉ」


……どうするべきなのでしょうか。

なんだか、面倒になってきたのです。


だって、喧嘩で行方不明になったのなら、どうせ戻ってくるのでしょう?

それで沢山怒られて、またすぐにいつの通りになって。

そう、すぐに元通りになると、この時はそう思っていたのです。






「え?いなかったの?」

「申し訳ないのです……」


ペンを置いて頬杖をついた。

時計はもう9時過ぎを指している。


「ん-……それって役職で揉めてるのと関係あったりする?」

「おそらく、なのです。ベルさんは昨日の夜にいなくなったみたいなのですが、夕食の後誰もベルさんを見ていないようで……」


いなくなった……攫われた可能性が高い?


「……あ」

「の?」


思い出した。

思い出したよ。


思わず席を立ってしまったので、座り直した。


(もしかしたら、奴隷商かもしれない……!)


ここ、ランドルフ領は控えめに言って治安が悪い。

気休め程度に隠れてはいるけど、貧民街(スラム)は表通りより広いし、奴隷商売は立派な商売になってるし。

小説にもヒロイン(アリス)が攫われかける描写があったくらいだ。

まじでヤバい。


でもって、ベルが家出中に巻き込まれて捕まってるなら尚ヤバい。


どうしようか。

これ、ミーに伝えた方が良い?

でもなあ……。


チラッとミーを上目に見ると、不安気にこちらを見ていた。

立ち上がって少しかがむ。

ミーと、目線が合うように。


「……メノウ?」


できる限り、優しめの声を出した。

ああ、気分の問題ね?


「奴隷市場は、まだこわい?」

「――っあ」

「あ、いーよ考えなくて、ごめんね、大丈夫」


そっと抱きしめた。

失敗だったな、言うんじゃなかった。


背中をとんとんしてあげるとミーが呻く。


まだ、1年しか経ってないのに。

やっちゃった、最悪。

本当最低、駄目だろわざわざトラウマを掘り返すとか。


「あ゙ぅ……ぁ、」

「大丈夫、大丈夫」


過呼吸にはなってない。

おっけい。


ちょっと苦しそう。

抱きつく力が強かった。


「メノウ、戻っておいで、平気だよ」


こういう、慰めの言葉ってすごく、ブーメランが刺さってるように感じる。

どの口が、とか。

お前が言えたことかって、凄く感じる。


――軽率な真似をしたのは私なのに。


「う、カヴィナさまぁ……」

「うん、大丈夫。君を傷つける人は、どこにもいないから」


大丈夫、大丈夫。

メノウにその言葉が染みるまで、諸刃の剣を唱え続けた。




読んでくれてありがとう!

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