19 死なない・消えない・殺さない
「はっへぇ、5日分かあ……」
「はい、5日分なのです」
朝食を済ませた後、溜まり始めていた書類関係の山を片付けながらミーと喋る。
あまりに深刻そうな顔で返されたので、笑ってしまった。
「なんか、寝て起きたら5日って面白いね〜」
「面白くなどないのですよ……」
危機感を持って欲しかったのか、ミーはしょぼくれた。
ちょっと可哀想で、ふわふわの髪の毛を撫でる。
「大丈夫大丈夫、私アレだから。……“死なない・消えない・殺さない”をちゃんと守れる子だから」
「?……最後は別にいいのではないのですか?」
「おっと価値観の差が」
まあ、殺されても殺しても、対した問題になりにくいのがこの世界だしなあ。
そういう細かいのは仕方ないのかなとも、思うのだけれど。
「あーでも、殺さないと死ぬんだったら良いからね?」
「……何の話なのです?」
「ミーとか、殺しちゃいけないって手加減して殺されるパターンありそうだなって」
それは嫌。
私はそんなに心の優しい人間じゃない。
仲のいい他人と見ず知らずの他人だったら間違いなく仲のいい方を選ぶ。
選ぶことが、切り捨てることができる。
「……流石にそんなことはないのですよ?」
「うーん、信用できないかなあ」
私より君たちの方が情に厚そうだし。
ルー君やセレスなんて滅茶苦茶チョロそう。
「ん-と、冬眠中になんか変わったことはあった?」
「とうみ……いえ。……えっと、怒られるかもしれないのです」
「え?何で?」
ミーはもじもじしたまま視線を行ったり来たりさせている。
「……研修中の、ベアがいたと思うのです」
「うん、いたね」
ステラのところの班で、王子が入るとこである。
「実務の内一人が、研修範囲を終えてしまったのです」
「うん?良いんじゃない、別に」
「えっと。その……護衛の、研修範囲を」
「…………うん?」
え、あれっ。
聞き間違い、かな?
「ごめんミー、もう一回、良い?」
「実務のベアが、実務の研修より先に護衛の研修を終えてしまったのです……」
どうやら、聞き間違いではないらしい。
「えっ、役職変更入れたら?優秀なんでしょ?通すよ?」
「それが、元々実務2人、護衛2人だったのですよ……」
「……うーん……入れ替えは?」
「護衛の内、一人は適性がなく、もう一人は本人が嫌がっているので……」
「ん-、そのままって訳にはいかない?」
「本人が護衛を希望しているのです」
「わあ……」
ええ、どうしよう。
別にそのままでもいい。
入れ替えることもできなくない。
ただ、両方とも本人たちの意思に反する。
最悪何かあった時に問題になる。
……仲間割れとかね。
だけど、全員の希望を通すと実務が一人。
これだと護衛が多すぎるな。
「……ミーはどうするべきだと思う?」
「…………護衛希望のベアは、班から抜くべきかと思うのです」
「そうなるか……。ちなみに、それって誰?」
「ベル……実務の妹で、元実務のベアなのです」
「ああ、あの兄妹……」
あんま似てなかったし、実の兄妹とは思えなかったけど、仲良いんだなあ。
「引き裂くのもなんだよねえ」
「ご迷惑をおかけして、申し訳ないのです……」
「んにゃ、良いけど?じゃあ、護衛のどっちかを抜く?」
「うー……その場合、一人で実務と護衛の両方を兼ねるのですよ?新人には酷だと思うのです」
「ふ~む?」
トントン。
机を叩きながら思考を巡らす。
どうするべきかねえ。
そろそろ王子が追加されるわけで、あんまりぎくしゃくするようなことは起こしたくないんだよなあ。
「……うん、決めた。……ミー?」
「の?」
「妹のベルって子、ここに呼んでくれるかな?」
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