16 キャラじゃないんだけど、流石に
「いやー助かった、本当に助かったよ側妃様」
「……いえ、そうなら良いのだけれど」
救世主だよね、あの混沌から救い出してくれたことに関しては。
だって、もういっそ転移で帰ってしまおうかとか考え始めた時の『貴方達、何をしているの?』だからね。
……ところで、さっきと比べて顔色がメイクかってぐらい変わってるのは気のせいじゃないよな……?
いや、え、どうするのが正解なんだろう。
『何かあった?私で良ければ相談に乗るよ?』とかはキャラじゃないんだけど、流石に。
だがしかし、悪役とかの『え~もしかして何かあったのぉ~?』みたいなのも違う。
まあ、うん。
「……え、何?死刑宣告でも受けた?」
「…………直球ね」
「いやなんていうか、うん。放って置いたら自殺しそうな顔してるよ?」
「どんな顔よ」
側妃様は苦笑した。
……いやな気分だ。
こういう人は何人か見た。
この一年間で、数人。
しょうがないって自分の人生を諦め出した者である。
いわゆる、
「貴族の割に貧民街の貧民みたいだよね、君」
「……え?」
「君の出身とか考えたら当然かもしれないけどさ?いや知らないけど。全部持ってる奴の方が、全部失った時、醜い顔をする。……本当に、そういう意味で君は貧民街の孤児みたい。……最初から、失う物なんてないって奴の顔」
「――そういうの、陰口でやってくれないかしら」
「えー……、やだぁ」
思わずこっちが苦笑した。
それにしても、死刑宣告について言及されないってことはやっぱり、
「本当に来たんだ?――救援要請」
「……ええ、先程確認したわ」
「ふうん……予定より早いね、そういうもの?」
「転生者の影響じゃないかしら?」
……救援要請。
本来なら1年くらい後に起こるはずの出来事である。
――そう、ヒロインがパラルフィニアー領に到着してすぐ、光魔法を発現させるきっかけになる事件。
「君も大概可哀想だよね。……いっそ王妃様とかに頼んでみたら?」
「王妃様……」
「うん」
「……いや流石にないでしょう」
「ないか」
「……貴方は?」
「…………んー」
うーん、どうしようか。
受けるっていう手もあるんだけど。
多分余裕なんだけど。
「転生者っていう加点ポイントを考えても、君は駄目かな」
「……そう」
「推薦を入れとくとね……」
まだ何かあるの、と言う風にこちらを見てきた。
雰囲気はギロチン3秒前って感じ?
「王様とか、どうよ?」
「……王妃様と同レベルじゃないかしら」
えっ?
「や、それはなくない?」
「あるわよ」
いや、だって、
「まず、今回の件で神罰的なことを王族は言われるようになるでしょ?主に馬鹿から」
「ええそうね、想像力豊かな馬鹿から」
酷い言われよう。
……まあ、この人の派閥にはいなさそうかな。
「そしたら、王族としては名誉回復を頑張らなきゃいけない状況にあるわけ」
「まあそうね」
そんな状況にある王族の一人なのに、いかにも他人事のように言うなあ。
……自分は死ぬから関係ないと思ってる?
「そんな王族の中から、ちょうど良く余ってる自領のお姫様の旦那が助けに来てくれました!」
「……」
「どう?良くない?」
個人的にとっても良いと思うんだけど、肝心の側妃様は苦い顔である。
何故?
本当に何故?
「……良くないわ」
「え~~?」
「そもそもわたくし、あの人のこと苦手というか、嫌いなのよ」
「わあ」
それはまた、可哀想な。
いや、あんな奴を愛してる王妃様が珍しいのか?
「貴方、逆にあいつが嫌いじゃないとでも?」
「んなわけないでしょ」
「ええ、そうでしょう、そうでしょう」
大袈裟に頷く。
今の、繰り返す必要あった?
「わたくし、側妃……第一側妃と同じくらいには嫌いよ」
「……よくそれで子供をつくれたね?」
「第一王子が産まれていたからいち早く妊娠しなくてはならなかったのよねぇ……」
「シビア~」
嫌いな相手と政略結婚で結ばれて、派閥争いで子供を産まなきゃいけないとか、貴族って大変だよねえ。
「……というか、貴方の考えが本気で分からないのだけれど」
「え、何急に」
「わたくしのこと、嫌いじゃなかったの?」
「嫌いだけど?」
「…………貴方の嫌いの定義が分からないわ」
凄く困ったように言うけども、普通そうじゃない?
誰がどう思ってるか、何を考えているのか。
全く分からない中で段々分かってくるってのが常識でしょ?
「君のことは嫌い。だけど転生者ってとこは好感が持てる」
「なのに嫌いなの?」
「んー、嫌いなのは大前提として、別の観点から見て加点ポイントが入って好感持てるんだよ」
「……意味が分からないわ」
「そりゃそうだ」
間髪入れずに答えた私に、どういう意味かと問いかけるような視線が降って来た。
……この人、本当に貴族向いてないなあ。
「何でそういう考えになったかとか、何で好きなのか、嫌いなのかなんて他人には分からないものでしょ?神様じゃないんだし」
「……それもそうね」
どちらかって言うと、神様じゃないんだし、に同意してるみたいだった。
「んーじゃ、ばいばーい」
「……え?」
「んぇ、何?」
「帰るの?」
「うん」
「どこか目的があって移動してると思ってたんだけれど……」
「?……だから、帰るんだよ?」
「…………そう」
「ん、じゃね」
「ええ……」
ちょっと非難するような『ええ』が込められている気がしたので、さっさと背を向いた。
背中に突き刺さるような視線は、気にしないことにした。
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