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15 カヴィナ?カヴィナさん?

カヴィナ→ティファニー、です。


ミーは大分頑張ってくれたらしく、残っているのは軽傷の者のみって感じだ。

しかしこのままここに放置しておけば、ミーは意地でも彼らを治そうとするだろうから、疲れてるでしょ、軽傷の人はまた後でね、と言い聞かせて部屋を出た。

特にすることもないのでどうしようかと、廊下と部屋の中間で立ち往生しかけた時である。

……部屋の隅にいた王妃様が、王子に見つかった。

慌てて大声を出しかける王子をミーが止める。

……物理的に、口を塞いで。

急いで廊下に出て、扉を閉め、ミーが手を離した。


「っぷは、王妃様!?……おい、カヴィナ!?お前、何で王妃様をここに連れ」

「――カヴィナさん、なのです」

「……おいカヴィナさん、何で王妃様を連れてきた?……って、なんだその顔は」


……はっ、いけない、思わず真顔になってた。

なんかメノウと王子が仲良くなってると思ってたけど、メノウの方が強い感じ?


「いやうん、良いよカヴィナで、別に」

「……だよな!?」

「うん、だけど王子、駄目王子の仮面は良いの?」

「…………あ」


やっぱり、忘れてた?

ここ、一応公衆の面前なんだけど。

非常事態だったとはいえ、いいのかそれで。

第二側妃様、教育ミスってない?


「言っておくと、研修中の君に尊大な態度とられても困るからもう外していいと思うよ?」

「いや、流石になあ?」

「カヴィナ様の仰る通りなのです。そもそも王子は駄目王子と言うよりちょっとはできる残念王子と言う感じなのですよ?」

「ちょっとできるじゃ駄目だろ!?」

「ふふんっ、バレたのです」


いたずらっぽくミーがそう言って笑った。


「でもさ、何でその演技してたの?」

「ん?」

「ほらさ、君、別に第一側妃くらいにしか狙われてなかったわけ。でもって、あの人は臆病だからどの道君は殺されてただろうし?君が仮面って言って良いのか分からないけど、駄目王子を振る舞う意味はなかったんじゃない?」

「ふむ、そうだな……確かに義母上が今尚俺を生かしているのに関しては疑問だが……演技と言うより、二人とも駄目王子であれば王妃様に矛先が行くのではと思ったのだ」

「「――」」


その言葉に驚いたのは、私だけじゃないだろう。

私の隣にいた王妃様は、目を丸くしていた。

……感動。

王子、君ってそんな家族思いな奴だったんだね……。


「……いや待ってそういえば、結局王妃様、離婚しないの?」

「「「…………ん?」」」


何を当たり前のことを?みたいな顔しないでくれるかな、揃いも揃って。


「え、なんで?」

「……逆に何故離婚が前提なのだ?」


王子の言葉にミーと王妃様が頷いた。

え?

うん?


「だって、あんな屑に王妃様を上げたくないじゃん」

「――屑?」


あ、いけない、王妃様の目が真剣な感じになった。


「え、いやご」

「――カヴィナ」

「…………はい?」


私の言葉を遮るように、王妃様が声を出した。

……ん?

怒っては、ないっぽい?

どちらかと言うと王妃様は不安そうで、最初に会った時の状態に似ている気がした。


「あの、カヴィナはなんでそんなに私のことを気に掛けてくれるんでしょうか?……いえその、深い意味は、ないのですが……」


段々と背中が曲がっていき声が小さくなる王妃様。

なんだか怒られるのを分かっていてビクビクしている子供みたいで、やはり、可愛いなと思ってしまった。


「…………ううんと、なんでだろうね?」

「……え?」


三人が固唾を呑んで見守る中で放った言葉がこれだというから、なかなか締まらない。


「いや……強いて言うなら、可愛いなって、思ったから?」

「「「――?」」」


不思議そうな顔をしないでくれ、頼むから。

……だがしかし、答えを求められても困るんだよね、実際。


「なんていうか、恋する乙女って感じの王妃様が、可愛いなあって思ったんだよね」

「……~~っ!?」

「「――」」


王妃様が、破裂した風船みたいに真っ赤になった。

……ルー君並みにチョロくないか、この人。

いや、褒められなれてないのかも?

今でこそ塩なルークだって、ちょっと前までは直ぐに赤くなったりしてたからなあ。


「……この瞬間から、王妃様はミーの敵なのです」


遠い目をしておかしなことを呟くミーに、


「俺は何も見ていない俺は何も見ていない」


王妃様同様、恋愛に耐性がないのか顔を手で覆って延々と同じことを呟く王子と、


「~~~っ」


ひたすら頭を抱えて悶えている王妃様、である。

……ここはどこなんだろう?

王宮なはずなんだけど。

おかしいなあ、こんなに混沌って言葉が相応しい状況ってあるんだなあ。







「ティファニー様?」

「――っああ、なんだ?」


自分の名を呼ぶ声がして、目が覚めた。


「――魔王様」


その言葉に、純粋な笑顔で目の前にいる黒髪黒目の少年は照れくさそうに笑った。


「やっぱり普通にディランって呼んでくださいよ、ティファニー様」

「いや、敬語じゃない時点で大分譲歩はしている」

「あ……そうでしたね、無理を言ってすみません」

「……」


悲しそうに俯いたきり黙ってしまったが、しょうがない。

何度言っても俺に対して敬語だしな……。

少しでも早く、この方には魔王としての自覚を持ってもらわねばならないのだから。


(大体、こんなひ弱そうなやつが本当に魔王なのか?)


腕も足も細いし、角もない。

見るからに弱そうである。

しかし、黒髪黒目。

れっきとした魔王だ。

可哀想だが魔王に対して敬語を抜いて、呼び捨てにできるような者などこの世に存在しないのだから――。


(……いや、いるか)


そうだった、そういえば。

あいつ――カヴィナなら。

魔王様すら平気で呼び捨てにしそうだ。




読んでくれてありがとう!

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