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10 私ったらなんて格好良い(笑)


「王様さ、王妃様のこと振ってあげてよ」

「…………は?」


きっと世の中の常人は、この言葉が自国の王に対する平民の言葉などと夢にも思わないだろう。


そんな一言を、平民であるのにも関わらず言ってのける私。

なんて格好良い。

……嘘です、冗談。


あ、最初の二文は本当。


強いて言うなら、王様が部屋に入って来たのでしっかり平民の礼をして、王子の紹介を待った上で、敬語で自己紹介をし、王様から多少の無礼は許す・楽にしてくれという言質を取って一番に言った言葉、というだけである。


王妃様と数回お茶会もどきをして、初めて会った時から約2週間後。


私は通い慣れてきた王宮に、今日も来ていた。

最初の挨拶の時、『お前、しっかり礼儀を払えるんだな……!!』という目をしていたそこの王子、後で覚えときなね。


「…………申し訳ありません、父上様。少しその、彼女は……」

「いやいい、ウィリアム。して、テディー商会商会長、それは何故だ?」

「ん、まず王様、王妃様のこと好きなんだよね??」

「ああ、勿論だとも」


余裕そうに王様はそう言ったけど、それが余計にムカついた。

隣の王子は少し驚いた顔をした。

……っていうか、王子の名前ってウィリアムなんだ、覚えとかないと。


「王妃様、王様のことどう思ってると思う?」

「まさか、嫌いだと、彼女が言っていたのだろうか……?」

「……!?」

「…………はあああああ」


王子は急に気弱そうになった王様を見て目を丸くする。

王様と私を交互に何度も見ていた。


「……分かったでしょ王子、結論、こういうことだよ」

「ああ、良く分かった。……本当にありがとう」

「お礼はいらん、その代わり後見人の件は考えといて」

「また手紙を送る、その時に返事をさせてもらおう」

「ん、よろしく……帰っていー?」

「いや、それは流石に……」


……帰れないのかい。


もういいでしょ、解決したじゃん。

眠いなあと思い始めて、やる気が失せてきたのだけど。


ふと、王様の後ろにいた部下さんが手を挙げた。


「あの、すみません、失礼ながら聞かせていただきますが、今の質問で何が分かったのでしょうか……?」

「余も聞かせてもらいたい」

「…………えっと?」

「いーよ王子、義理も交じってるとはいえ親の恋の話とかきついだろうし」

「……頼む」

「ん」


王子は少し気まずそうに視線を逸らした。


……可哀そ。


「あのね王様、私達、ここに来る前に何回か王妃様にも会ってるのね」

「ああ、知っている」

「王妃様、可愛いよね。ふわふわしてて、たんぽぽの綿毛みたい」

「…………?」


私の例えがよく分からなかったみたいで、王様は首を傾げた。


……あ、そうだ、あるよ、この世界にも地球と全く同じ植物。

魔力の溜まってるところは本当に未知の生物しか生えてないけど。


「綿毛って、雨の日は飛ばないよね。ちゃんと地面に留まってくれる。……けど、晴れたら飛んでいっちゃうよ。……もう綿毛になれたんだから」

「…………どういう意味だ」

「王妃様はさ、子供じゃないの。ちゃんと感情押さえて、この貴族社会で生きるための方法を知ってる人なの。……王様、王妃様と喧嘩したことある?」

「…………ない」


だよなあ、と心の中で思った。


あの王妃様は、典型的な凄く良い子なんだと思う。

仲良くなった子とは仲良く居続けられる子。


……ただ。


「王妃様ね、自分の意見を言う前に私の意見を聞くの」

「「――!」」

「そう、なのか?」


この言葉には王子も驚いていた。


慌てて自分の記憶を思い出そうとする王様。

きっと、この人も本当に、本当は王妃様が好きなんだろう。


「……王様、王妃様に最後に好きって言ったの、いつ?」

「…………第二側妃との結婚式の、前日だろうか」

「「――!!?」」


部下さんと王子が驚いていたけど、これには私だってビックリである。

ちなみに、第二側妃様が王宮に入ったのは10年前、結婚式は3年前。

……阿保だなあ。


「王妃様が、言葉にしなくたって何でも分かってくれる魔道具だとでも思ってるの?」

「「「――――」」」


空気が一気に重くなる。

あ、やばい、これは、


「それは怠慢だよ、王様。……ほぼ会ったばかりの私の方が王妃様に信頼されてるとさえ思えるわね」


止まらない、というか、もう、


「王妃様を幸せにできないって言うなら、振ってあげなさいよ。恋に捕らわれて、逃げ出せなくて、だけど愛する人には愛してもらえなくて、他にお妃様がいるからって我慢して、押さえて堪えて、好きを貰えない状況で3年間?笑えるわね、本当。それで好きですって?冗談も休み休み言いなさい。嫌いだと言っていたのか?嫌いにならないのが奇跡よ、王妃様ってば優し過ぎるわ。あなたにそんなこと言う資格があるとでも?王妃様は、鳥じゃないの。籠の中で餌と娯楽があれば楽しく生きていけるような鳥じゃなくて、人。あなたと同じ、あの人は好きとか嫌いを考えられる、人なのよ、分かってる?王妃様と最後に会話したのはいつ?最後に王妃様に笑ってあげたのはいつ?王妃様、婚約してすぐに王宮に入ったのに、12年経っても子供ができないばかりか王様が王妃様のもとへ行ったのだって随分前だから、笑われているのよ、あなたのせいで。せめて王妃様のもとへ通えばよかったのに。それにあなた、なんで王妃様のこと好きだったなら側妃を入れたの?第一側妃が王妃様のこと虐めてること、知ってる?驚いてるんじゃないわよ、王妃様付きのメイド長、第一側妃の実家の手下なのよ。王妃様、初めて会った時、顔が真っ青だったわ。骨が浮き出ているんじゃないかってくらいには腕も細かったし、髪の毛の手入れだって適当で、ぱさぱさだった。最低限の物しか食べさせて貰えないんでしょうね。王妃宮の金を着服しているんでしょうね。本来、ええそうよ、王妃っていうのは愛されるものがなるから、虐めっていうのは側妃間で起こるものよ。けど、前提が違うわ、違いすぎるの。あなた、貴族たちのいる観衆の前で王妃様との仲が良いというアピールしたかしら?してないのでしょう?貴族の圧力に屈していたのでしょう?側妃ばかり構っていたのでしょう?おまけに側妃を二人も入れて、それで王妃様はどれ程傷ついたのか、あなたは――!!?」

「やめて!!」


ばっと、気付いたら私よリ高い背の人物に抱かれていた。

そこでいつの間にか自分がヒートアップして立ち上がっていたことに気付く。


「カヴィナ、あの、もういいです、いいですから、やめてください」


頭がぼやぼやして、声を返すことができなかったけれど、私を抱いているのが王妃様で、王妃様が泣いてるのはよく分かる。


――ああ、ごめんなさい、泣いちゃうなんて、そんなつもりなかったんだけど、泣かないで。


声が形にならないことを不審に思って、けれどどうにもならなくて。


「魔力、押さえてください、カヴィナ、駄目です、もう、これ以上は――」


『カヴィナの体が、持ちません』

――頭の中で響く声は、そう、聞こえた気がした。




読んでくれてありがとう!

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