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8 かくれんぼ?鬼ごっこ?


一週間程経ち、王子から手紙が届いた。

3日後の朝に、王城へ来いと。


うんうん、なんかイライラするなぁ。


この国、王都の王城を取り囲むようにそれぞれの領があるので、私たちテディー商会は王都と国境を2:1くらいの比になるよう王都寄りに店を建てて国を囲う感じで頑張っている。


だから王城もそこまで遠い訳じゃないし、別に苦じゃあないんだけど……。


「もう少し、他の言い方なかったのかな?」

「演じてるんっすよね?しょうがないんじゃないっすか?」

「それにしてもなあ……?」


演じてるのだと割り切れれば良かったのだが、あれはシンプルにただの阿保じゃないかな?


今日は晴天、冒険日和。

せっかく暇ができたので、昨日第四に到着したラリーと軽く遊んでこようかと、今は東門へ行く道中である。


「ちょいとそこのお嬢ちゃん、この間はありがとうねえ」

「ん!リンゴのおばちゃん!もう杖落としたりしないように気を付けなよ?」

「ああそうするとも。それとこれ、この間のお礼だよ」

「お、ありがとー!」

「気を付けるんだよ?」

「うん、またねー?」


過ぎ去っていくおばちゃんに貰ったリンゴに早速齧り付く。


「今の人、知り合いっすか?」

「いや?顔と足が悪いことしか知らないし、ほぼ他人だよ?」

「……それにしては仲が良い感じだったっす」

「んー?随分前にリンゴを落としてるのを拾ったり、その少し後に杖落として馬車に轢かれそうになってるところを助けたりしてたから、いろいろ感謝されてるんじゃない?」

「凄いっすね!?」

「ん、そーお?」


どうやら丁寧にも芯が取られていたようで、私を見かけて持ってきてくれたか、持ち歩いていたか。


……どちらにせよ優しいおばちゃんだなあ。

どこぞの魔族とは大違いだ。


「今日はどこまで潜ろっか?」

「夜ご飯は第四で食べるんすよね?」

「うん!ちゃんと名前板掛けたきた?」

「勿論っす!」


急な眠気からの一日を超える睡眠は、今のところあれから起きていない。

理由が分からないのはなあ。


戦ってる最中に眠くなるかもしれないから怖いんだけど、気にしてちゃ何もできないでしょ、とミーもセレも納得させた。


「ラリーは“緑林の迷宮( ダンジョン)”、どこまで行ったの?」

「俺はもう踏破したっす」

「……えっ?」

「?」

「えっ、もう!?早くない!?」

「そんなことないっす。あそこ、そんな強い敵がいないんすよね」

「ん、そうなの?」

「はいっす。しかも50階までしかないっす」

「おっと……?ならいっそ白桜のほうが良かった?」

「絶対に緑林っすよ!!」

「え?なんで?」

「“白桜の迷宮( ダンジョン)”は寒いじゃないすか」

「ああ……なるほどね。まあ、一日で回るようなところじゃないっていうのは同感かな」


寒い……そっかなるほど、あそこは敵が強くて、とかじゃないんだ。

なんか感慨深い。

らりも強くなったんだなあ。


「……店長?どうかしたっすか?」

「んにゃ、何もないよ」

「?……なら良いんすけど」


そろそろ5月も終わり。

本格的な夏になっていく訳だけど、“お土産”を冷たい……アイスとかにしても良さそうだよね。

かき氷なら魔法と物理で簡単に作れるんだけど、アイスとかシャーベットは大分面倒だからその辺どうしよっかなあ。


「お、珍しいな、白髪の嬢ちゃんじゃないか!」

「どうも~?元気そうで何よりだよ、お兄さん」

「2週間前の魔物の行進(パラダイス)じゃあ世話になった、本当にありがとな!」

「いやいや~、お兄さんも偉かったよ?子供たちを守ってたでしょ?」

「助けられちまったがな!ところで、今日は“緑林の迷宮( ダンジョン)”に行くのか?」

「うん、そうだよ!私も連れも踏破してるんだけど、ちょっと暇つぶしにね!」

「緑林が暇つぶしたあ、そりゃあすげえな」

「あはっ、ありがと!それじゃあまたね!」

「気をつけてな!」


手を振りながら門を通り過ぎると、またラリーが不思議そうな目をしていた。


「今の人も他人っすか?」

「うん、勿論」

「ちなみにあの人はどうやってる知り合ったんすか?」

「えっとね、こないだの魔物の行進(パラダイス)で困ってたとこを私が助けたの」

「……なるほど、店長ってやっぱ凄いっすね」

「うん?ありがと」


そんなふうに雑談をしながら平原を歩くこと30分程だろうか、花畑の中に黒い石に縁取られた泉が見えてきた。


迷宮(ダンジョン)の入口って本当独特なんだよね。


一見普通の泉だから、本当分かりづらい。

ああでも、魔力に敏感な人は近づくと分かるらしいけど。


泉の透明な水面に躊躇なく飛び込むが、不思議と水は冷たくなく、そして水の中は息苦しくない。

ラリーが着いてきているのを確認して、水底の、しかし水面のようにも見える石に囲まれた穴に入った。


「ぷはっ」

「……店長?大丈夫っすか?」

「いや、なんていうかねー?分かってても息止めちゃうんだよ」


泉から出てみるとあら不思議、お花畑だった周りの景色が森林(ジャングル)に早変わり。


ここが迷宮(ダンジョン)、“緑林の迷宮( ダンジョン)”。


私達からすると雑魚しか出ないけど、ここを踏破できるかできないかは冒険者としての壁だろう。


できないならできない止まり、そこで落ちぶれるしか道はないわけだけど、命を落とすよりいいって、みんなそこで諦めるのだ。


まあ、そんな御託はやめにして。


今日ここに来たのはちゃんと目的があったわけだし、ね。


全力でダッシュして、数えてないけど多分20階くらい?

その辺まで来たので、


「どーする?かくれんぼ?鬼ごっこ?」

「かくれんぼでお願いするっす。……ただ、移動するのはなしっすよ?」

「ん、分かった!じゃ、他の人に迷惑かけないようにね!」

「はいっす!いつも通り、制限時間は2時間で行こうと思うっす、いいっすか?」

「うん、隠れる時間は10分で、この階から出ちゃ駄目、ね!」

「それじゃあ俺は待つんで、隠れてくださいっす!」

「ん、ばいばいー!」


ヒラヒラと手を振って、私は走り出した。







「ただいまぁー!」

「お帰りなさいませなのです、カヴィナ様!ですが、遅いのですよ!?」

「うっっ!」


視界の隅でラリーがギクッとした。


いや、びっくりしたことに、気づいたら6時になってたんだよね。


迷宮(ダンジョン)の中は太陽が沈んだりしないから、時間感覚がなくなるんだよなぁ。


「ただいま、ごめんねミー、ちょっと楽しくなっちゃって……」

「ラリーさんばっかりずるいのです!ミーはご飯の当番で行けなかったのですよ!」

「ん、また今度、暇が揃ったらミーも遊びに行こうね」

「……絶対なのです」

「うん!」

「あと、ラリーさんはあとでお説教なのです」

「ううっ!すみませんでしたっすメノウ先輩っ!」

「許さないのです」


この感じを見るに、相当ご立腹な様。

可哀想だが、犠牲になってくれ、ラリー。




読んでくれてありがとう!

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