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絶対王者の備忘録  作者: 夜のほろろ
第一章 異世界転生
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第1話 異世界転生

今回より第1章スタートです。



 「・・・・・・・。」





意識が混濁している。





耳がぼやぼやとしていて何も聞き取れない。





目を開けようとするが開かない。





何も見えないが、目が見えない訳ではないということはわかる。ただ、瞼が重くて開けられない感じだ。





暗闇と無音。





意識はあるのに何も認識できない。





『僕はどうなったんだ?』




僕は死んだのか?あの光は確かに僕に死を感じさせていた。意識を失う瞬間のあの衝撃は、生まれてはじめて感じた生死を左右するほどの痛みだった。


でも今の僕には意識がある。体も特に痛みは感じない。



『つまり僕は死んでないのか?』



もう一つ覚えていることがある。


何か夢を見ていたんだ。長い夢だった。


永劫にも続くとも思えた長い長い夢。決していい夢とは言えない、悪夢。


内容は何も思い出せないのに、ただ酷く悲しいことだけはなぜか覚えている。なぜ悲しいのか、わかりはしないのに自然と目から涙が零れ落ちた。





兎にも角にも、情報がいる。目が見えないことには何もできない。


意識を目に集中させる。目に、瞼に力を入れる。何度かの試行の後、そっと目を開けることができた。涙が出たおかげもあるだろう。


僕の目に暗闇から突如として溢れ出した光で、目が眩む。


溢れた光に体が驚くとともに安心する。光に安心したのは子どもの時以来だ。


目が慣れてくると段々と周囲を確認できるようになってきた。



 「知らない天井だ。」



豪華な装飾が施された天蓋付きのベッドとところどころに金のレリーフや鷹のような鳥やドラゴンのような生き物をあしらったデザインの壁や天井が目につく。


漫画やアニメなんかで何度か聞いたことのあるセリフをつい呟いてしまうほどの、豪勢な部屋の大きなベッドの上で俺は寝ていたらしい。




・・・病院ではなかった。


微かにほんとは何もなくて病院かどこかに運ばれて治療されている最中なのだと心のどこかで期待していたのだが、期待虚しくおよそ日本とは思えない部屋で寝ていたようだ。



あの非日常的な光とこの状況。異世界転移やタイムスリップの類だと思えてならない。


『こんなフィクション染みたこと現実に起こるのか?』


まだ夢を見ているのではないかと思うほどの非現実的だが、あたりから香る香水や芳香剤のような匂いと鮮明に見える景色が、これが夢ではないことを犇犇と伝えてくる。




さらに情報を得ようと身体を起こす。


そこで僕は、漸く自分の体の違和感に気付いた。自分の体を見渡す。


背が小さい。背だけじゃない、手も腕も足も全部小さい。日本の成人男性の平均身長とオランダの成人男性の平均身長の平均ぐらいだった僕の体は、幼児レベルまで小さくなっていた。手足は少しむちむちと弾力を持っており、柔らかい。慌てて顔を触ってみるも感触はいつもの慣れ親しんだ顔じゃない。全く知らない子どもの顔だ。


顔に手を当てたまま周囲を見渡す。子どもの体の僕には広すぎるベッドに豪華な装飾の施された大きすぎるクローゼットにテーブル、椅子、本棚。全て金色に輝いていて、素人目にも相当高級な家具だということがわかる。


そんな中同じく激しい装飾の金色の姿見が目についた。慌ててベッドを降り、姿見の前まで歩く。


全く違う体なのに自然と歩くことができた。体の動かし方はその体に1番染みついている。



 「誰だよ、お前。」



姿見の中の人物を見て確信した。いや、確信するしかなかったんだ。




どうやら俺は転生してしまったらしい。




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・犇犇 (緊緊):ひしひし=1 強く身に迫るさま。切実に感じるさま。2 すきまのないさま。ぴったり。


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