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絶対王者の備忘録  作者: 夜のほろろ
序章
1/8

第0話 ある日ある時

よろしくお願いします。





・・・朝。




劈くような蝉の声で目が醒める。




いつもと変わらない天井。




眠い目を擦り、身体を起こす。




午前6時45分。


既に日は昇り、朝だというのにかなり暑い。


夜の間つけっぱなしにしてあった首振り扇風機を止め、部屋からでる。


顔を洗い、朝食を作る。今日のメニューは、みそ汁と白飯に目玉焼き。よくある朝食のメニューだ。


用意するのは1人分。兄弟はおらず、両親も2年前に事故で亡くなっているためだ。


朝食を済ませ、軽く身なりを整えてから制服を着る。午前7時30分。最寄りの駅まで歩いて数分。今日も遅刻せずに行けそうだ。


イヤホンとスマホをポケットに入れ、鞄を持って家を出る。


外に出た途端、唸るように照りつける太陽と、熱されたアスファルトからくる熱気を身体中に浴びる。


「・・・暑い。」


7月中旬。1学期の期末テストも終わり、多くの学生が夏休みを心待ちにしている頃。少し歩いただけで、全身から汗が流れ出す。最近の暑さは本当に異常だ。


身体が溶けるかと思う夏の猛威の中、なんとか最寄りの駅に辿り着いた。改札を通り、階段を登ると既に少し列ができていた。決して利用者が多いわけではない駅だが、通勤通学時間帯なだけあり、それなりの人がいる。


電車の最後尾の車両の列にならび、ポケットからイヤホンを取り出す。スマホで音楽アプリを開き、ロックでセンチメンタルな音楽を流す。印象的なイントロから始まる、刺激の効いたフックが耳に心地良い夏の憂いを謳った曲だ。最近ではこの曲を聴くのが日課になっているほど、ハマっている。


曲がサビに差し掛かったあたりで、電車が来た。電車内はよく冷房が効いており、火照った身体が冷やされていく。冷房を考えた人は偉大だと改めて感じる。最後尾の車両に乗っただけあり、まだ空いている席に座ることができた。



電車に揺られて数十分。学校最寄りの駅に着いた。電車から降り、学校までの道を歩く。周りは同じ学校に通う学生達で混雑していた。駅から学校へ向かう道は車通りが多く、道も狭いため、学校の教員が毎日入れ替わりで、生徒の混雑の統制と安全確保のために道路脇に立っている。


イヤホンをつけたまま学校へ向かう。人の多さと夏の暑さからか、自然と歩みが早くなる。教員の横を会釈で通り過ぎて、校門をくぐる。


学校に入り、自分の教室に向かう。目指すは、階段を登った2階の真ん中あたり、2年3組の教室だ。


僕が通う高校は、1年生から3年生までそれぞれ、1クラスあたりおよそ40人の6クラスずつ、約720人が通っている。世間では一応進学校と呼ばれている。部活のレベルも高く、多くの部活が全国大会に出場しており、中には全国トップレベルの部活もある、文武両道な学校だ。僕はどの部活にも所属していないが、運動神経は悪くはない方なので、時々助っ人としていくつかの部活に呼ばれることもある。


そんな事を考えているうちに、教室についた。僕の席は教室のドアから1番遠い列の最後尾。よく教室が見渡せる位置だ。耳からイヤホンを外しポケットにしまってから、教室のドアを開ける。



 「おはよう。明音(あかね)。」


 「あら、おはよう。(れん)。」



冷房で冷えた教室の空気を身体で浴びながら、ドアを入ってすぐの席に座る清宮明音(しみやあかね)と挨拶を交わす。彼女はこのクラスの学級委員長を務めており、所属している陸上部では部長として全国大会に何度か出場したことがあるらしい。学業の方もそれなりに優秀で、定期テストの学年順位は最高で12位だそうだ。


そんな彼女とは小学校から一緒の、所謂幼馴染というやつだ。昨年は別々のクラスだったのだが、今年は同じクラスになった。昔は家が近所だったこともあり、子供の頃からよく一緒に遊んでいたのもだ。さすがに高校生になってもそうとはいかなかったが、別に仲が悪くなったわけではない。



 「零、今日のお昼休みか放課後空いてる?ちょっと塾の宿題で

  わからないところがあって教えて欲しいんだけど?」


 「今日は放課後バイトあるから、昼休みならいけるよ。」


 「ありがとう。いつもいつも助かるよ。」



彼女が微笑みながら言った。整った顔つきと抜群のスタイル。大体の男子達はこの笑顔で落ちるんじゃないだろうか。実際かなりモテるようで、噂では毎週誰かしらから告られているらしい。校外にイケメンで財閥の御曹司の彼氏がいるとかいう噂があるほどだ。まあ文武両道で性格も見た目もいいんだから当然と言えば当然だが。



彼女との会話を終え、席に着く。午前8時32分。HRが始まるまであと8分ほどある。さっきまで流れていた曲のジャケットを上にスライドして、ロックを開ける。ホーム画面に設定されている友達と撮った写真を横目にインスタを開く。画面上部のストーリーをタップして見進め、誰かもわからない人の誕生日を祝う内容のものが流れてきたあたりで、ちょうど僕の後ろから声がした。



 「零!おはよ〜!」


 「おはよう。利空(とあ)。」



開口一番、少し気怠げな僕に反して、朝だというのに元気な赤星利空(あかほしとあ)の声が頭に響く。利空も明音と同じく小中高と一緒の幼馴染だ。


毎日夜遅くまでゲームをしているらしく、授業中はほとんど寝ている。それでも中学の頃はお昼から登校してくるなんてこともざらにあったので、ちゃんとHRに間に合う時間に来ているので、成長している方だ。ほとんど授業を聞いていないくせにテストでは、いつも学年トップクラスの成績をとっている。前回のテストは僕が凡ミスを重ねたこともあったが、僕より点数が高かった。



 「零〜、今日の英語の課題写させて〜」


 「いいけど、たまには自分でやってこいよな。頭良いんだからこれぐらいの課題すぐ終わるだろ?」


 「ふふん、俺はゲームで忙しいんだもん。そんなものをしている暇はないのだ。それに零が写さしてくれるし、いいじゃん。」


 「俺が学校休んだらどうするんだよ?」


 「そこは心配してないよ。だって零が休んだとかとか見た事ないし。まあ最悪零が休んでも授業始まる前に終わらせられるし。」



そんな話をしていると、教室の扉が開いて担任の先生が入ってきた。時計を見ると、もうそろそろHRが始まる時間だ。



 「ほら、ノート渡すから、席座りなよ。もうチャイム鳴るよ?」


 「ありがと〜。零!まじで感謝!」


 「はいはい。」



軽く利空を遇らっていると、ちょうど始業のチャイムが鳴った。ざわざわとした教室の空気は、チャイムが鳴り終わるのと同時に収まり、先生が話し始まる。



 「皆さん、おはようございます。もうすぐ夏休みですね。夏休み明けには文化祭と体育祭が控えています。本日もそれに向けた準備などがありますが、くれぐれも熱中症には注意して活動してください。今日はどうやら日中最高気温を更新するようなので、こまめに水分補給をしたり、炎天下での活動はできるだけ控えるようにして下さい。では今日の連絡です・・・・・」



そんな風に続いていく先生の話を聞き流しながら軽く窓の外を眺めていた時、何の前触れもなく突如として、教室の()()()が光りだした。



白く淡い色の光…



見惚れるような光…



その光が僕の網膜に焼きつく。



 「・・・!」



瞬間、全身に悪寒が走る。目の前の非日常性を認識するよりも速く、体が動く。僕が動き出してからコンマ数秒の後、利空や明音を含むクラスメイトも何人か動き出す。


窓を開けようとするが、鍵は空いているのにびくともしない。サビてるとか何かがつっかえてるとかそんな感じではなく、壁そのものになっているように動く気配すらしない。窓を割るために座ってた椅子を叩きつけるが、とてもガラスにぶつけたとも思えない感触と衝撃がし、跳ね返された。


利空や明音の方をみると、ドアや廊下が側の窓からの脱出を試みていたが、どうやらこちらと同じように無理なようだ。


この教室から出ることはできない。


つまり、()()から逃れる術はないということだ。



教室の光がより一層強くなる。


心臓の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じる。受け入れ難い現実を前に、冷静になりきれない頭で必死に思考を巡らせる。



改めて周りを見渡したことで、この非日常の中の異常にようやく気付いた。




瞬間、総毛立つ。




『死』




ドラマや漫画やニュースでよく目にする人の死。2年前に両親が事故で死んだ以来、まともに死を感じることなんてなかったのに、目の前のそれは否が応でも死を感じさせてくる。


「なぜ死ぬのか」「これは何なのか」何一つとして理解できない。理解しようにも思考がまとまらない。それでもたった一つだけわかることがある。



『僕は、今から確実に死ぬ。』



光がさらに強くなり、もう周囲を認識することすら難くなってきた。意識が段々と薄れていく。もうこの異常から逃れる手段はないだろう。



「せめて・・・僕だけで・・・。」



薄れゆく意識の中、僕は無心でからだを動かし、周囲の人間を教室の中心へと押し出す。それと同時に自身は教室の隅へととびのく。



光は遂に教室を埋め尽くし、俺の周りはひどく暗い黒で覆われた。目も見えない耳も聞こえない。自分の身体の動かし方さえわからない。



 「・・・・・て。・・・・・・・・・・・ま。」



そんな中、遠く何か声が聞こえた気がした。



助けを求めるような、命乞いをしているような、そんな声。



クラスの誰かの声かと思ったが誰の声とも違う。でも、どこか懐かしいような気がする声。



声の主を思案している最中、全身に走る強い衝撃を感じ、遂に俺は意識を手放した。

お読みいただきありがとうございます。

はじめまして夜のほろろと申します。

予てより書きたいと思っておりました、異世界転生ものを書きたいと思い、筆を執らせていただきました。

しかしながら、私は文章能力が稚拙でありますので、内容は一部変更や校正させていただくことがございます。あらかじめご容赦ください。

今後この後書きの部分は、一言や人物紹介、ちょっとした補足などを書いていく予定です。

連載はしていく予定ではございますが、時間が空く可能性が大きいです。首を長くしてお待ちください。また、誤字脱字等あるかもしれませんが報告が入り次第直していきますのでどうぞ今後ともよろしくお願いします。

それでは今回はこれぐらいにして、主人公「雨宮零」の人物紹介を載せて終わりにしたいと思います。

次回もどうぞよしなに。



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主人公

名前:雨宮 零 (あめみや れん)

性別:男

年齢:17

誕生日:6月17日

2年前に両親を交通事故で亡くしており、現在は1人暮らしをしている。高校は特待生枠で入学しているため授業料は免除されている。生活費は両親の遺産と保険で賄っているが、バイトもしている。勉強、スポーツともに学年トップクラス。1人だけ異世界に転生した。

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