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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第ニ章 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。
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第015話R 2-2 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。

6月28日修正~

「……姫城、本当に死ぬ覚悟があるのかよ?」



 それは一歩間違えば自殺教唆になりかねない、だから俺は言葉を整理していく。


「……ありますよ。好きな人が他人に取られる痛みに比べれば、死ぬ痛みなんてマシなんです」


 自分の首にナイフを付きたて芯の通った真っすぐな瞳で彼女は言う。

 その眼に迷いなど無く、俺一人だけを見据えてくれていた。

 そうか……ここまで本気で、そこまで俺を好いてくれてるのか――それならお礼を言わなくちゃな。


「ありがとな」

「え」


 姫城はその言葉の予想外さに驚き一瞬呆然とする、そして再沸騰するようにして早口で――


「な、何故お礼を言われたのですか!?」

「気にしないでくれ」

「気にしますっ!」


 その時の突き詰めてきた彼女はまさに生き生きしていた、生に満ちていた。

 ほら、話しているだけで現れた――その表情はとても良いものじゃないか。


「……多少悔みたいこともありますが、私は決めた以上ここで死のうと思います」

 

 それでもまだ彼女の意思は揺らいでいなかった。


 ナイフの刃先が首の皮に触れぷつりと弾け、血の玉が出来それが下へ流れて小さな深い赤色の一線を作る。

 彼女の覚悟は本当だった、俺はそう再認識する。

 だからこそ、俺は――



「今のお礼の理由を伝えようと思ったのに、もう死ぬのか。残念だ」



 そう、友人と話すようなノリで呟く。

 必死に引き留めると逆上する恐れがあることはなんとなく分かっていた。

 なら俺は平常心を装って、さぞ平静に言葉を紡ぐのみだ。


「え?」


 その言葉を聞いて、彼女は首からナイフを数センチ離した。

 効果はテキメンで、意識を外させた。


「いや、死ぬんだったら別に聞かなくていいよな?」


 もはや独り言にも聞こえるその言葉。

 しかしそれが姫城には気になって仕方なかったのだろう。


「よくないですっ! 教えてください!」


 ……やっぱりな、食いついてきた。

 押して駄目なら引いてみろとよくいうものだ。 

 食いついてきた彼女の眼には、覚悟などではなく好奇心に満ちている。 


 そして、俺は更に予想外なことを言い放ってやった。 



「……馬鹿じゃないのか?」



「!」


 実際言われた姫城はナイフを構えたまま呆気にとられている。


 なんだか今の俺はらしくない、妙に挑発するような物言いは本当にいつもの俺らしくない。

 でも、不思議と――懐かしいような気さえする。


「え、えと。ユウジ様から”馬鹿”と言われるのはよいのですが……ちょっと嬉しいですが」


 いや、いいのかよ。

 嬉しいのかよ。


「それは一体どのような意味で?」

「……姫城さんが俺のことを好きだと仮定して」


 我ながら自意識過剰であろうとは思う、話の流れ上仮定しなければならないのだが。

 しかし返答はというと――


「確定してもらって結構です、っていうかしてください。よろしくお願いします」

「え ああ、うん」

「あっ、ありがとうございます!」


 思い切りテンポ崩された、話が進まない……とにかく進行させないと。


「他人に取られる痛みに比べれば、死ぬ痛みなんてマシなんです……って言ったよな」

「はい、すごいですね! 一語一句合ってます! 流石ですユウジ様」


 いや、だから……うん。

 とにかく俺は流されることなく、そして顔を引き締めて俺は言う――



「それはただ痛みから逃げてるだけだ」



 ~思う、などと誤魔化すことなく、確固たる断定で。


「……いいえっ! 私はこうして死の痛みを選んで――」

「言い訳だな。死ぬ選択ならその痛みは一瞬だ。自分の妄想した思い通りの記憶と共に散れるのかもしれない。でもな――」


 死の痛みを俺は知らない。

 そしてこれからも俺自身は知ることがないのかもしれない。

 それでも、俺は――この目でユキが死ぬところを見た、もうコリゴリなのだ。

 桐のヒントで一度見るだけで済んだ、それがまた別の女の子でまた見ることになるなんて――俺は御免なのだ。


「自分の妄想だけで、生きて、死んでいくのは本当に本望か?」

「っ!」

「思い出がなくていいのか? それは、余りに悲しいんじゃないか?」

「……今の私を全否定するんですか」


 彼女は途端にナイフを突き付けるポージングさえ崩さないものの俯いて、声をわざと低くするようにして呟いた。


「ああ、否定してやるねっ! 死んで一人楽になろうなんて考えてるお前みたいな大馬鹿者なんて全否定だよ!」

「な……」

「チャンスを探そうともせず、あーだからこーだからと勝手に理由付けして、諦めて死のうとしてる奴なんてただの負け組だ、今のお前はそうだろうな」

「そ、そこまで言うなんて……酷いです!」


 酷い? そりゃ酷く言い散らしてるからな。

 そうだ、いくら罵ってたとしても、俺がそして言いたいのはな――たった一つのことだ。



「だから、生きてくれよ」



「っ」


 また驚きの表情を形作る……思ったよりも表情性豊かじゃないか。


「自分を否定されて、大馬鹿者とか負け組とか罵られて悔しかったら……生きてくれよ」

「……」

「俺はお前を知らない。多分お前も俺を知らない」

「し、知ってます! 私は、この学校に来たあの日から――」

「それは俺のほんの一部だ。本来の俺は別人かもしれないぞ」

「!?」

「今の俺さ、お前を罵っている俺をこれまで想像出来た?」

「い、いえ……」

「だからなんだよ。お前は俺を知らない、殆ど全くな」


 知るはずがない。

 ただストーカーして外面だけの俺を見たって俺の本質が見える訳じゃない。


「……し、知りたいです」

「ん?」

「……知りたいですっ! ユウジ様のことを! 教えてください! ユウジ様のことをっ!」


 彼女はかつてないほどの強い感情を露わにした。

 それは興味に溢れた感情。そう、それでいいんだ。


「それなら、同じ道を歩いて貰わないとな。一緒に話したり、飯したり、帰ったり。関係を持てば別のことももっと」

「べ、別のこと……?」

「それが知りたいならさ……生きていくしかないよな? 俺だって――姫城のことを知りたいからこそ、生きてほしい」

「っ!」


 そう問う、彼女は瞳を閉じて数秒にも満たないほどに思考するように。

 そして返ってきた言葉を聞く。


「はい……覚悟しました。これから生きていく覚悟をしました!」

「ああ、それで俺は良いと思う」


 姫城は首に付きたてていたナイフを腕ごと下ろし、更にナイフは手を離れて床に金属音を響かせて落ちた。


「……わかりました。ユウジ様の言う通りかもしれません。いえ、そうですね」


 続けて彼女は言う、それを俺は黙って聞く。


「私にも傍にいたいという気持ちがありながら、奪われないために……独占欲が強すぎました、でも」


 独占欲ねぇ……まぁ桐で慣れてるからなぁ、断然こっちの方が強いけど。


「――怖かったんです。一度手にしたものが、欲しかったものが、他の人に取られることが! 他人の手に渡ったらもう二度と返ってこない気がして」


 ……そういうことか。


「でも、私はやっと遅過ぎるぐらいに解りました」


 独占欲もその恐怖への怯えから来たものだったんだな。



「ごめんなさい――」



 顔を下げて涙声でしっかりとそう言った。

 隠された顔から一粒の水晶のように輝く透明の雫が、地面へ落ちていったのを俺は見逃さなかった。


「それと……ですね」

「ん?」

「ごめんなさい」

「?」


 二度目の謝罪に思い当たる節がない俺は首を傾げる。


「私の告白は撤回します」

「え?」


 ……撤回? あ、うん……流石にそれはビックリだが、そうなるかもな……うん。

 割と落ち込んでるんじゃないんだからね!

 まあ、死なないで生きてくれるだけで――俺はそれでいいや。


「まだ私にはユウジ様を独占する権利はありませんでした……だから告白は撤回します」

「……まぁ姫城が、そう言うなら構わないぞ」


 少し残念だったけどな! そうして黒髪を揺らしながら姫城さんは階段を上って行く。 


 すると階段の半分ほどで立ち止まって彼女は振り返った。

 そういえば、今「まだ」って……?



「でも私はまだ諦めません。いつかユウジ様が私に惹かれる日を待ち、いいえ……私が好きにさせてみせますから。私が魅力的な女性になった時は覚悟しておいてください」



 そう笑顔で言い、姫城は駆けて行った。

 その去り際に見せた彼女の笑顔が、今までで一番に魅力的だったことは今は黙っておこう。


「おいおい! 首の血止めておけよ!?」

「えっ……あ! 忘れてましたっ」


 ……案外彼女は天然なのかもしれない。

 そして姫城は天然なのか、うっかりなのか知らないが俺の彼女へのお礼の理由を聞かずに去って行ってしまった。


「こんな俺を好きになってくれて、ありがとう……って言うつもりだったんだがな」


 告白を撤回されちゃ言うタイミングも無くすってもんだ。

 まぁいいか、姫城が生きてさえいればまた話せる機会もあるかもしれないし、気長に考えるとしよう――


 そしていつしか罵り気味に熱くなっていた心も、いつもどおりの落ち着きを取り戻していく。

 何故か自然と彼女を呼び捨てで呼んでいたのもまた、次に会う時には”さん付け”に戻ってもいるのだった。

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