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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
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第223話 √2-28 G.O.D.

癒し?

 舞台戻って学校、少しばかり日の落ち始めた窓景色をゆったりとみる余裕など一切なし。

 ユウジはホニさんがやはり気がかかりだった。なんというか、一種の親バカっぽいですね。


「……ということであって、靴下は――」


 国語教師が何故か「矛盾」という教科書内容に始まり「靴下とは靴の下ではなく足に付けるものであって、それでは矛盾を――」

 というなぜか靴下の名付け親批判が始まり、そこからは春に使い心地の良い靴下語りをし始め、揚句には通販顔負けの生徒向けセールスを始めるという展開に生徒たちが全員揃って飽き始めている頃。

 もういいだろ、と流石にチャイムさんも呆れたかキーンコーンカーンとチャイムを鳴らす。


「気を付け、礼」


 流石の委員長も呆れていたか、教師が語りを続行しようとしたところで有無を言わさず号令をかけた。

 

「あ……じゃあ、今日はここまで」


 謎のクラスメイトの連係プレーによって拍子抜けした国語教師はまだ話し足りないと言わんばかりな表情しながら教室を出て行った。

 そうして担任がホームルームをしに帰って来るのだが……それが二分に満たないのに、いつもより長く感じる。

 早くに帰りたいんだよ! ホニさんが気になるんだよ! ああ、早くしてくれよおおおおおおおお。


 貧乏ゆすりこそしなかったが、今度は机の端をトントンと叩いて行く。

 「あの動きは……モールス信号だとッ!」「おお、あの場所でトントン相撲出来そうなくらいの勢いだな」「あのテンポもしかしてメロディーは……3月○日!?」「リズム天国がやりたくなってキタァッ!」と傍らから聞こえるが案の定ホニさんにのみ気持ちは向いている。


 家事できたかな指きってないだろうか変なところで寝て風邪ひいてないだろうかご飯ちゃんと食べただろうかあの頃のままだろうか。

 不安による焦燥で俺の指タップはまさにゲームの連打化しており、次第にボタンを擦るように行う「上級プレイヤー式連打」へと変わっていく。


「待たせたー、それじゃ――」


 担任がやってきたので連打を止める。その代償に足はうずうずと動き足を底面に付けながらも頻繁に動かすようになる。


 というかユウジ落ちつきなさすぎだから。せっかちにもほどがあるから。


「――これでホームルームを終わる、委員長号令」


 この時にユウジの腰は浮いていて、その急ぎっぷりにフライング摘発してやりたい。

 鞄も担任から死角になる位置で手に鞄を持っている。


「気を付け、礼っ」

「っ――」


 スタートダッシュよろしくの猛スピードで駆けながら「先帰るわー」と言って教室を去る。

 担任が前扉から教室を出ようとしたのとほぼ同時にユウジは後扉から脱出する。 


「(まっててホニさあああああああああああん)」


 流石に内心を思い切り吐露することはなかったものの、未だ生徒が少ない廊下を陸上部がスカウトしてきてもおかしくないほどの火事場の猛ダッシュで駆けて行った。

 ちなみに置いて行かれたいつものメンバーは「……ユウジ?」と、現状訳がわからなくユウジが颯爽と帰っていたことで唖然としていた。

 そんな背中をユイは追って行き「アタシも帰るかあああああああああ」とこれもまた走り去っていった。

 取り残されるのはユキと姫城とマサヒロというマサヒロの疑似ハーレムが完成するものの、残念なことに二人の気持ちはマサヒロに向いていないのが非常に虚しい。


「ユウジ、どうしたんだろうね?」

「さぁ?」


 そんな女子二人にも割り込めないマサヒロは「今日のユウジは変だったな……って、もしやホニさん関係か!?」と呟くと。


「マサヒロ! それ本当?」

「高橋さん、それは本当ですか?」


 ユウジ関係のことになるとアツくなる女子勢に驚きつつも。


「ああ、まあ今朝といい授業中といい……家に来たばかりのホニさんが気になるんだろう」

「「!」」


 二人驚愕、なんというかこの三人でも見ていて表情豊かで飽きないですね。


「……姫城さん、明日は」

「ええ、問い詰めましょう」

「え……お嬢さん方、そんな怖い顔して――」


 マサヒロの言葉に反応するはずもなく、二人並んでゆっくりと帰路に就きました。

 ……って数日で大分仲良くなりましたね、この二人。やっぱり攻略対象のヒロインでないと、このように関係も異なるのですねー



* *



 我は桐とげーむを一通り遊び終わる……なぜか勝負結果で桐が絡んで来るけど。

 少し離れて貰って、時計を見る。もうそろそろユウジさんやユイの帰る時間だ、と思っていた。

 桐が帰ってきて、寂しさは和らいだとはいえ。やっぱりユウジさんがいないと寂しかった。

 ユウジさんが帰って来るのを、我は心待ちにしていた――


「ただいまっ!」


「ユウジさん、おかえりー……ってどうしたの!? なんか息切れしてるけど」

「はぁ……いや、なんとなく走りたくなってな」

「そ、そういうものなの?」

「あ、ああ」


 ユウジさんは何故か息を荒げながら玄関に滑り込んでくる。

 我がそろそろ玄関でユウジさんを待とうかなー、なんて思って玄関に向かった矢先に玄関が鍵が開く音と同時に開いた。

 

「ホニ……さん、は……今日、どうだった……?」

「え、うん! 一応出来たと思うよ?」

「そう……か、良かった……はぁ」


 するとユウジあんは安心したように息をはく。ユウジさんはもしかして我の仕事ぶりが気になったのかな?

 玄関をあがって、居間へと二人やってくる。その頃にはユウジさんも落ちついていたみたい。


「洗濯物はソファの上に置いてあるから、ユウジさんのものは自分で持って帰ってもらう……で良かったんだよね?」

「ああ、大正解。さすがホニさんだ、しっかりしてる」


 と、言うと我の頭を撫でてきた……え、こ、これ……すごい気持ちいいよ!?


「ああ! ホニさんつい撫でてしまった。なんかすいませんホニ様、悪意はないので――」

「あーっ、敬語になってる!」

「あ」

「昨日言ったよね! 我には敬語なしで、我のことは様付けはナシだって!」

「あー……そうだった」


 そして我はユウジさんに心の底から感謝しているからユウジ「さん」と呼ぶようにした。

 余所余所しい感じがして敬語は好きじゃないし、様付けもなんか我が各を付けているようで……他の誰かが言ってもユウジさんにだけは言ってほしくない。


「それに……撫でるのは、我的には結構……好きかもだから」

「!」


 少し照れくさかった、撫でるというのはちょっと子供っぽい印象を何故か我は持っている。

 けれど、それが我には心地よかった。

 

「とにかく! 我の事は呼び捨てか、妥協して”さん付け”まで! 我はユウジ”さん”って呼ぶし同じだよ!」

 

 ユウジさんとユウジさんのお姉さん以外は呼び捨てで呼ばしてもらってる、でもそれはユウジさんが我にとっては特別な人だからだ。

 我を救ってくれた、恩人だから。我は何度も言うけれど、ユウジさんに心の奥底から感謝している。

 ここに住まわせてもらうのもユウジさんが押し切ってくれたのと、ユウジさんのお姉さんのおかげだから。

 だから二人に我は”さん”付けをしている。


「了解した、ホニさん。これでいいんだよな?」

「うん!」


 やっぱりこの喋りの方がいいな。


「それでホニさんは……おお、綺麗に畳まれてる。期待以上だ」

「うん、少し頑張ったよ! ユウジさんの期待通りならいいかな」

「あとはきっと皿洗いとかもやってくれたんだろうし……お疲れさま、ホニさん」

「!」


 そう褒められて嬉しかった。胸の奥がゆっくりと暖かくなっていく感じ……撫でてくれていると同じぐらいに心地よい。

 そうだ、感謝されることがかつての我の喜びだったんだよね。ずっと忘れてた。


「お役にたてた?」

「もちろん」


 そう言って我の頭に手を伸ばして、優しく包み込むように撫でてくれるユウジさん。

 幸せだ。こんな会って数日も経ってないのに、こんなに幸せでいいのかな……なんて思ってします。

 ユウジさんと出会えてよかった、我の今までの空虚だった時間を埋めて行くように――この数日が濃く温かい。


 しばらくしてユイやユウジのお姉さんが帰ってきて、我がやってきた家は次第に賑やかさが増していく。


「よかった……」


 ユウジのお姉さんのつくった料理を食べながら、ユウジさんとユイが口論している中。

 誰にも聞こえないぐらいの声で、我はそっとそう漏らした。

 

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