第210話 √2-15 G.O.D.
5-1参照~
その休日、ホニさんに次々家事を教えるもそれはもうスピーディに覚えてくれたのだった。
まさに俺顔負け、姉貴の次点といったところだろうか? ……それでも紆余曲折の場面があったので機会があったら話そうと思う。
ご飯は何故か和風なものしか出来ないけど、それは姉貴に並ぶ絶品料理達。ホニさんのつくるけんちん汁が素晴らしかった……
隠された家事スペックに驚愕しつつ、そうして俺と姉貴は安心して家事を任せることが出来るのだった。
五月六日
えーと、バッター代わりましてナレーターです。
現在朝の六時五五分、目覚ましの暴動開始まで五分を切ったその頃。
一応かけられていたはずの鍵がプライバシーよさようならと言わんばかりに開けられ、思わぬ訪問者が訪れたのです。
「…………しー」
カメラが無いのにカメラ目線、こちらに向かって静かにするよう促す訪問者。
その容姿は藍浜高校制定の冬季制服で白地に明るい青を基調としたある種ベーシック、ある種古臭いデザインのセーラータイプの制服に身を包みます。
首元までで切られた茶色のショートヘアーに、実は結構胸が有りくびれは分からりませんがほっそりとして足は長く長身なスタイル。
「おはよぅございまぁす」
……そして全てを破壊する、縁日商でさえ首を傾げるしっかりとガラスで出来たグルグル眼鏡。
目を覆い隠し、表情を大きく隠すそれは彼女のトレードマークでもあり。
「現在は朝の六時五九分ですー。あと数十秒で七時を迎えようとしています。そして今回の企画は――アタシが下之ユウジのベッドに入り込み、うんたらかんたら」
ユイです。というか分かりましたよね? ヒントがここまで溢れているので気付いてくれるとは思います。
というかユイ、ユイの台詞は今のところ使いまわしなのにそれで略したら……
「ちなみに挨拶を出来るのは下之ユウジが起きていないのが条件で、目覚ましが鳴ってしまい起きてしまうとそれはアウトです」
……ええと、二度目ですが。すごくどうでもいいと思います。
「企画開始時間は七時。そして目ざましの稼働開始時間も七時、つまりアタシの瞬発力が勝負の鍵であります」
……カメラがあるかのように、何もない扉へと話しかけるユイ――
「そう話している間にもう七時まで残り数秒を切っていました、ではみなさんお楽しみくださいこれがアタシの雄姿ですっ!」
一応女子なのに雄姿とはこれいかに。まあ悪い意味で勇ましいっちゃ勇ましいですが。
ピッピッピッ、三、二、一、0、ピィ――
「(みえろっ!)」
命令形になってる!?
ピィリ(目覚ましの鳴ろうとする音)パシッ(目覚ましを止めるユイの手の叩く音)
「ご覧ください成功です! てってれてれててー(肉声演出)いま時計の針は七時一分を超えました、やりました! 我が軍の勝利です」
……かなりの少数精鋭ですね。……って、この台本のセリフ覚えてるのはどうしたんでしょうねえ? なんか変に板について来たせいでなんか悲しいですよ。
「では企画の本筋とも言える、下之ユウジのベッドにinto!(暗いですねー、おっと、まだユウジは眠り続けています。 ではでは」
ユイは何かを思い当たったかのように自分の顔辺りをぺたぺた触ります。
「(あれ? 眼鏡は? 眼鏡眼鏡……ああ、頭の上にあったー! アタシったらドジだなー、テヘ☆)」
はぁ……眼鏡かけたまま布団なんかに入るからですよ――って、え!? 前の展開と違う!
いやでもなんで布団の中でもてへポーズ取るんですかユイ、動いたおかげで少しカーテンがめくり上がって朝日の侵入許しちゃってますよ!
「ん……?(朝か…ん? 布団の中に誰かいる?)」
「(ほほう、気付かれるか? その前に退散するかな)」
「(誰……だ? 暗くて正確にわからねぇ))」
ユウジは布団に入っていた手を動かしはじめます。すると――
「ひゃはは、ユウジ、何処触って……だ、だめだって――」
「んー……(ぬいぐるみかなんかか? いや、そういえば倉庫から低反発クッション持って来たんだっけ? にしては感触が違うな……)」
「ちょ、ユウジ……ひゃっ!?」
「?(むに? なんか今までの肌さわりとも違うこれは……懐かしい、なんとも母性の――)」
「い、いぃやぁっ!」ドスッとユウジの腹へと衝撃が落ちました。
「げ、げふっ!?」
……分からない方へのご説明。誰かいるのかと布団をかっぱらう手も有りましたが、春の布団のぬくぬくは惜しくとりあえずは手探りで探すことしたようです。
そんな手がユイの体をぺたぺたと触り、果てには女性の持つであろうふくよかなで柔らかな部分……む、胸に触れてしまったのでした。
あまりの当然さと衝撃に、ユイもキャラを忘れ――ごほんごほん、我を失って少女さながらのリアクションを取った上でユウジへと腹パンを決め込んでしまったようです。
「はぁはぁ……」
布団の中で息絶えるユウジをよそに、布団から息を荒げて出てくるユイ。
あの眼鏡もかけられずに頭でズリ落ちそうになってますけど、大丈夫ですか――って、ええ!?
「びっくりしたあ」
ええ、これは……むぐぐ<規制>
「ユウジったらいきなりアレだもんなぁ……でも、腹パンはごめん、ユウジ」
むぐぐ……<と手で胸辺りを隠すユイ、どこか顔も紅潮しているように見えます>
「……あちゃー、殴って気絶させちゃったけども、どうしようかねえ」
むぐっ<目を以前のバカ姉のように”×”にしながら倒れたままのユウジを見て>
「……あれ、使うか」
何かを思い出したかのように自分の部屋へと戻るユイ、返ってくるとその手に持つのは――
「これなら入るだろう」
そう言い手に持つ”それ”を引きよせました。