第621.22話 √6-21 『ミユ視点』『五月六日・五月十日』
私こと下之家ミナの姉とユウジという兄を持つ次女のミユは今日もまた自室のパソコンのモニター越しに世界を見守っていた──
「というか……肝試しイベントがあったのにラブコメのラの字もない!?」
ホニさんとユウ兄が出会えないことに気を取られていたけど、ユウ兄と福島が仮にも肝試しデートをして何のラブコメ的発展もなく後日も何もないなんて!
そりゃユウ兄視点では何度も死にかけたり死なせたりでそれどころじゃないのは分かるけどさ!
「ここらは共通ルートじゃからそこまで好感度が上がらないのはわかるがのう……」
『現状見ている限りユウさんからコナツへの好感度がゼロなのが気になるかな』
『やっぱり最初に告白して振られてるのがマズいと思う』
桐・アイシア・ナタリーがそう思考・考察していてなるほどと思う。
画面越しには丸見えなユウ兄の内心も、完全に友達への接し方になっていて恋愛的進展は今のところ感じられない。
『コナツの意に沿わないとバッドエンドを迎えるこの世界でも、コナツの行動を恋愛感情と結びつけるのは難しいね。所有物に対する独占欲に近いかも』
福島の思考はかなり極端で行動的には一部はヤンデレに分類されるかと思えば”ラブ”な感じはまったくしないんだよね。
アイシアがそう解説する通り新しく出来た友達という”モノ”への執着にも思えてしまう。
「このゲームのシナリオ的に友情グッドエンドってありえるの?」
『原作にはないね』
『あくまで結ばれんと正規エンディングは迎えられないはずじゃ』
アイシアと桐から否定されてしまった。
この世界ループを抜ける可能性の一つにあるエンディングを迎えること、グッドエンドが無いというならどうにか恋愛的ハッピーエンドを迎えないといけないわけで……。
「ま、まだ慌てる時間ではない……まだ共通ルートで時間もあるからのう!」
『終盤でも幼馴染設定や許嫁設定を生やせばいけるいける……原作にはないよ!』
原作にないならダメじゃん!
『共通ルート最後のイベントに来ました』
ユミジがそう知らせてくれたので画面を注視すると……こ、これは!
五月六日
「共通ルート最後の取ってつけたようなお色気イベントだ!」
『ここでのラッキースケベる・スケベらないで最終的にルートが絞られるからのう』
『ユキ事故回避イベント次第でユキとそれ以外、マイバトルイベントでマイとそれ以外、生徒会に入るか入らないで生徒会メンバーとそれ以外、肝試しの相手でほぼ確定、オルリスとのラッキーなスケベイベントみたいな感じで相手が絞られるんだよね』
桐の言うラッキースケベるって単語際どいなぁ! られだったらアウトだよ!
アイシアがさらっと分岐条件言ってるし……ユキとマイは二択でルート確定するんだ!?
「ここでユウ兄がパンの袋を踏んで滑ることで確定する!」
『スケベスリップだね』
私が実況さながらにユウ兄とクランナがすれ違うシーンを凝視しアイシアが合いの手を、さてどうなる!
「回避だあああ!」
『ノースケベるでフィニッシュだね!』
『これまで通り福島さん以外イベントが回避・すり替えられている感じかぁ』
私はつい声を荒げ、アイシアが感想をとナタリーが解説を付け加える。
ユウ兄はパンの袋を踏むことなく通過! クランナも何事もなくすれ違って双方リアクション無し!
「からの実は歩幅を狭めてゆっくり歩いていたユウ兄が引き返してちゃんと袋ゴミを拾う!」
『もちろんオルリスは通過済み・この場にいないのでノーパンチラだ!』
通過してすぐに引き返してゴミを拾う格好だと危うくローアングラーと思われかねない、それも踏まえてユウ兄は歩みを遅くしてから生徒会役員的模範たるゴミ拾いをしたということ!
……というかクランナってそういえばオルリス=クランナだったね、そしてアイシア=ゼクシズはその幼馴染で一緒に転入してくる設定だったっけ。
『もちろんこの時私も転入してきたみたいだけど、ここにいる私とは連絡系統が寸断されている上にあっちも比較的普通の女子だから頼りにはならないかな』
私の心を読んだかのように現状のアイシアもとい、この世界におけるアイシアが画面上にワイプを表示してアイシアが藍浜高校にいることについて補足する。
普通のアイシアってどんなだろう、少なくともクランナルートのアイシアは普通ではなかったと思うんだけど。
五月十日
「オルリス=クランナです、よろしくお願いします」
そして生徒会の時間がやってくると新生徒会役員としてクランナが紹介され、ユウ兄との出会いも一生徒会役員・今後の同僚としての普通の巡り合いになった。
ここまで見ても福島以外のイベントは徹底排除か改変されてるわけで、福島ルートは確定したと見ていいはずだけど色々捻じ曲げたことで今後に影響が出ないか不安だなぁ。