表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十八章 君には友達がいない(らしい)。
637/638

第621.23話 √6-22 『ユウジ視点』『五月十一日・五月十三日』


 ここにきて生徒会に新しい生徒会役員が増えた。


 そもそもが数日前に転入してきた留学生女子二人の一人がその人で、「オルリス=クランナです! よろしくお願いしますわ!」「アイシア=ジェイシー。よろしくね」とのことだが、実は二人ともかなりやんごとなき身の上らしく国家間交流の一環でこの町この学校に来たのだという噂。

 ……なぜこんな田舎の町の学校に、そしてやんごとなき身の上の割には異国に二人きり (にしか見えない) 目立った護衛もいないのは何故なんだろう?

 そもそものやんごとなきソースが噂程度でしかなく、本人らも喧伝している様子もないので眉唾な話で、案外ちょっとロイヤルな空気の漂う留学生二人なだけなのかもしれない。


 クラスも違うのであまり関わることもないかと思えば、オルリス=クランナは生徒会役員希望とのことで会長・書記権限ですんなり生徒会入りが決まり顔を合わせることとなった。

 金髪に碧眼で肌も白磁のように白いばかりに全体的に色素が薄い印象受けるが、目鼻立ちはクッキリとして彫りが深く、背丈も高く女性的な凹凸もハッキリとしているのでさながら外国人モデルのようだ。

 そして日本語はペラペラで訛りも発音も違和感は皆無で人当たりもいい、少し気になるのも「~ですわ」という少々高飛車お嬢様風味が入っていたぐらいかもしれない。

 この国に合わせた様式の生活をして母国語は話さないで生活することにしている、と自己紹介でも話していらしいので徹底的にこの”郷に行って~”らしい。


 そんな彼女オルリス=クランナは生徒会庶務、俺は一応の役職付きだが会計補佐で実質の庶務みたいなものなので立ち位置は大差ない気がする。

 今後はたまに補佐的な活動で一緒に動くことや生徒会活動で顔を合わせることもあるのだろうが、福島ほど積極的に距離を詰めるつもりはないし彼女もフレンドリーそうではあるが誰かと密接に関わる感じでもなさそうなのであくまで同僚として仲良くしていけたらいいと思っている。


 学校的にはビッグニュース、生徒会的にも一大イベントだったが俺は特に変わらない。

 いつも通り福島の補佐メインの生徒会業務や生徒会全体の活動、福島とのメールや電話での友人的やり取りや昼休みの空き教室で一緒に昼食を摂ったり。

 変わらない日々が過ぎていった。


 

五月十一日



 藍浜生徒会において生徒会役員全員の活動はというと、参加月曜・火曜・水曜日の風紀委員との合同の早朝挨拶活動と、週一回の定例会議が主だという。

 毎日放課後に残っては会議している印象だったので意外といえば意外、ただ各役職の業務の為に各々が残って活動するので結局生徒会メンバーほぼ全員が定例会議日以外でも生徒会室に集まっていることが多いらしい。

 ちなみに生徒会室を訪れると朝のホームルーム前でも授業の合間でも昼休みでも放課後でも必ずアス生徒会長とチサ書記がいる、というか俺はアス生徒会長とチサ書記を生徒会室以外でほぼ見たことがないし……本当に二人は存在するんです?

 考えてみれば入学式の生徒会長の挨拶的なものの声の主はアス会長のものだった……が、その姿形は壇上に隠れて見えなかった、これはもしや……? 

 うん、深く考えるのはよそう。(※伏線ではありません)


 話を戻して生徒会業務の為の定例会議以外の放課後居残りで生徒会メンバー”ほぼ”全員というのがポイント、そこに福島の姿は稀だという。

 福島がどこで居残っているかといえば──

 

「まー、部活のヘルプの合間に会計作業とかだからここを拠点にしてやるのが手っ取り早いんだよな」


 昼食時、相変わらず福島は昼食を摂りながらの現在進行形で会計作業中・計算や予算配分を行いながらも俺の素朴な「生徒会室にあんまりいないよな」という疑問に答えてくれた。

 目線こそパソコンと紙に向いているので俺を見ていないものの、作業中でも鬱陶しがることもめんどくさがりもせず俺とはいつものように会話のキャッチボールをしている。

 つまるところ福島は個人の会計作業などはわざわざ生徒会室には行かずこの空き教室で行っているのだという。


「それにしても生徒会役員会計とはいえ一年生なのによく空き教室を確保出来たもんだ」


 積み上げられた机ばかりの空間を見渡しながら俺はそんな疑問を口にする。

 そもそもこの高校の部活棟というのは藍浜高校の旧校舎を利用したもので、部活棟といっても古びた教室を一つまるまる使うか仕切りなどで複数の部活動が兼用して部室としているだけのものだった。

 もちろん部活動・部室によってはリノベーションレベルで手の加えられた部室もあるが、この福島が確保している空き教室は古めな作りの教室そのままの内装で机が積み上げられただけの一見使っていない普通の空き教室である。


 福島が喋る間に片手でのコンビニで買ったと思われるサンドイッチ昼食も終え、持参しているというウェットティッシュで手を拭いてから手近な積まれた机の収納部分から生徒会の会計資料と思しきものを取り出していた。

 無造作に置かれているように見える二段積みの机の多くは二段目がひっくり返されていて、教科書やノートをしまう部分が隣接する形となり福島は二段の収納スペースとして使っているようだった。


「この空き教室はな──中学生徒会から溜めた生徒会ポイントが火を噴いたぜ」

「生徒会ポイント……?」


 確かに福島は藍浜中学生徒会から会計をしていた故に一年生から会計を任されていることは聞いていた。

 ただ! 急に出てきた新要素、生徒会ポイントとは……?


「あーと。生徒会活動を評価されたり生徒会対抗戦で勝利するとポイントが溜まる仕組みでさ、中学生徒会時代に溜めた引継ぎポイントを使って個人活動用に旧校舎に空き教室を確保したってわけだ」


 活動の評価は分かるにしても対抗戦ってなんぞ……? 


「生徒会力をぶつけあって戦うのが対抗戦だ」


 聞いてもよくわからなかった。

 福島曰く「去年で中学・高校ともに対抗戦廃止になったんだよなー。デスクワークポイント・アクティブポイントじゃ全国上位だったから残念だ」とのことで今年生徒会に入った俺には関わりのないことなのだろう……そしてそれ以上の詳細もよくわからなかったのでこの設定は深く気にするのはよそう。

 ちなみに生徒会ポイントシステムは去年で廃止、溜まっているポイントは在学中は使えるが溜まることはなく今後はクーポン制となったらしい……ややこしい設定を増やさないでほしい!


「部活棟の教室数は余裕あるしここは立地もあって誰も使ってなかったのもあるな、教室札は無表示だけど一応生徒会予備資料室として学校側に申請してるから学校側も把握してるぞ」


 とのことで、ちゃんと理屈は通しているらしい。

 これで名ばかりに私物だらけの自由空間と化していたら学校サイドからもとやかく言われそうだが、空き教室にしか見えないこの教室を資料室兼作業空間として使ってるなら文句も言われないのだろう。


「生徒会予備資料室の鍵・教室管理を生徒会会計のコナツがしてるって(テイ)だから自由に使えるってわけなんだな」

「そそ、ちなみにチサ先輩は特別実験室の名目で学校地下に秘密空間を複数持ってるらしいぞ」


 そもそも学校の地下ってあったんだ。

 そして資料室ですらなく実験室はいったいなにを実験してるんですチサさん……?


「話は戻すと。だからこの教室は私が正規の手段で借りていて、鍵は私しか持ってないし入室出来るのは私とユウジだけってことだ」

「うん」

「そしてこの教室は部活棟での辺鄙なところにあって、周囲を人が通りかかることもない」

「うん……?」


 何が言いたいのだろう。


「実は古びた教室そのままに見せかけて完全防音仕様に改装してある」

「うん……え?」


 どう見ても壁紙も窓ガラスも旧校舎由来の古びたものでしかない、が……それもカモフラージュだと!?


「そう、ここで私とユウジが何があっても誰も気づかないわけだ」

「……」


 え、なに? これ、完全犯罪が可能かの証明を福島はずっとしている……?


「ユウジ、そう──」


 その時俺の脳内によぎったのは”死”だとか”バッドエンド”だとか”選択ミス”だとか……。

 いや、その……俺このやり直しじゃミスってないよな!? どっかでやらかした……心当たりが無さすぎるんだが!?

 くっ……丸腰の俺・流れを覆す論破力のない俺にはどうすることも出来ない。

 次の周回ではうまいことやるぞ……ナムサン! 

 諦めの境地で俺は福島のアクションを待っていた──



「歌ってもバレないわけだ!」



 …………うん?


「歌う?」

「そうそう、昼食摂りながら復習・予習しながら会計作業しながら着替えながら音楽授業の練習も出来るってわけだ!」

「そう……か」


 …………この子タイパ重視すぎる!

 いや紛らわしい前フリだったけど平和なオチで良かったよ! 防音と聞いてまずバッドエンドイメージをした俺が毒されてるだけなのかもしれないが。

 男子高校生なら女子に「ここなら何しても大丈夫だよ」的変換をしてドキドキ台詞っぽいことを言われたとちょっとエッチな想像もすべきだったのか!?


 ……うーん、そんなことしたらバッドエンド確定しそうだし無理ですね。


「一人じゃ確認しづらい練習とかなら付き合うから言ってくれ」

「おう、ありがとなユウジ! 練習とかじゃないけど早速付き合ってほしいことがあってな……」


 そうして福島から提案されたのは──


 

五月十三日



 今日は生徒会の早朝挨拶もなければ定例会議もない日。

 いつもの福島ならばこのタイミングで部活動のヘルプを入れてもおかしくないものの、今日は例外的に放課後例の空き教室に俺と二人机越しに向き合っていた。


「なんか友達って感じでワクワクするな!」

「まぁな」


 クラスじゃそもそも福島と俺は巡り合わない、各々の机自体も遠いゆえに存在しない机を突き合わすイベント。

 そんな俺の机・福島の机の上には教科書やノートに筆記用具一式が置かれている。


「テスト前の勉強会! やってみたかったんだ!」


 数日前福島から提案されたのは”二人きりでの中間テストに備える為の勉強会”だった。

 福島自体があまり多くのクラスメイトなどと行動を共にしないようで、誰かが勉強会などを企画してもそこに入っていく勇気がなかったらしい。

 だいたい断る際は「ごめんね、〇〇部の助っ人があるから」「生徒会活動があるから」「その誘ってくれた気持ちが嬉しいよ」などとやんわり断っていたという。

 積み重ねれば”付き合いが悪い”やら”拒否されてる?”的に解釈されるかもしれないが、そこはまぁ男女問わず人気がある上に好感度も高い福島だしなんとかやってるorしてるのだろう。

 その為に本来予定にはなかったが打診はされていた部活ヘルプに行ったり、いつもは昼休みに行う生徒会業務を放課後にやったりとアリバイ作りも余念がなかったという。

 

「いや、だって……みんなと勉強会とかキンチョーするじゃん! 変なこと口走っちゃうかもじゃん!」


 らしかった。

 うーむ交友関係では奥手も奥手というか、そういう交流の類むしろ避けているレベルだったとは。 


「俺相手ならキンチョーしないし変なこと口走ってもいいのか」

「そりゃ……友達だからな!」


 友達を免罪府にしすぎている気がするが、まぁ福島からすると気兼ねない相手というのがいいのかもしれない。

 ただこれはあくまで対外的に説明するこちら側の事情でしかないのであって、男女二人きりでの勉強会というとそれは色恋沙汰が大好きな方々に邪推してくれと言わんばかりである。

 なので俺と福島だけで勉強会をしていることがバレるわけにはいかない、そこでこの福島専用空き教室だ。

 

 福島曰くこの教室は防音仕様で話し声やらが漏れる心配もない。

 扉に関しても外見は教室扉そのままに福島の持つ外鍵と内側からしか開かない、内側から開けて外に出ると自動的に閉まっていき施錠されるオートロック仕上げらしい。

 テスト前期間ゆえに部活動の活動時間縮小も学校全体で言い渡されているのでこの部活棟も脱法部活動 (基本的にテスト期間中の部活動は申請が通らない限り教師や風紀委員にバレると普通に指導が入る) をしているごく一部を除き周辺に人気(ひとけ)もないのだ。

 絶好の密会スポットであるが、あくまで俺と福島は友人関係である為公序良俗に反しない&いたって健全なことしかしていないので後ろ暗いところもない。


「生徒会業務と自習で残ることも学校側に申請してあるしな!」


 加えて俺が生徒会役員ということで同じような内容で申請してあるそうで……なかなかぬかりがない。


「勉強会するぞー!」

「お、おー」


 片腕をあげポーズにハイテンション気味な福島に釣られるように俺もやんわりと似たポーズをして、そうして二人きりの勉強会が始まるのだった。





「…………」

「…………」

「「…………」」


 本当に勉強会だった。

 勉強会にありがちな──


 『ちょっと疲れたから休もーぜー』『ちょっとお菓子摘ままない?』や『休憩にゲームやろうぜ』『ゲームしたかっただけでしょ』『バレたかー(棒)』


 的なことにはならなかった。

 始まる前はうきうき気味だった福島と裏腹に、勉強会の趣旨を外しながらもな友情的な青春の一ページ……的なイベントは起こらなかったのだ。

 俺と福島黙々と一学期中間テストの為の復習や参考書の問題は解いている、まじめ~である。

 

「…………」

「…………」

「「…………」」


 俺も一応真面目に授業の内容はノートに取ってるし『生徒会に入るし成績悪いわけにもいかないかー』と普段の予習・復習もちょくちょくやっているので分からない点もほとんどない。

 その分からない点もじっくりノートを読み返したり参考書のヒントで解決するので福島に聞くこともなく。

 そして福島も俺に聞くようなこともなく過去問を解いたり参考書を読み込んだりしていて……勉強会にありがちな『ここわからないんだけどさー』『どれどれ』的に喋ったり接近したりするイベントもない。


 ただただテスト勉強が捗った……事前に申請した教室使用時間の五分前までひたすら無言の空間が続き──


「よし! 帰る準備するか!」


 という福島の一声で終了、そうして二人片付けを終え──


「勉強会捗ったな! じゃあまたなユウジ!」

「お、おう」


 オートロックなので扉が勝手に閉まり、引手の部分を試しに揺すってみても施錠された状態になる。

 福島は足早……とかではなく大きな音を立てず・ギリギリ走っていない速度でいつの間にかいなくなっていた。


 そうしてドキドキ勉強会イベントはド健全に終わったのである……いや捗ったけども!



== ==



 後日、テスト上位者ランキングトップテン的な紙が学園フロアの廊下に貼り出されたわけだが──


「すご」


 俺のテスト点数も悪くはない、学年二十位以内ならこんなもんだろう。

 一方の福島はほぼ満点に近い総合点で”二位”だった。

 

 うん……なんとなく分かってたけど、福島は友達との勉強会的なイベントやってみたかっただけらしい。

 成績的にはお互いたぶん必要はなかったな……まぁ俺は捗って中学比で順位も上がったからいいのか? うーむ。

 

〇 空き教室にて

ユウジ「コナツはノートPC使ってるけどオフライン作業なのか?」

コナツ「基本オフライン作業だけど、生徒会メンバーや教室に連絡する時は専用の回線があるしWi-Fiも飛んでるぞ」

ユウジ「ここWi-Fi使えるんだ」

コナツ「さすがに暗号化キー入れないと使えないけど、チサさんが許可した人・キー教えた人は使えるな」

 なんとなくチサさん主導でやってそうなことだと思ったらやっぱりチサさんだった。

コナツ「たまにチサさんが別にネットワーク無料開放してそれに気づいた生徒で使ってる人もいるけどそれは……」

ユウジ「それは……?」

コナツ「チサさんの情報収集、というか覗きm<規制>」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ