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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十八章 君には友達がいない(らしい)。
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第621.20話 √6-19 『ユウジ視点』『四月二十八日』



 四月二十八日



 いつもは六時半に起床しているところだが、これからは早めに起きることとなる。

 それも俺が生徒会に入って、いつも姉貴らがやっていたような校門前での挨拶運動に参加する為だった。


『一応挨拶運動って任意参加だけどユウくんは大丈夫……?』


 姉貴もとい生徒会副会長からはそんな提案もあった。

 確かに今までの生活ルーティンが崩れるのは好ましくないと思う反面、これを姉貴は中学校生徒会に入ってから続け家事もこなしてきたのだから俺にやれない道理もないだろうと思ったのだ。

 それを覚悟して・理解して生徒会入りしたのだから、挨拶運動だけサボタージュなんて筋の通らないことはしたくない……とりあえず最初は、まぁやってみないとなんとも言えないよな……どんどん決意鈍ってるがね!


AM 五:〇〇


 目覚ましの時間は一時間半早めに、アラームを以て起床した。

 少しだけカーテンを開けて確認した窓の外はまだ陽が昇る前で、夜明け前の青薄暗い具合なものの雲に覆われた感じもなく今日は晴れるかもしれない。





 我が家の起床時間はまちまちだったが、今日からは登校時間が同じの俺と姉貴がだいたい揃うことになるかもしれない。

 いつも通りならば小学生で登校時間も遅めなものの六時半起床で俺を起こしに来ることもある桐と、七時過ぎにはユイも起きてくると思う。

 自室を出て階段を降りてとりあえず顔でも洗うかと洗面所を目指していると――


「あ、おはよーユウくん」

「おはよう姉貴」 


 朝のシャワーを浴びたのか、肌がほんのりと赤みを帯びてしっとりとしてパジャマ姿の頭にタオルを巻いた姉貴と遭遇する。

 家の中だからと少し無防備気味で、裾のがほんの少しまくれ上がってくびれが主張する腰回りが見えている上パジャマ前ボタンの上部を留めておらず僅かにそこそこ質量のある胸の谷間が覗いていた。

 姉貴もといミナ副会長は男女からファンも多い、こんな場面彼ら・彼女らからすれば垂涎・卒倒モノの光景かもしれないが弟からすると”少し気まずい”という感情の方が大きく自然と視線を逸らしてしまう。

 ……というか姉貴のシャワー明け鑑賞をしている場合じゃない、このタイミングでシャワー終わりということは五時よりも前に起きていたわけで。

 いったい何時起きなんだこの姉は……。


「朝早くにお疲れさま~」

「初日だからってわけじゃないけどちゃんと起きないと。いつもこの時間に起きてる姉貴こそお疲れ様」

「う、嬉しい~っ! ユウくんにそう言われると五億倍嬉しいなぁ~!」

「ちょっ」


 笑顔で俺にで抱き着いてきて背中に手を回す姉貴。

 そ、その無防備仕様で弟を抱きしめるんじゃあない! やわらかさとか感じちゃって……仮にも男子高校生ですよ! 


「いやいや俺寝起きだから! その……俺の匂い的な意味で抱き着かない方がいいから」

「そう?」


 すんすんと鼻をならして確認しようとする姉貴、やめてくだされ。

 それに姉貴のシャンプーの香りがダイレクトに来て、色々……色々悪いぞ!!


「我が家の柔軟剤の香りとほんのり汗っぽい感じ……いいかも」

「や、やめい!」


 じっくり俺の匂い……臭い評論をされてしまう。

 今は誰か覚えてない……たぶん異性に『ひ、人の匂いを嗅ぐのはやめなさい』と言われたのを覚えている。

 なるほど嗅がれる方はたまったものじゃないな、兄妹だろうが恥ずか死ぬわ。


「ともかく! 俺も顔洗ってくるから!」

「あ、あぁ~もうちょっとユウくん成分~」


 名残惜しそうに言う姉貴を置いて洗面所に向かった――よかった起床時の生理現象が今日はなくて。

 さすがに()()()()()反応したら姉貴もドン引くだろうから……ちゃんと引くよな?

 



 

 今日は姉貴お手製弁当は無し、学食orコンビニ飯かは各々が決めるとして実質この家の財布係もとい会計も務める姉貴が昼食代を支給する形だ。

 月単位でだいたいその日分の昼食代をまとめて渡す、どう使うかは自分次第だが欲しい娯楽などの為に昼食代に手を付けて使い切ってしまうと月末飯抜きになる。

 しかしそれがどういうわけか姉貴にはバレる、ちょっとのお説教ののち追加支給されるが「何度も続くようならお姉ちゃん考えがあるから!」と言われたことがあった……そういうところは覚えてるんだなぁ。

 姉貴は基本温和だし、弟の俺から見てもブラコン気味ではあるが怒らせてはいけないタイプで、いざとなると何をするかわからない。

 中学生の頃一度経験したのは「月末までお姉ちゃんと一緒に寝てもらうから!」と誤解を生みかねない要求が、単純に姉貴の部屋に連れ込まれて来月の昼食代支給まで一緒に寝かされるだけである……それはそれでだが。

 いやぁ思春期で姉と一夜を共にして姉貴の部屋の同じベッド同じ布団一緒に寝るってのは色々厳しいっす。

 全然落ち着かないし、プライベートも何もないカラネ……うん、もうこの話はもうやめておこう。


 顔を洗って朝食を食べて制服に着替えて一応鏡で身だしなみチェックなどの朝支度を終える頃には六時まであとお十分ほど、もちろんこの時間だとユイはおろか桐でさえ起きてこない。

 この間に姉貴は深夜に回していた洗濯物に乾燥機をかけてさっと畳んでリビングの個別の名前の書かれた洗濯済みカゴに置いておく、「本当は外干ししたいけどいない間に雨とか降った時に取り込めないから~」と我が家では乾燥機頼り、休日のみ外干しするのが基本だった。

 ちなみに今日から生徒会で姉貴と朝早く家を出ることをユイと桐には昨日の夕飯時に伝えている「起こせないんだ……」とががーん!からしょんぼりしている桐がちょっと可愛かった「それ以外の日は頼むかもな」と言うと少し嬉しそうにしていた。

 そうして姉貴と朝六時前には家を出る、挨拶運動自体は六時半からやっているから登校にかかる時間ともろもろを考えるとこれでも結構ギリギリだ。

 外靴を履いて玄関にある姿見前で姉貴が俺の前に立つと、俺の首元に手を伸ばした――

 

「学ランもワイシャツも上のボタンは付けなきゃね……よし!」

「おおう」

 

 いつものクセで開けたままだった一番上のワイシャツ・学ランのボタンを順を追って締めていく、入学式だったり卒業式だったりを思い出す少しだけ窮屈な感覚。

 挨拶活動は風紀委員の身だしなみチェックとの合同なので、さすがに生徒会役員らも制服を着崩すことは出来ない。

 もっとも風紀チェックも厳格というほどでなく、ギャル!ギャル! ファッションやヤンキー風味な装いをしていなければボタンが一つぐらい外れているぐらいで注意が及ぶこともない。

 ちなみにパーマのかけすぎ・奇抜すぎる色の髪の染め方・短すぎるスカート丈・改造制服・天然以外のアフロやリーゼントなどは警告のち、次回以降正されなければ生徒指導室送りである。

 この時代コンプライアンス的な意味で教師が生徒の髪を弄ることはできないので親に通報され、たいていはこっぴどく教師と親の両面から絞られることとなるのだ。

 なので学ラン・ワイシャツ上ボタンやネクタイが多少緩んでいても通常の生徒ならお咎め無しだが俺らはそうもいかなず、登校前に俺をじっと見つめた姉貴によって正された。

 

「教室に行ったらちょっと緩めていいからね」

「あ、あぁ」


 というのを生徒会副会長が最初から言うのはどうかと思うが、どちらかというと姉としての甘さが出ているかもしれない。

 ……それでもお言葉に甘えさせてもらおう。


「いってきまーす」

「いってきます」


 まだ起床時間ではなく、誰が聞いているわけでもないと思うが俺と姉貴はそう居間方向へと挨拶してから姉貴が玄関の戸締りして家を出た――




 少し日が昇ってきて明るくなってきた、雲一つない薄い色合いの青空で空気も澄んでいる気がして気持ちがいい。

 そして隣を歩く姉貴もニコニコしつつもどこか足取りは弾んでいて上機嫌だった。

 

「ユウくんと登校デート出来るなんて夢みたいだな~」

「デートじゃないから」

「照れちゃって~、私も照れてるけど! ……手を繋ぐか、腕を組むかどっちがいい?」

「しないしない」


 どちらかというと風紀を取り締まる方なのに風紀が乱れかねない発言である。

 

「えー」

「こんなの他の生徒に見られたらどうするんだよ」

「……? どうもしないけど」


 何の疑問もなさそうな純真無垢な表情! ブラコン方面においては客観性が皆無に!


「俺が他の女子と手繋いでたり腕組んでたらダメだろ」

「ダメッ!  まず身辺チェックした上で親御さんにも挨拶に行ってからじゃないと許しません!!」

「息子溺愛気味の母さんかっ!」


 警戒心が強すぎるというより愛が重すぎる! 


「ユウくんのママ……それはそれでアリかも!」

「なしなしなしなし!」


 姉相手に弟がオギャるプレイとか知られたら社会的に死にますわよ。


「ということで学校まで手を繋ぎたいと思います」

「ということでの意味が分からないし手は繋ぎません」

「えー、えー! ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」


 という姉貴との会話も実質わかってやっている節があって、これも姉貴なりの弟への会話手段なのだろう。

 だから本気……ではないよな? じゃなくてもあわよくばとか考えてたりしないよな……?





 一週間に三日、月曜・水曜・金曜に実施している挨拶運動・風紀チェックだが生徒会役員の挨拶運動参加は任意であって強制ではないとのこと。

 会長もチサさんも毎回参加ではないようで病欠以外でのほぼ皆勤は姉貴と福島らしい、隠居済みの先代生徒会メンバーも表に立つことはない。


 そもそも挨拶運動をする意味合いとしては色々理屈はあるかもしれないが、端的に言えば”挨拶出来る人は気持ちがいいよね”ということでそれを広める運動と考えて良さそうだ。

 そんな挨拶は登校してくる生徒や教師はもちろん、朝学校前を通過する地元住人に対しても行っており地域活動の一つでもあるようだ。

 そして風紀委員の身だしなみチェックと生徒会役員の挨拶運動を連動させることで、相互に風紀の引き締めと挨拶の増加を促すとのこと。


 ちなみに生徒会役員は原則身だしなみには口を出さない、あくまで風紀委員の領分ということになっている。

 それでも風紀委員が隣にいて、生徒会役員自体が生徒の規範となるということで俺たち自身も身だしなみキッチリに行うのだった。


 登校して教室にカバンを……としたいところだが、登校時間六時すぎの時点で教室の鍵は施錠されたままなので生徒会役員は基本的に生徒会室にカバンを仮置きするらしい。


「おはようユウジ! おはようです下之先輩!」

 

 生徒会室にやってくると既に福島が登校してきていた、俺への挨拶のほか姉貴へも挨拶をする。

 もしこの時間以前に登校するのが福島のデフォルトならば、そりゃ登校時間が全く被らないはずだわ。 

 一緒に来た姉貴は挨拶運動用のスローガンが描かれたのぼりを準備するべく生徒会準備室に向かっていった。

 

「おはよう、コナツ。朝早いんだな」

「まあな! 朝練参加の日とかはもっと早かったりするぞ」

「助っ人って朝練もあるのか、大変だな」

「即興で合わせられればいいけど、やっぱ連携は大事だし練習もしときたいしな」

「ストイックだな~」

「その方が私がやりやすいってだけだな、ユウジは真似すんなよな!」


 そもそも部活に入っていない以上朝練も無縁なので真似する必要がないですなぁ……。

 しかしもし仮に福島が挨拶運動・部活助っ人の朝練・朝から会計仕事などで一律か不規則ながらも毎日早めに登校しているのならば、一緒に登校するのは難易度が高いかもしれないな。 


AM  六:三〇


「おはようございます。風紀委員のみなさんも今日はよろしくお願いします」


 副会長モードの姉貴が風紀委員らに挨拶する、面と向かって頭を下げられた風紀委員の面々は嬉しそうだったり照れてたり憧れっぽい表情を浮かべていたりと悪いリアクションがないあたり姉貴の人気っぷり人望のアリっぷりが伺える。

 そうして校門前に今日の挨拶運動生徒会役員フルメンバーのアス会長・チサさん・姉貴・福島・俺と各学年男女一人ずつの六人こと計十一人が揃う。

 風紀委員は全学年各クラス男女一人ずつが選ばれ全員が月に一回ほどの風紀チェックに参加、男女三人ずつが目を光らせて同性向けにチェックを入れる仕組みだ。

 ちなみに今日は俺の属する一年二組の風紀委員が出る日ではないようで、面識のない三年生男女が風紀委員担当だった。


「「「おはようございます」」」


 他の生徒会役員四人に倣う形で俺も声を出す。

 基本的にずっと挨拶を連打しているわけではなく、登校・校門前を人が通過した時に挨拶するとのこと。 

 『センターは譲れないんだよ!』という謎の主張によりアス会長がセンター、福島・チサさん・アス会長・姉貴・俺という並びになった。

 俺の隣を勝ち取ったらしい姉貴が副会長モードでありつつもニコニコとしている一方で福島は少しだけ面白くなさそうだった……だ、大丈夫だよな?


「おはようございまーす」


 しかし隣に目を向けるとずっと背筋はピンとしていて、柔和な笑みで人が来る度に身体を向けて頭を下げて挨拶をしている姉貴の姿は堂に入っている。

 基本的に副会長モードなのだが――


「あぁユウくんの挨拶無限に聞けて幸せ……録音したい」

「……録音はやめてくれ」


 たまにブラコンが漏れ出るが、それは特に登校してくる生徒がいないタイミングなので俺以外に聞かれることもない、プロである。

 さすがに二時間近くの長丁場で全員棒立ちでは手持無沙汰なので、たまに風紀委員や生徒会役員同志で基本的には持ち場を離れないものの話すことはあるようだ。

 そういえばたまにツーツーツーとか聞こえてくるものの、チサさんたぶんそれモールス信号でしょうけど俺にはわかりません。

 アス会長は瞼がおりそうなのを耐えている、くっ……ちょっと幼い感じが可愛いぞ。

 福島の声はかなり通るので挨拶も人一倍はっきり感じる、挨拶された朝練に来た女子勢から挨拶を返したのち黄色い声が上がっている……すげえ人気だぜ!

 しかしこう観察しているだけでそこそこ時間が経つとはいえ、朝早くに起きて校門前に立ったままというのは慣れていない自分としては少し足が疲れてくる、なるほど挨拶運動が任意参加なのも頷けてしまう。


「ユウくん大丈夫? 疲れた? 膝枕する?」

「大丈夫大丈夫」


 そして校門前で副会長(人気が高い)が男(弟)に膝枕する方が大丈夫じゃない。


「大変そうだったら今度から途中参加でもいいからね」

「でも姉貴は最初からいるんだろ?」


 福島もそうかもしれないが、姉貴はほぼ皆勤でいつもの家を出る時間を考えればフルで参加していることになる。

 下之家の家事もある程度出来ることは済ませてから家を出ているのを考えると……やっぱすごいよな姉貴。


「そうだけど……」

「しばらくやってみて考えるよ」

「そう……うん、付き合ってくれてありがとね」

「おう」

 

 まぁ姉貴と居れる時間というのも悪くないし……これを言うとシスコンっぽいので口には出さないが。




 

 朝練タイムを過ぎ通常登校タイムの八時前後になると生徒数も増えてくる。

 すると見知った顔が登校してきた。


「おはようございまーす」

「え、ユ……下之君!?」


 俺を指す名前もとい苗字を呼んだのは俺と同じ一年二組のクラスメイトの女子こと篠文さんだった。

 栗色のポニーテールが印象的な子で、明るさや可愛さからクラスの男子人気は高い(いつか耳にしたユイ情報)。

 特に俺とは接点がなかったはずだが……なぜか福島との”婚姻届け騒動”時にほぼ必ず居合わせていたのは気になっていた。


「あ、おはよう篠文さん」


 俺が篠文さんと呼ぶとどういうわけか一瞬の動揺の表情を見せたが、やっぱり見当はつかない。


「……っ! おはよう、下之君。生徒会に入ったんだ」

「そうそう、これから週三日ぐらいはここで挨拶してると思うからよろしくな」


 なにを”よろしくか”はわからないが、まぁこうして声をかけてくれたわけだし……下心とかはないよ! 

 

「そ、そうなんだ……へぇ……」


 引かれたかもしれない、台詞ミスったかぁ……かと思えば――

 

「わかった、楽しみにしてるね」

「お、おう?」


 楽しみにしているとは……? 

 俺はそんなエンターティナーでもクラスの人気者ポジションでも篠文さんにフラグが立っているわけでもなかったはずだが。

 うん、社交辞令的な何かだろう、たぶん。


「おはようございまーす」

「おはようございますユウジ様」

「え!?」


 それから少しして挨拶してきて俺のことを下の名前で様付けしてきたのは、またもや同じクラスの女子こと姫城さんだった。

 前髪ぱっつん気味の黒髪ストレートで、あまり表情に出ないタイプのミステリアスながらもかなりの美人でこれまたクラスの男子人気は高いが、滅多に誰かと話している場面を見たことがない。

 もちろん俺との接点もない。


「お、おはよう……姫城様?」

「ぐぅっ……ユウジ様からの様呼び、それに学ランボタンフル装備がレア過ぎて素晴らしい……」


 表情少ない系女子のはずなのに、ちょっと恍惚とした表情を浮かべているのはなんなんだぜこの子……?


「ひ、姫城さん?」

「なんでもありません。今日は様付けとさん付けの二通りを堪能出来たので満足です、ごちそうさまでした」

「おそまつさまでした……?」


 そう言うと満足気に昇降口方面に歩いていった……彼女はよくわからないなぁ。





「おはようございまーす」

「おはようございます下之君」

「委員長か、おはよう」


 俺が委員長と呼ぶのは一年二組の学級委員長女子こと嵩鳥さんで、通称”委員長”。

 というのも彼女はずっと学級委員長をやっていて、確か四年連続で同じクラスだったはず。

 それでもみんなやっている委員長呼びが定着しているだけで、やっぱり俺とはそこまでの接点はない。


「推しの挨拶が合法的に聞ける……うれしい」

「い、委員長?」

「なんでもないです。もう少しだからがんばってね」

「おう、ありがとう」

「推しからお礼を言ってもらえる……しあわせ」


 委員長は最近キャラ変したのだろうか……言っていることが姫城さん並によくわからなかった。




 そうこうして挨拶運動終了直前にユイが登校してきて「お疲れい」と言うと昇降口へ向かっていった。

 あとは登校時間終わりまでの十五分は教師にバトンタッチして挨拶運動を終える。


「お疲れ様ユウくん」

「おつかれユウジ」

「姉貴もコナツもお疲れ」


 生徒会室で一応の生徒会活動解散をしてからカバンを取る。


「今日も放課後生徒会活動があるからよろしくね」

「了解」


 放課後毎日生徒会活動があるわけではなく、今日の場合は事前に知らされていて今のは念押しした形だ。

 そうして少し名残惜しそうに「じゃあ生徒会室締めていくからまたね」と俺に手を振りながら姉貴は生徒会室を施錠すべく最後に残った。


「わりぃ! ちょっと用事が!」

「おう」


 福島は福島で例の空き教室に向かうのだろう、数分もないはずだがその間に出来ることをしてホームルームのチャイムギリギリに教室に滑り込むのだと思う。

 結局俺一人でいつもより遅めに教室に就き、初日だけに足の疲れと気疲れを感じながらホームルーム開始を待っていた。

〇 とある部屋にて

桐「……なんかユウジはミナとの方がフラグ立っておらぬか?」

ユミジ『現実に近しい設定の世界なので、普通に過ごすとこうなるのでしょう』

ナタリー『この姉弟仲良すぎるな!』

ミユ「……いいなー」

ミユがどちらの方を羨んだのかは彼女のみぞ知る。


ホニ「せんたくもの……外干ししたい……ユウジさんに料理作りたい……」

ナタリー『ホニさんに家事禁断症状が!』

アイシアは「ミナさんへの負担エグすぎるね、そりゃバグるよ」と思ったが口には出さなかった。

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