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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十八章 君には友達がいない(らしい)。
631/638

第621.17話 √6-16 『ナレ視点』『四月六日~四月二十七日』


 

 私こと嵩鳥マナカは見ることで知る。

 私ことナレーションのナレーターは見て語る。



* *



 どうもナレーションのナレーターです。

 きょうはある美少女にスポットを当ててみようと思います――



四月六日



「委員長したいヤツ」

「はい」

「よし、決定」


 藍浜高校入学式の翌日、わた……嵩鳥マナカという生徒はいつも通り(・・・・・)自分から委員長になる。 

 投げやりな一年二組の担任教師による委員長決めの流れもいつも通り、彼女はずっと委員長でした。

 前の物語ではメインヒロインであり無事主人公の下之ユウジとゴールインした嵩鳥マナカという美少女は……え? 私情入りすぎ? そうですか……。


 マナカシナリオはあれだけ切ない終わり方したんですから。

 こう、もうちょっと余韻があってもいいはずなんですが……運悪くこの世界はどうやらバグ世界。

 というのも――


「(今年も(・・・)下之君と同じクラスだ)」


 この時の私はこれまでの記憶がないのです。

 これまではなんかんだで創造神特権で未来の自分との記憶リンクなどによって毎世界記憶を維持出来ていましたが、この時の私は未来の世界の自分とのリンクは繋がらず、そして記憶を繰り越すことも出来ていませんでした。

 一応言っておくとナレーションをするナレーターの私と嵩鳥マナカはリアルタイムでのリンクというのは原則できず、ナレーション原稿を読むタイミングも完全に異なり、今読んでるタイミングだって”解決後”のユキシナリオ途中であって……ごほんごほん、それはそれとして。

 基本的にナレーションが登場人物に干渉することも出来ないので、つまるところこの世界の嵩鳥マナカは現状を知らないですし、私が伝えることだって出来ないのです。

  

 記憶の繰り越しもなく、未来とのリンクも繋がらないこの世界の私は限りなく”純粋な私”ということになりますね。

 この世界がギャルゲーであること、前世界では自分がヒロインだったこと――バグによってこの世界の登場人物構成や設定が大きく変わっていることも、まるで知らないのです。

 実は密かに下之ユウジという気になっている人がいて、毎年学校のクラス委員長をやっていて、人の心を見ることで書き記していた頃の私。


 そんな私のことをお話しましょう。



四月十二日



「おはよう下之君」

「ああ、おはよう委員長」


 嵩鳥マナカはたまにこうして下之ユウジと挨拶をする。

 特に親しい関係でもなく、たまたまか偶然か奇跡的にか小学校の頃からずっと委員長をしていて同じクラスメイトになる男子。

 見ることで知ることの出来る彼女は、彼を取り巻く環境の変化を知っていました。


 かつて彼には腐れ縁か交際寸前か紙一重とも言うべき女の子がいて、そして彼と彼女に懐く女の子がもう一人いました。

 下之ユウジの日常にはそんな彼女、幼馴染の上野サクラと実妹である下之ミユがいたのです。

 そんな下之ユウジは好いていた上野サクラへ告白をしますが、その直後に彼女サクラは二人の目の前から姿を消し、そしてミユもいなくなってしまいました。


 その真相を嵩鳥マナカは”見て”知っていたのです。 

 

 幼馴染である上野サクラは身近なユウジのことが本当は好きだったのに、両想いだったのに、告白に答えることなく別れを告げることもなく、家族の夜逃げに巻き込まれる形でこの町を去ったこと。

 実妹である下之ミユもまた、兄であるユウジのことを”ブラコン”以上には好いていて、それと同じぐらいに好きだった幼馴染の上野サクラが突如として消えたことで心に傷を負ったこと。

 そして下之ユウジは一世一代の告白の答えを聞けることもなく幼馴染の上野サクラは姿を消し、それが遠因で不幸な事故が起こって一部の記憶を喪い、そして実妹のミユが不登校になってしまったこと。

 それは嵩鳥マナカが見つめてきたから、”読める”からこそわかることでした。

 人の心を読める特殊な力を持っていることで、物語の登場人物を俯瞰して見ることの出来る、彼女しか知らないことだったのです。


 そんな彼女、嵩鳥マナカは心を読むことの出来る力を持っていました。

 裸眼のまま、自分のその目で人を見るとその人の”情報”が見える――読める。

 見た人の心の中、記憶、過去・未来、その人に関わる友人のこと、見えるはずがないの情報が彼女には見えてしまうのです。

 そして人だけにとどまらず、その物を使っていた人の情報までも見えてしまい、取捨選択は出来る様で出来ず、特定のことを見ないようにすると別のものが見えてしまうのです。 


 本来ならば誰にも話さないこと、私が見るようなものでもないものを意図せず覗き見することが出来てしまう。

 すべてがロマンチックだったり微笑ましいものだけならまだよかった、でも見えることには負の感情などがいくらでも混ざっています。

 それが嫌で仕方なくて、精神的にもきつく身体にも不調をきたすからこそ、邪魔でしかなかったこの力を抑える手段を見つけた時は喜んだ、というよりホッとしたのです。

 それが眼鏡というレンズを介すことで見えなくなる方法でした。



 そんな眼鏡をかけて見えなくなった、見ないようにした私の例外は、彼と彼の周りの人たちのことでした。

 ふとまた眼鏡を外して見たときに知ってしまったこと――


 姫城マイの元となる人物は「ある人に憧れ、自分も変わりたかった」と願っていた。

 巳原ユイは「隠し続ける自分を本当は見てほしかった」と願っていた。

 オルリス=クランナの元となる人物は「好きな人と結ばれたい」と願っていた。

 下之ミナは「姉でいたくない」と願っていた。

 中原アオの元となる人物は「誰かと話がしてみたい」と願っていた。


 それが下之ユウジという一人の男子に対しての感情を含んでいること、関係していたことだったのです。

 加えて彼の幼馴染と妹との一部始終を知っている私は、彼のことが気になり続けていた私は例外的にも、彼と彼の周りを見る時だけ眼鏡を外すタイミングがありました。

 さすがに毎日毎時毎分見ているわけではないですが、何か変化があったかな? ぐらいで眼鏡を外して彼らを”見て・読む”のです。


「えっと、なんかごめん」


 誰も聞こえないような声で謝りつつ眼鏡を外して下之ユウジを見つめます。


「え」


 その時彼女は下之ユウジが福島コナツに一目惚れしたことを知りました。

 なんだかんだで彼のことが気になっていたのでショックだったかと思います、でも客観的に考えるなら下之ユウジが上野サクラへの実質的な失恋を経て次の恋愛に進んだ時期と考えればそこまで早すぎることもありませんでした。

 ただ福島コナツが相手なのは予想外というか――なんだか違和感を覚えました。

 ぶっちゃけると定期的に彼を見ていた彼女からすれば福島コナツへの感情というものはこれまで無いに等しかったのです、それが放課後のグラウンドでサッカーをしている姿を見て一目惚れという状況が不自然に思えてならなかったのです。

 あまりに脈略が無いというか、唐突というか、一目惚れだからそりゃそうかもという気持ちもありましたが……ともかくモヤモヤしていたのです。


 それからユイと相談しつつも下之ユウジは告白することを決めました、それを私も知りました。



四月十六日


 

 下之ユウジは福島コナツに振られたようでした、まぁそうなるなという感想ですが……どこかほっとしている嵩鳥マナカもいました。

 福島コナツのことを知っている自分としては彼女は”恋愛”より先に”友情”を欲していたのです。

 だから翌日の福島コナツの行動も彼女としては合点の行くことでした。

 今度は福島コナツから下之ユウジに対して友達からはじめてほしい! と告白したのです。



四月二十一日



 出来事の流れと予め知っているナレーターの私としては、今日いつも通りならば篠文ユキが事故にあって死んでしまうことで世界がリセットされることを把握していました。

 しかしこの世界の私こと嵩鳥マナカはこれまでの記憶の繰り越しが出来ていないことでそれを知りません、なので世界のリセットによって彼女は知ることとなるのです。

 ちょうどこの時、下之ユウジに婚姻届けを持って迫る福島コナツの構図と、そのあとの事故で二人が死んでしまいます。

 それが世界の”不完全な”リセットでした。



四月二十一日



「え」


 六時半頃、彼女は目を覚まします。

 先ほどまで学校に行く準備をしていたところで、いつも通り母親の見送りに「いってきます」と挨拶をして家を出て学校へ向かっているその時でした。

 突如として通学路にいた彼女が次の瞬間には自分の部屋に戻っていました。


「どういうこと……?」


 加えて服装も寝起き直後のパジャマに戻っていて、まるで化かされたような、むしろさっきまでの夢だったかのような気さえしました。


「なんだ、夢か」

 

 この時の私は非現実的なことをすぐさま受け入れることが出来てほど経験を積んでいません……まぁ”情報が見える”ことは棚に上げるのですが。

 これが非現実的なことで、何か異常が起こっていることで、世界を繰り返していることに気づくのは二度目の彼らの死のあとのリセット後でした。



四月二十一日


 

「夢、じゃないよねこれ」


 同じことが繰り返されると、夢じゃないかと思ったことに疑問を持ちます。

 そこで自分の力を思い出し、人の情報が見える特殊異能のようなものがあるならば、世界を繰り返す異能的なものがあるんじゃないかと半信半疑程度に思い始めました。



四月二十一日



 確信に変わるのはそんな疑念を抱いたところでの三度のリセット、そして学校でいつもの習慣で彼を見た時でした。


「んん?」


 福島コナツが下之ユウジに婚姻届けを迫って二度死んで、何故かもう一度下之ユウジが福島コナツのことを名前でなく苗字で呼んでしまったことで死んでしまったことを知りました。


「(そうはならんやろ)」


 なっとるやろがい!

 ここで嵩鳥マナカは今の世界がどこかおかしいことを察するのです、夢ではなく世界を繰り返していたこと――その繰り返しを下之ユウジも覚えていることもまた。

 そして繰り返しを自覚したからこそ、私と下之ユウジ以外がこの状況を把握しているか気になってしまうのです。


 本当は例外的に下之ユウジことを<読む>習慣があるだけで、あまり多くの人を<読む>ことに関してあまり気が進みませんが、彼女はクラスメイトの数人を見て<読む>ことにしました。

 そこで彼女はある人物を<読む>ことで決定的かつ、衝撃的な事実に気づくのです。


『昨日までのことが、それっぽく作られた記憶なことに気づいてしまった』

『本来の私は篠ノ井雪華という名前をしていた』

『これまで世界は何度も繰り返してきた……たぶんその度にユウジは違う女の子と付き合っていたわけで』


「うっ!?」


 それは同じクラスメイトの篠文ユキを<読んだ>時のことです。

 彼女は他の人間とは明らかに異なる情報量が一気に流れ込んで思わず吐きそうになりました。

 そしてその内容にも吐きそうになります。


「(ど、どういうこと!? これまでの世界の繰り返しが私の知る限りじゃなくて。何十回も繰り返してきたって!?)」


 この世界の彼女が自覚した繰り返し以前、別のシナリオもとい物語の繰り返しの存在に篠文ユキの<すべてを覚えている>ことを介して知ることとなったのです。

 それがつまるところ、この世界におけるリセットが不完全であること。

 本来なら時間が巻き戻ると同時に記憶が巻き戻るように設定されているはずが、この世界においてはそれが機能していません。

 いわゆる創造神サイドだったことや、本人の能力によって干渉を受けてしまうかはわかりませんが――少なくとも今回嵩鳥マナカと篠文ユキと下之ユウジに関しては記憶が巻き戻ることはなかったのです。


 ……これはらしくないナレ―ションの主観にして勝手な推察ですが、これまでの世界に適応されてきた物語毎のリセットのみ適応で世界を繰り返す際は記憶を引き継げる主人公サイド”下之ユウジ”の記憶繰り越し設定が一部登場人物、もとい嵩鳥マナカと篠文ユキの能力に反応してしまったのではないかという説。

 ただ残念ながらこの説を立証出来ることは無く、検証することも不可能です。

 私がナレーションしている(・・・・・・・・・・)この時点(・・・・)で残っているこの世界の情報は音・映像のみであり、ゲームのセーブデータとしては既に存在しないのですから。


「(えっ。私、下之君と付き合ってたことがあったの!? というか篠文さんの中の私色々大胆なことしすぎ!)」


 ここで初めて前世界のヒロインが自分だったことに気づきます、どうです? なかなかの衝撃でしょう。


「……本来の世界とは違うんだ、これ」


 いろんな感情をとりあえず押し込んで、冷静になって考えるのは篠文ユキの考えるこの世界の異常性でした。

 本来はもっと下之ユウジに関わる女子がいたはずで、それがこの世界では徹底して関わりが絶たれていること。

 そして事故を間近で繰り返し見た篠文ユキはこの世界を福島コナツが中心と思っていること。

 

「(というか色々ネタバレ食らったような気分)」


 ただ彼女はまだ確信が持てませんでした、というのもあくまで彼女が見た篠文ユキという主観を通してみた世界の真実。

 完全に信用するには突拍子もなさすぎて、裏付けが欲しいところでした。

 そこで彼女は篠文ユキが知っていることを真実である前提のもと”答え合わせ”をすることにしたのです。


 四月二十一日 篠文ユキと下之ユウジ接触によって姫城マイがヤンデレ的行動を起こす。


 しかしそうはなりませんでした。

 何故か篠文ユキに対して姫城マイが接触して『ユウジ様観察同盟』なるものが結成されました。

 これも篠文ユキにとっては予想外だったそうですが、情報収集の観点とこれまでの世界では仲の良かった姫城マイとの交流を持ちたいことを理由に同盟入り(?)したようです。

 ただ嵩鳥マナカとしてはその”ネタバレ”と異なる展開になったことで、その篠文ユキの記憶の信ぴょう性が少し下がります。

 なのでまだ様子見することにしました――



 嵩鳥マナカは何度かのリセットを経ました、そして”ネタバレ”通りの展開が起こりました。

 


四月二十七日



 下之ユウジが前日に生徒会に拉致されたことを知りました。

 嵩鳥マナカはそれまでの間に福島コナツと色々あって死んだりコミュニケーションを取ったりしていたことも把握済みでしたが、今回の生徒会拉致からの生徒会入りはリーク通りです。

 なので篠文ユキの記憶はある程度信用出来るかもしれないこと、今後この世界で活動するにおいて”すべてを覚えている”篠文ユキとの情報交換はあった方がいいことを考えます。

 だから極めて打算的で、本当なら良くないことだという認識はあるのです、それでもこの世界の行く末を、かつて自分が気になっていて付き合っていた下之ユウジの恋愛を知りたくなったのです。

 

「篠文さん、もしかしてあなたって――これまでのこと全部覚えてたりする?」

「えっ」

「実は私、下之君のことずっと気になってるんだよね――前世で元カノだった時も、それ以前も」

「っ!」


 それが私というかナレーターというか、別世界・別時間軸の私であり嵩鳥マナカが篠文ユキに接触し”ユウジ様観察同盟”に入った経緯でした。

<ルート6 それっぽい勢力図!>


[オタ組]

・ユウジ

・ユイ

主人公と情報収集要員のコンビだ!


[シスターズ]

・ミユ

・桐

・ホニさん

・ユミジ

・ナタリー

・アイシア

ミユとミユの部屋に軟禁状態になった旧ヒロインらだ!


[ユウジ様観察同盟]

・マイ

・ユキ

・マナカ

観察同盟とは名ばかりのファンクラブ兼ストーカー集団だぞ!


[藍浜高校生徒会]

・会長代理 アスカ

・副会長 ミナ

・書記 チサ

・会計 コナツ

・副会長補佐 ユウジ

二人がメタ要員でブラコンとメインヒロインと主人公で構成された生徒会だぞ!



=作者雑記=

ストックが尽きました……全然書き溜められず。

次回更新は未定になります、早めにお会い出来たら。

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