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第621.05話 √6-4 『ナレ視点』『二〇一一年三月三一日』

時を戻そう……。



 ええと、ゴホン。

 ナレーションのナレーターです、ってなんか懐かしいですね。

 ほぼ緊急的な状況説明において私がした方がいいとのことで登板しました……これ、ちゃんと追加報酬出るんでしょうね?

 正直嵩鳥マナカルートという素晴らしい神シナリオの余韻を味わっていたかったのですが……そこ自演乙とか言わない。


 新しい世界及び物語のざっとあらすじに目を通しましたが、ちょっと異質な世界のようですね。

 個人的に思うところはあるのですが、それについては今回のナレーションのシメにでもお話しようかと思います

 


 時は遡ります。



二〇一一年三月三十一日



 いわゆる嵩鳥マナカの世界の最後です。

 各世界においてリセットのタイミングというのはまちまちで、三月三十一日までが存在する世界もあれば、三月三十一日を待たずして終わる世界もあります。

 今回の場合は三月二十五日でおおよそが完結した世界ではありましたが、”余白”というものが存在するパターンでした。

 三月三十一日の日付が変わって四月一日を迎えることはないにしても、それまでにおいては”加えることのできる余地”として残されています、その間に関しては書き加えることが出来るのです。

 ギャルゲーで言うところのちょっとしたアフターストーリーにあたる部分といったところでしょうか、おまけシナリオ、はたまた店舗特典小説のような、本筋には影響しない程度の余談です。

 そんな余談があったかもしれませんしなかったかもしれません、ただこの世界においてはその時間が用意されていたというだけの話です。

 ということから世界の終わりをある程度把握できる<管理者>サイドの桐とユミジによって、”覚えている者”にはその世界の終わりが知らせられます。


 ともかく、そんなことからナレーションはミユの部屋に場所を移しましょう。

  

「今回はギリギリまであるパターンだった」

『嵩鳥マナカは贅沢な使い方をしましたね』 

「あやつ<規制>権限を使って好き勝手しおって……」

「いいなぁ、マナカさん……我もユウジさんと学校通えたらいいのに」

『私も憧れちゃうなあ』


 ”覚えている者”が集うミユの部屋にはいつの間にか三人と一匹(?)と一体ものメンバーが勢ぞろいすることにもなりました。

 部屋の主ミユにミユのサポートAIのユミジ、あやしい妹の桐、神様なホニさんに加えて中原蒼もとい鉈の妖精ナタリーが揃っています。

 常に全員が揃っているということではなく、こういった世界変遷のタイミングを年越しをするかのようなテンションで全員迎えるのが慣例になっていました。

 別にワイワイ出来るから……もあるかもしれませんが、どちらかというと世界変遷後の情報交換のしやすさ・効率を求めた結果のようです。


 もっとも揃っていたところで、ミユとユミジ以外は二〇一〇年四月一日〇時〇分時点で原則存在している場所に戻されていしまうのですが。

 なので、むしろ戻されない方が異常事態まであるのです。


「そろそろかも」

『基本的に元の場所に戻れば問題ないとしましょう、私と桐のテレパシー的なのは使えるようにしておきます』

「うむ、何もなければわしは自分の部屋に、ホニは神石周囲か自室に、ナタリーは倉庫に戻るはずじゃの」


 桐の説明通り、基本的に始まる場所はそれぞれ決まっています。

 いわゆるシナリオの都合上と言いますか、そしてそれぞれ転送された場合はそれぞれの再会できるタイミングを待つということを決めています。

 というのも主人公ユウジのシナリオ進行の妨げとならないことが先決で、余計なことをして話がズレていくと……覚えている彼女らは余計な一年を経験する必要性が生じる可能性があるのです。


 桐ならユキの交通事故直後・未遂のユウジとの接触後、ホニさんなら春の肝試し時点か肝試しを終えている設定でのこの家か、ナタリーも倉庫掃除のタイミングのそれ以降になります。

 それまでは各自判断です、いないように演出するのもいいですし、下手なことをしなければ世界に影響を与えることはなく平然と過ごすのもアリですね。

 何度も世界の終わりを経験していると、世界の始め方も大体分かってきてしまうものです。


 だからこそ慣例ではありましたがいつも通りに、世界・物語を跨ぐものかと――そう思っていたのです。


 あと少しでデジタル時計の数字が、アナログ時計の秒針が〇時〇分〇秒を示そうとしています。


「5・4・3・2――」


 しかし――


「1…………あれ?」


 五十九秒、のところで数字も針も停止してしまいました。

 それから部屋を沈黙が満たし、全員の視線は数秒どころか何十秒も、はたまた数分の間も時計から逸らされることはありまでんでした。


 しかし、この部屋は今年の四月一日どころか、昨年の四月一日も迎えることはなかったのです。





「どういう……こと?」


 最初に沈黙を破り口を開いたのはミユでした。

 少なくとも自分自身が声を出すことの出来たことに内心ミユは安堵しながらも――


『なんで……?』


 妖精サイズなナタリーも首を傾げます。

 少なくとも時計が一斉に壊れるなんてことはホニさんだけでなく全員が想像できません、それではこの時が止まってしまったようなこの状況はなんなのでしょう。 

 しかしそんな中でも嫌な予感を覚えているのが数人ばかりいました。


「桐、これってもしかして……」

「あぁ……もしかするとまたバグってしまったのかもしれぬな」


 桐とホニさんが見を以て経験したこの世界における異変、次の日も去年の次の日も迎えることはなく三十分時間が戻り続けてしまう――バグ 

 ユウジが桐による”記憶封印”の負荷などによるストレス・バグの蓄積によって世界の時間を三十分だけに限定してしまったことがありました。

 あの時はホニさんが部屋ごとフリーズしてしまったユウジの夢の中に潜って、夢の中でユウジと出会い励まし背中を押したことで結果的に問題は解決されたのです。

  

 ですが――


『しかし三十分のやり直しが起きていません、前回とは状況は異なるようです』


 前回との違いは三十分をやり直し・繰り返すどころか秒針が止まったままになっていることにありました。

 時が止まっている……解釈すれば容易ですが、すると今動けているこの部屋の住人の存在はどうなってしまうのでしょう。


「とりあえず! ユウジさんの様子見てくる!」


 ホニさんは前回の記憶を頼りに、もしかしたら今回もユウジに何かあったのではないかと考えてミユの部屋の扉を開けます。

 そう、扉は開くのです。

 ただ――


「え」


 ホニさんは部屋の外に足を踏み出すことが出来ませんでした。

 ――部屋の境界、扉の桟を超えた先には自分の手足が存在していなかったのです。


「ひっ」


 消えた手足をホニさんは咄嗟に引っ込めます、幸い手足はこの部屋に戻ってくると無事生えていました。

 実際特に痛みなどはありませんでした、それでも消えていた・見えなくなっていた? その間の手足の感覚がなくなっていたのです。

 

「どうしたホニ!?」

「……桐、もしかして私たち――この部屋から出れないかも」

「『え!?』」


 それを聞いて妖精体のナタリーが小さな小さな指を扉の外に出して、消えていたのを確認して引っ込めます。


『こわい!』


 この部屋の外に手足程度なら戻ってくれば影響が無さそうなことは観測していますが、全部出てしまうとどうなるかについてはわかりません。

 もしナタリーが勢い余って部屋の外にすべて出てしまえば完全に消失――してしまう可能性だってあるのです。


「……えいっ」


 開けっ放しの扉に向かってミユは部屋の中のタオルをまとめてボールにして投げました――ボールは見えなくなり、消えてしまいました。


「えええっ!?」


 そこでこの部屋の住人も察し始めるのです。


「まぁわしなら大丈夫……嘘じゃろ」


 そして最後の頼みの綱ともいうべき、桐でさえも部屋の外に存在することは出来ませんでした。

 時計の時が止まったしまったこと、部屋の外に出れたとしても、部屋の外に出ている部分が消えてしまうこと。

 そこから考えた結果――



「わしら、この部屋の中でしか存在できないのでは」



 それは”覚えている者”にとって致命的な事態に陥っていることを物語っていました。 

 この部屋のみにしか存在しえない、外に出れば消えてしまうような不確定な存在になってしまったのではという言い知れない恐怖、それが彼女たちの間にじわりじわりと浸透し始めていきます。  

 そんな時でした。


『む、謎の通信が……別回線開きます』

 

 しばらく沈黙していた携帯ゲーム機から発声する人工AIユミジが声を発したかと思うと――



『どうも私です、助けてくだしあ』 



 ユミジ以外の女性の声が携帯ゲーム機から流れたのです。



「「誰?」」


 しかし残念なことに、その声にピンことない人には誰だかまったくわからなかったのです。

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