第621.01話 √6-0 『???視点』『???』
時系列的には√cと√dの間になります。
欠番していた十八章です。
私、アイシアは下之家にホームステイ……と名ばかりに自室を確保した上で、軽くサーバルームと化した、それでいて時間の流れも割と曖昧な空間で液晶画面を見つめている。
これは私の仕事というか、日課というか、未来の私が押し付けてきた厄介ごとというか……。
そもそもの前提として私はすべてを覚えているし、大体のことも知っている。
未来の私だけではなく、他世界の私との記憶共有も行っているので、ほぼ情報は詳細にして最新。
その上でのこのゲームと現実のハイブリッドな世界を維持するための、末端のプログラム修正を行うのが私の役目。
私の今の生活はといえば高校に行けている時もあればクローンに代返させている時もある。
√5世界でユーさんが生み出した分身方法のクローン技術を可及して私も使えるようになってからは、クローンを遠隔操作したりある程度自由に行動させたりで、自分の自由な時間は増えていた。
実際単なる人間が神裁になったところで、ユーさんが何気なく神に願ったことがそうやすやす叶うはずもない、というか少なくとも神を演じていた役者でしかない私はそんなこと出来ない、あくまでユーさんが<クリエイター>の能力を発揮しただけにすぎない。
私は出来ているものを使っているだけ、とんでもない話だけどこの世界はユーさんありきの世界で、それを本人は今は無自覚というね……。
それでも普通の女子高生ほど私は高校生活をエンジョイ出来ているかというと微妙ではある、けど……”現実デフォルト世界”のクソつまんない日々に比べればマシに違いなかった、オルリスのことは好きだけど政争の道具にされるのが本当に嫌気がさすし気に食わなかったし。
だから今の私は割と満足している、このたまーにユーさん達に混ざるような日々が嫌いじゃない。
それに――
「まぁ、打算がないわけじゃないしね」
未来を知る私はある程度今後の展開がわかる、一応最後に二択をユーさんがどう選ぶかで変わるけど……たぶん問題ないはず。
とはいっても私のその秘めた野望が叶うのはまだ先なのに対し!
制作側にもかかわらずシナリオがあって、ちゃっかりヒロインを満喫した裏切り者……じゃなかった、ユーさんの彼女をした委員長が私のチェック画面には写っていた。
「嵩鳥さん好き勝手やってまぁ……」
ユーさんにこの世界のことペラペラしゃべってスッキリして、それでいて少しお色気シーンもありありなラブコメを送ってきた。
充実してる、しすぎてる、好き勝手やりすぎ。
「私はこうしてずっと調整してるのになぁ」
ヒロインになれなかった私は慈善事業のように好きな異性が他のヒロインと添い遂げる姿を見届け続けている。
だから本当は嵩鳥さんが羨ましくて仕方ない。
「……まぁ創作者へのご褒美かな」
もともと嵩鳥さんはヒロインになるつもりはなかった、実際に「ルリキャベ」に彼女は攻略対象ヒロインとして存在しない。
あとあと嵩鳥さんが書いてはいたものの、きっと世に送り出す予定もなかったであろう「嵩鳥マナカがヒロインになれたら」というifストーリーをゲームにしまったのは結局のところ私たちの判断だったのだから。
だから羨ましい一方で……これぐらいはいいと思う。
「ある程度許容しないと――私のターンが来た時に協力させづらいしね」
まだその時ではないにしろ、私はまだ諦めていない。
とりあえずは一つの終わりまで、私の仕事をするだけだ――
<「ファーストワールドver.α」起動を確認>
<媒体ソフトに「Ruriiro Days ~キャベツ風味~」を指定>
<「No.6 福島戸夏シナリオ」を展開します>
そう、私も仕事は頑張ってるんだよ。
でもさ、ダメな時はダメというか。
どうしようもない時はどうしようもないというか。
<繰り越しデータ同期エラー>
<基本設定データ同期エラー>
「ありゃりゃ」
<自己修復プログラム実行――10%――35%――79%――エラーが発生しました>
途中エラー出ちゃったし。
こりゃ再起動をかけた方がいいかな、このまま始めちゃったら色々滅茶苦茶になるし――
<「ファーストワールドver.α」起動成功>
「ちょちょちょ!」
だめだこのゲーム、だいぶガタきてるわ……再起動押してるのに反応せず進行してるし。
これどうなるんんだろうなぁ、まともにストーリー進行とかするのかなぁ。
「あー……」」
というかごめんユーさん、嵩鳥さん。
私なりにやってみるけど――やっぱりダメな時はダメだと思うんだ。
クソゲヱリミックス!小説家になろう連載10周年です(?)
やり残したことをちまちまやれればいいと思います。
√6 全33話+1話予定