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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
62/638

第201話 √2-6 G.O.D.

文字数500000ピッタシ!

四月二七日


「肝試し、やるぞ!」


 そうマサヒロは言った。


「どうぞ」

「いや……どうぞ、っておま! お前も来るんだぞ?」

「ええー」


 マジか…こいつはこうしてまた変な事を思いつく。以前にも「右手が疼くからゾンビ退治に行こうぜ」とか言ってた時期もあったなあ、とおおよそ半年前の出来事をしみじみ思いだす。

 ギャルゲーだったら所詮友人Aにしかなれない凡人キャラが!


 いや、正解ですが、ユウジが言う立場じゃないですよ?


「露骨に嫌な顔をするなよ」

「……はぁ」


 盛大なため息が漏れる、幸せが全力疾走で逃げて行く気がするね。今こそ俺にハッ●ーターン!


「その”またか”みたいな顔やめろよ! 俺傷ついちゃうよ? シルキーハートだよ?」

「で、昨日どんな夢でも見やがったんですか?」

「夢じゃねーよ! 神様のお告げでも無く……まさしく気分で決めたことだ」


 余計最悪だ、もっと面白い返しを期待したのに……実につまらん。


「あー、ごめん。俺神様以外では従わないから」

「嘘です、本当はお告げでした。なんか神様を名乗る”すたっふ”って奴に”肝試しやれよ”と脅されて」

「の割には嫌な顔していないように見えるのだが、気のせいか?」


 言っている顔はにへらと笑み崩れ、明らかに楽しそうである。まあ、こいつホラーやグロとかいける口どころか大歓迎みたいだからな。


「てへぺろ♪」

「……」


 あー、でも時間を無駄にした。こんななら読み終わってないキ●の旅読んでた方が有意義な時間の使い方だったわ。

 いや比べることそのものがキノの旅に失礼だな、いや販売するメ●ィアワークスにも電●文庫にもその作者さんにも失礼だった。

 

「じゃ、まあ頑張れよ。助力するつもりは一切ねーけど」

「そんな……肝試し、こんなに面白いことはないというのに」

「はぁ? 時期が問題だろうよ、今四月だろ。それに俺とお前と誘うならユイか? そんないかにもなメンバー御免だぞ」

「そこんところ最近モテ期到来なユウジさんにですねえ」

「拒否」

「なして」

「……俺が誘っても、いくら肝試しでも来ないだろう――」

 

 そんな非常識的な時期に、肝試しなんてやるなんておかしいだろう。

 だから来るはずがない、来るのは物好きなユイぐらいだ。姫城さんもユキも来るはずがない――


 と思っていたのだが。



四月三〇日



「ユウジー、ミナさん、桐ちゃん行こっかー」

「ああ、悪い」


 ということで、一家総出で肝試しであった。俺の選択や行動は間違っていたと言っていい。 

 来ないだろうと高を括っていたのが、そもそもの原因だった。

 姉貴は、それを耳にした途端……というか姉貴そのものには話していないなかったが立ち聞きし「ユウくんと肝試し!?」と今にも目を血走りそうな勢いで「行きたい!」と小さい子供のごとく言ってきた。

 桐は「ふふ、実に面白い……それに、まあ既定路線じゃしな」とかワケワカランことを話していたがついてくるらしい。

 ユイは「行くぜ、超行くぜい!」とか言って俺らと行動を別に先に行っていた。

 ユキも何気なくマサヒロ謹製の気持ち悪いほどに良く出来たチラシを見せて誘ったら「……ペアかあ、じゃあ行く!」

 更に立ち聞きパターン……またかよ! 姫城さんが「ユウジ様が行くのなら、行かせてください! お願いします」と言われたことで押しに弱く聞かれてしまった責任も考慮して、俺も肝試し参加を決定せざるを得なくなった。

 

「こんばんはユウジ様、皆様方」

「こんばっぱー、皆の衆」


「なん……だと」


 ということで、地味に集まる女子勢に驚きと嬉しさを滲みださせるマサヒロに少しばかりイラッとしたので来て早々殴っておいた。

 そのあといきなしくじを引かされペアを決めることに、そして結果はというと――


「やったああああああああああああああ、ユウくうううううううううううううん」


 抱きつかれています、実の姉に。嬉しさのあまり抱きついてくる姉貴をどうかしてほしい。

 姉貴のテンションマックスであった。そう、まさかの姉弟デートが決定した瞬間だった。

 しかし一応断っておくが、まったくと言っていいほど嬉しくない。以前の生徒会事件もあったこともあり最近姉貴に背中を見せると寒々しいものを感じるのはなんでだろうと。

 色々と初めてのモノが狙われている気がしないでもないのは、自意識過剰か姉貴の醸し出す空気感がそうさせるのか定かではないが、前者は論外としても後者でないことも願う。

 まあマサヒロが相手だったら、全力全開その場から力の限りFly確実だったが、まあ姉貴だから一応はマシである。

 正直、今肝試しの伝統っぽいペア行動を呪いたくなる瞬間だった。


「ユキさんと組みたかった……」

「ユウくん、他の女の名前は出ちゃだーめ」

「あんたは俺のなんなんだ! それにユキは立派な幼馴染――」

「それでもだーめ、肝試し中は……ふふ、ユウくんと、はぁはぁ」


 だめだこの人イカれてやがる。誰かに病院を紹介してもらいたいちころだが、精神科でもある種逃げ出すかもしれない。

 そんなこんなで、俺らのターン。よりによってのトリで、焦らされ熟成された姉貴は出番が来るのと同時に俺と手を繋ぎ、指を絡めてきた。


「ユウくんを守らなくちゃ」


 どうしてこの作――ごほんごほん。この俺の家族や周辺人物は嘘がつけないのであろう。例えついたとしてもまるっきり分かる棒演技で。

 

「ああ、でも俺は別の恐怖を感じてますんで」


 暗闇のシチューエションと墓場が舞台で肝試しという中での罰当たりなロケーションでのアレとかアレはさぞ興奮する――と以前マサヒロがほざいていた気がする、もちろん当時はブンぶん殴ってやったが。


「ユウくん……ユウくんっ」


 隣の姉貴は息を荒げている。

 あれか、俺が生徒会に入らなかったのがそんなにショックでしたか、そうでしたか。

 だからって、反動でここまでなるだろうか……いや、ない。潜在的な何かが姉貴をそうさせているのだろう。

 襲撃カウントダウン、今に襲われる五分前。思わず姉貴が絡めて来る手から解き放たれたい衝動に駆られるが、姉貴はがっちりホールドして放す気は金輪際ないらしい。


「さーて、貢物貢物っと」


 マサヒロの指定した大きく、綱の巻かれた神石前に辿りつく。

 姉貴の手を決死の思いで振り切り、持っていたビニール袋から液体と小麦色の薄い何かが入ったタッパーを取りだす。

 ちなみにこれは昨日の晩餐で残った稲荷揚げの余りであり、冷蔵庫にはこれほどのものしかなかったと弁解しておく。

 貢物を置いて、ハイ終了。この瞬間に逃げ出してしまおうかと思っていたのだが――



『わ、好物のお揚げだ♪』


  

 聞こえるのは高い女性というより女子の声。かといって桐の猫かぶり状態のときほど幼くは無く、成長期で次第に色っぽい声へと変わって行く――中学生ぐらいだろうか?

 

「えと、誰? どっかに隠れてんの?」

『あ! 聞こえてた? うん、我は我だよ?』


 喋りこそ軽快だが、どこか驚いている節があった。


『じゃあそっちに行くねー!』

「!?」


 途端に光り出す神石。こんな夜中に光り出すのは一体どんな理由か、それ以前に石が光るというあたかも漫画の読み過ぎな展開は何か、目がくらんで瞑った俺にはわからない。

 あまりに明るく眩しい光そして、そして――

 

「よっこいしょー……って、なんであなたは我の好物を?」


 目の前にはとある少女が立っている。もちろん見覚えはない、紛うこと無きはじめましてである。 

 床に引きずるほどにに長く黒色の綺麗な髪を持ち、大きく吸い込まれそうなほどに緑の瞳が特徴的な、美少女に分類するというならば太鼓判が押せるであろう顔つき。

 背は中学生程にあり桐とは大分印象が異なって、そして服は何故かセーラー服を着用していた。


「我の好物はお揚げなんだよー、その様子をみるに偶然持ってきたのかな?」

 

 はぁそうなんですか。ええ、たまたまですね。食べる?


「え、いいの!? わぁ、ありがとー! じゃあ遠慮なくいただくねっ!」


 それで……君はこんなところで何を?

 

「こんなとは失礼なっ! 我が祭ってあった神聖な石だよ!」

 

 今”我が祭ってあった”って言ったよね?


「うん! 我こそ美桜山の農作物を護る神!」


 ……えーと、とにかくあなたは神様なんですか?


「うん、そうだよ! そして我の名前は”ホニ”! 我の姿が見えてる……決めた! 我は、あなたたちについて行く!」


 そうして俺は、彼女と出会い、彼女と過ごすこととなる。


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