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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十一章 妹でさえあればいい。
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第739話 √8-5 『ナレ視点』『???』



 それは曖昧な空間、二次元と三次元が曖昧にして、過去か未来か現在か曖昧にして――生きているのか死んでいるのかも曖昧な空間にして、世界。

 そんな中の一つの教室に、とある人達が集められていました。


「どうしてここに……?」

「さっきまでミユたちと居たのに……どうしてなんでしょう」

「……というかここ教室だよね」


 ナタリーと、ホニさんと、ミユと。

 そう、彼女たちが集まっているのです。

 

「教室にしては外が殺風景すぎますね」

「閉鎖的空間っぽい感じなのん」

「なんだか変な感じですわ」

「あれ!? ユウくんは!?」

「――少し嫌な予感」

「なんでこの面子なんだろうなー」

「ユウジ……」

 

 マイとユイとオルリスとミナとヨリとコナツとユキ。

 ユウジがかつて攻略した女の子たちでした。

 それ以外の子はおらず、生徒会の会長や書記などもいません。

 彼女たちの家族すらいません。


 これは以前に……ああ、今になって思い出しました。

 個人的には胸糞が悪かった、これまでのヒロインが集められてアイシアによる告白が行われたシチュエーションに似ています。


 そんな中、皆の机から見て教室の黒板の右端に突然スポットライトが当たったかと思うと――


「えー、不本意ですが……今夜のしくじっちまったぜセンセーの一時間目の教壇に立つのはこの三人です」

「「突然何 (なの)!?」」


 ユミジがそうなんとも言えないような表情で、教室の扉の方に顔を向けます。 

 すると――


「どうもー」

「失礼します」

「場違いな気がします」


 そうして入ってきたのは――アイシアと委員長と井口 (ナナミ)でした。

 この入ってきた三人が机を前に座る女の子たちと、どこが違うかと言えば――


「えーとまず、私がしくじっちゃいましたのは――ほとんどみんな死んじゃったテヘペロ!」

「「え」」


 アイシアがそんな軽く言ったことに、各自机を前に座る女の子たちは驚きの声をあげます。


「え、えと……アイシアさん、それってどういう」


 思わずユキがアイシアに質問しにかかります。


「はい、篠文さん。えーと、なんというか……ここにいる皆、私含めて”死んだようなもの”なんですわ」

「「っ!?」」


 それはなんとも意外なことでした、アイシアもろとも私たちが死んでいるとは。

 そういえばこの空間自体、生死が曖昧なのである意味死んで訪れる場所として間違いではなかったのでした。


「死んだらここに来るのは分かるんだけど、”死んだようなもの”ってのが引っかかります」

「いいところに気付きましたねナタリーさん」


 しくじっちゃった先生かと思ったらイケイケ神先生だった。


「そう、実は今ユーさんと桐以外のあの町の町民全てが死んだ扱いになるんです」 

「「ええええええええ」」


 というか私も驚きなんですが、もう一人の私が普通に教壇近くにいますけど驚いてますし。


「つ、つまりこれまでの”世界が終わる”とかと違って……本当に世界終わっちゃったってこと!?」

「その通り」 


 ミユがそう言い、アイシアが頷きます。

 そうしてこの教室内にいる女の子に動揺が広がっていきます。

 一部の子は事情を分かっていても、世界が終わり全員が死んだということで戸惑いを隠せないようです。


「そういえば私たち以外の町民は、一応今もこの空間の別の場所に避難しているのでご安心を。言わば町民全員死にかけということで」 

「ど、どうしてそうなったんですの!?」

「それが私がしくじっちゃったことでね、今までそんな世界をギリギリで踏みとどまって維持してきたけど……まぁ無理だったというわけよ」


 オルリスのもっともな疑問にアイシアが答えます。

 維持<管理>はアイシアがずっとやってきたことでしたからね、私としてはアイシアを責められません。



「そんな私たちが生きるも死ぬも、ユーさん次第……というより主人公次第なんだよね」



「ユウジ様が!」

「ユウジさん!?」

「ユウくん!?」


 マイやホニさんやミナ以外も全員リアクションしましたが省略。


「ユーさんが二つの選択肢で”私たち”を選んでくれれば、私たちは何のこともなく生き返れます」

「――選んでくれなかったら」

「今度こそ確実に死にます」


 事情を知る私としては、今私たちが居ない間に進行しているのは桐の世界でしょう。

 そんな桐はこのゲームのラストヒロイン、桐攻略完了を以てゲームクリアとなるのです。

 そしてゲームクリアすると、どうなるかと言えば――


「と、その二つの選択肢についてはのちのち。次の人にバトンをほい」

「えっ!? 私ですか」

「ゴニョゴニョのこと今話しておかないと」

「…………正直気が重いというか、場合によっては刺される気がするんですが」


 いやほんとすっごいしたくないんですけど。

 アイシアや未来の下之君に巻き込まれたとはいえ、私も主犯格には違いないんですけど……。

 ということでアイシアにバトンタッチされたのは私、委員長にして嵩鳥マナカでした。


「えっと私がしくじっちゃったことは……暇つぶしにここにいる女の子に関する小説を書いたら、それがどういう訳かギャルゲー化されてしまったことです」

「「…………え?」」

「それねー」

「…………」

「そだねー」

「あー、うん」


 多くが驚く中、ミユとホニさんとナタリーとユキだけは違う反応をしていました。


「……ユキは知っていたんですか?」

「うん、ユウジに教えてもらったんだ」

「そうですか……ユキには教えたんですね……」


 マイの嫉妬ゲージが上がっているのが分かる、ちょっと怖いので抑えて。


「言ってしまえば、この教室に居る女の子の大半は”空想上の存在”です」

「「!?」」

「しかしその空想とはいっても、元となる女の子たちは実在していました。例えば篠文ユキさんにとっての篠ノ井ユキカのような」

「「(じっ……)」」


 ナレーションとは別個体の私のせいでユキに注目が行ってしまいました。


「えっ! まぁ、その……私、現実では篠ノ井ユキカって言います。よ、よろしくね」

「「…………」」

「あ、いきなりだとそうなるよね……」


 ユキが完全にとばっちりでした。

 自分たちは実はギャルゲーのヒロインだったけど、更に実の実では元となる人物が存在したとか、意味分からないですよね。

 私も正直よくわかりません。


「と、多分言われてもピンと来ないでしょうから。ちょっと今から”篠文ユキルート”のダイジェスト映像をみてもらいます」

「なんで!?」


 委員長としての私はユキに恨みでもあるのでしょうか。

 そしてユキルートの映像ダイジェストが流し終わり――



「「キスしすぎ(では)」」



「多分そこじゃないよ!?」

 

 ユキ以外の全員が口を揃えて言ったことでした、まぁそれは分かりますが。


「というかダイジェストとか言ってき、キスシーンは全部網羅してるってなんなの!?」

「……というかユキが二百六十三回もキスをしているとは、私としてはかなりショックです」

「なんで右下に丁寧にもキスカウンター付けたの!? プライバシーってなんだったの!」


 ダイジェストで計算してみたらユキルートではそりゃもう何度もチュッチュしていましたとも。

 ちなみに描写では「ユキと・ユキがキスをした」というだけのところでも、まぁ複数回やってまして……数えるもんじゃないですね。

 ユキだけでなく私含めて他の女の子もショッキングという誰も得しない結果になってしまっています。

 

「ちなみに次いでミユの十三回です」

「流れ弾!?」


 ついでに公表される次位のミユ……なんだか私がごめんなさい。

 それにしてもユキのキス回数が別格すぎるのですが、他の子は最後の一回とか数回とか余裕でありますもんね……私の場合世界ファーストはナタリーにとられましたし、そのうちあいつしめる。



 とは言ってもこのダイジェストを流したことに意味がありました。

 口元に手を当てながらマイが呟きます。

 

「……なるほど、ということは私にも本当の自分の名前が存在するのですね」

「そしてどうやら本当のわたくしたちにはわたくしたちの記憶が存在しておりますのね」

「そういうことになりますね」


 とはいっても、その子のモデルに関しての情報や記憶に関しては解放されていません。

 自分で思い出したユキが例外なのであって、この世界においてはこれが普通なのです。

 これまでの世界で正しかったのは、ゲーム化時に名前や設定などが変えられた今のヒロイン達なのですから。


「アタシにも真名ってヤツがあるのすな! アニメの能力者みたいでええすな!」

「いいえ、巳原さんにはありません。巳原さんとミナ先輩とミユは名前そのまま、記憶に関してもそのままのはずです」

「しゅん……」


 なんかユイがすごいがっかりしてますけど、仕方ないですよね。


「ルーツが違うと言いますか、確かに皆さんのことを小説にして残したのは確かですが……今あげた三人は姫城さんたちとは別のゲームの原作に使われたのです。そしてそのゲームの脚本担当が――」

「え、えと私です」


 そうしてオドオドとした表情で私に連れられてきたのが井口さんでした。


「「誰」」

「ああああああ! クラスも違うし、接点のない私はやっぱり場違いだと思っていました! えっと井口ナナミです、よろしくお願いします」

「――ナナミが黒幕だったとは、意外」

「黒幕って言わないで!」 


 同じクラスらしく、最近の世界で交友関係を持つようになったというヨリだけが知った雰囲気でした。

 ……あとは覚えているユキぐらいでしょうか、ホニさんにとっても印象薄いでしょうし。

 確かにナレーション視点の私でもあまり印象が無いというか……気づけばヒロインになっていたような。

 それもそのはず、井口さんをモデルにした小説を私は書いていないのです。

 つまりはオルリスの世界で割り込んできた井口さんのヒロインエンドは、井口さんが書いたオリジナル自分ヒロインシナリオだったからなのです。


「そして……お分かりかもしれませんが、前の世界で下之君と恋人になった――という夢は、夢ではなく現実にあったことなのです」

「「……っ!」」


 ヒロイン全員息をのみ、そしてそれぞれ他の子と顔を見合わせます。

 こ、これ修羅場になるのでは……!


「ということは私とユウジは付き合ったことがマジであったんだな!」

「――納得」


 コナツとヨリは合点がいった、という表情をしていました。


「そ、そうでしたのね……わたくしとユウジが」

「な、なんか照れるでござるなぁ」


 オルリスとユイは思い出したことで照れている印象でした、リアクションは様々ですね。


「……と、いうことは一体ユウジ様の彼女は誰になるのでしょう」

「それはもうお姉ちゃんの私だよね」

「……家族同士で付き合うというのは変ではないでしょうか」

「変じゃないよ姫城ちゃん。だってユウくん、私とミユと結婚してくれるって小さいころ言ってたし」

「また私にも飛び火!?」


 ……一方のユウジへの愛がちょっと強すぎる二人は、見事に修羅場に突入していました。

 そしてまた巻き込まれるミユ、まぁミナが言ってることは間違いないのですが。

 マイの更なる質問の矛先はユキに向かうことになったのです。


「それではユキはどう思っていますか」

「え、私!?」

「はい、ユウジ様の最新の彼女だった貴方の意見が聞きたいです」


 ”最新”とか、だった”とか微妙に煽りが入っててこわいよマイ……。


「えーとね……私も正直、ユウジがみんなと付き合ってる! なんて言われてもピンとこない」

「そうですよね」

「でもね――」


 そしてユキは続けるのです。


「ユウジが皆の為に頑張って、それでそれぞれ好きになっちゃったことは仕方ないかなって……私もそれまでの皆の恋愛を見ていたのもあったし」

「…………」

「本当は、私だけ見てほしい。私だけの男の子でいてほしい――でも、それはきっと皆一緒だよね」

「「…………」」


 みんなが”全員で幸せになろうハーレムイエーイ!”と心の奥底から思っているわけではないはずなのです。

 少なくともこの私、というか嵩鳥マナカも同じ気持ちでした。


「だから保留にする! 私たちが二年生になったら、とりあえずは全員ユウジの彼女になって……あとは、ゆっくり考える!」

「……それは結論を先延ばしにすることになるのではないですか」

「そうだね。でも私、ユウジに必要以上に迫って困らせたくないもん、だから――あとでちゃんとユウジのお嫁さんにしてくれればいいなって」

「ユキ…………」


 ユキの考え、気持ちはみんなに伝わっていきます。 

 そして彼女がとても女の子らしく、それでいて彼氏であるユウジのことも考えていることに……みんな少しだけ心動かされるのです。


「でも私はね、誰かに遠慮して身を引くなんてしてほしくない。私一人見てほしいのに、他の子にも諦めないでほしいなんて矛盾してるよね。それでも好きにさせちゃったんだから――そんなユウジには責任取ってもらわないと、だからね!」


 限りなく前向きな発想にして、ある程度の線引きを以て他の子を許容するユキは……とても眩しく映りました。

 彼女がその考えに至ったのは果たして元来のものだったのか、それとも――これまで見てきた世界の影響で、そう考えるようになったのか。

 きっと私もメガネを外せば彼女の真意が見えるのかもしれませんが、なんとなく見なくてもいい気がします。


 そんなユキの演説のち、しばらく皆が考え込むようになったあと――

 

「で、提案していい?」

「どうぞミユさん」


 すっかり司会者立ち位置になった私がミユを指名します。


「私としてもユキとほぼ同意見なんだよね、正直私だけの兄でいてほしいけど……まぁワガママ言えないからさ。だから――」


 そうしてミユが提案するのは――



「協定、作ろ」



 それからヒロイン達は意見を出し合い、譲れない戦いや妥協点などを見出しつつも、おおよそのことが決まって言ったのです。

 それは二年生を迎えた時に、ユウジに対して私たちはどういう立ち位置か、それでいてユウジと二人きりの時間の確保、禁則事項など――

 ……そしてこの流れがのちに分かったことですがアイシアの望んだことであり、こうなるように仕組んでいた可能性すらあるのがなかなかシャクな気がします。

 

 

 


 そしてアイシアが引っ張っていた、二つの選択肢というのを話す時が来たようでした。


「”下之ユウジ彼氏彼女協定”が出来上がったし、これで二年生になっても万全……と言いたいところなんだけど」


 そう、私はアイシアに言われる前からなんとなく気づいていたのです。

 こうして協定を決めるまでしたのに、どうして私たちの生死が曖昧なままなのかと。


「でもそれはユーさん次第で、なかったことにもなっちゃうから」  

「「…………」」


 原作者サイドではありますが、このギャルゲーと現実がハイブリッドになった世界のシステムにはあまり干渉していません。

 つまりユウジがゲームをクリアすると、何がどうなるかと言うことに関しては分かっていなかったのです。

 だから比較的知識のある私でも、この曖昧な空間にヒロイン全員が集められているのは解せないのでした。


「ユーさんにはゲームクリア記念に、とある特典が”一つ”だけ支給されるんだよね。それが――」

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