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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十一章 妹でさえあればいい。
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第740話 √8-6 『ユウジ・ナレ視点』『???』(終)



「うーん! たのしかった!」

「……俺は正直色々納得がいったけども、ミキにとって楽しい要素あったのか?」

「うんっ! だってこれまで、なんだかんだで町中周ってお兄ちゃんと”でーと”したから!」 

「ああ、そういう……」


 桐の足跡をたどりつつもミキにとってはデートだったらしい、この子なかなか豪胆ですことよ。


「お兄ちゃん」

「なんだ」

「桐といっぱい遊んでくれてありがとね」

「…………そんな、桐が満足するほどだったか分からないけどな」

「そんなことないよ。ボードゲームとかテレビゲームとか、学校に来ても構ってくれたり、楽しかったんだって」


 ”~だって”、それはミキにとって”他人”の記憶にあることでいかないことが分かるニュアンスだった。


「だから桐は幸せだったよ、だからとっくに――攻略は終わってるんだよ」

「そう、か」


 桐が幸せだったなら、悪くないのかもしれないな。

 それでも別れの言葉ぐらい残しておけよとは思うがな――



「お兄ちゃん、ゲームクリアおめでとう」



 ミキが「拍手~」と言いながら手をパチパチと叩く。

 前の世界から強く意識していた、そして一番最初の世界から知っていたゲームの攻略。

 それがミキが言うなれば、終わったということらしい。


「お兄ちゃんのおかげで色んな女の子の願いが叶ったよ! ありがとね!」

「いや、それは……」


 正直これまでの記憶があっても、それぞれの世界の俺が頑張った結果”らしい”という感じで、あまり実感がない。

 実際この世界でも、ユキの世界でも俺は何もしていないようなものだったのだから。


「だからね、お兄ちゃんにプレゼント」

「プレゼント、か」


 実感こそないが、ゲームクリア記念の特典……みたいなものだろうか。

 正直俺としてはこのままゲームクリアして、二〇一一年の四月一日がやってきてほしいのだが――


「うんうん。でもね――プレゼントは二つあるけど、一つしか選べないんだ」


 そしてミキは俺に、重要な二つの選択肢を示した。


「一つ! このままコンテニュー! みんなと恋人関係になった状態から世界がはじまります!」


 そういう、ことになるよな。

 十分考えていたことではあった、それでも俺にとってはとてつもなく嬉しいプレゼントだ……いや、ハーレムヒャッホーとかじゃなくて。

 少なくともみんなとのことを忘れないまま、次に進めると思うとこれ以上ないことだと思うのだ。

 もっともそのあと彼女たちが俺との関係をどう思うか、分からないのはあるが……それは考えていければ、そう考えていた。


 そう、俺としては二つ目の選択肢は眼中になくもう即答するつもりだった。

 しかし――



「二つ! 今までの世界よりさらに一年前に巻き戻って、これまでの記憶と能力を持ったお兄ちゃんのサクラへの告白からのやり直し! 強くてニューゲーム!」



「なっ……」


 流石に予想外だった。

 いやいやそんな選択肢がありえるなんて、考えもしなかった。


「でもね。その場合はこれまでの世界で積み重ねたことは、お兄ちゃんの記憶と能力を除いて――全部無かったことになるんだ」

「っ!」


 なかったことになる、それはこれまでの世界で過ごした時間やその間に育まれた関係も含まれるのだろう。


「そして、ギャルゲーと現実がハイブリッドになったことも無かったことになるよ」


 …………とんでもない選択肢だな。

 つまりは――


「サクラかみんな、どちらか選べってことだな」

「うん」


 

* *



「ユーさんにはゲームクリア記念に、とある特典が”一つ”だけ支給されるんだよね。それがまず、みんなとユーさんが恋人関係になったままでループを抜け出すのと――」


 そしてアイシアは、私たちにとって予想外の選択肢を提示するのです。

   


「ユーさんが、サクラとの告白をやり直すか」 


 

「「……サクラ?」」


 サクラと聞いてピンと来ない子も多いのです、そして知っているのは私と数人。

 それでもサクラという人物は――


「そ、そんなの! サクラとやり直すに決まってる!」


 ミユが叫ぶのです、実際私も叫びたい気持ちだったでしょう。

 しかし堪えていました、口に出すことで”本当”になってしまうことが怖かったのです。


「あのミユさん、そのサクラさんとは一体……」

「サクラはね、ユウ兄の初恋の相手だよ」

「「っ!」」


 初恋の相手、という衝撃の事実に知らなかった皆は息をのみました。


「そしてユウ兄が告白して、振られて、そして居なくなった――私たちの幼なじみだよ」

「「幼馴染……」」


 ユキとミナが二人、その幼馴染という単語を噛みしめるようにして呟きます。

 一人は幼馴染になりたくて、もう一人はサクラよりも上手く幼馴染になるための、願いを持った子だったのです。


「そして、ユーさんがその選択肢を選んだ場合――この空間にいる私たちは死にます」

「「……っ!」」

「サクラヘの告白は中学二年生の末、そこからやり直すってことは――これまでの関係や積み重ねはなかったことになる」

「そんな……」


 ミユがそれを聞いて嘆きます。

    

「そして、これまでのゲームをキッカケに生まれた女の子もなかったことになるんだよ」

「……それは我もってことかな」

「ナタリーとしての私、もでしょうね」


 その選択肢はユウジにとっては限りない救済にして、トラウマとなって根付き、記憶を失うまでに至ったすべてをやり直せるチャンスでした。

 果たしてユウジが私たちを選んでくれるか、分からなくなってしまいました。


「だからユーさん次第――これまで一緒に過ごしたみんなを選ぶか、振られた幼馴染のサクラを選ぶかだよ」


 この選択肢の提示は、人によっては「どっちを選ぶか見当もつかない」という子もいれば――


「あはは……これはちょっと相手が悪いかも」

「そうだね、ミナ姉……」


 サクラをキッカケに生活がガラリと変わってしまった二人の姉妹は、彼女の影響力を知っていました。

 だからこそ、二人にはすっかり”私たちを選んでもらえる”という自信はなくなってしまったのです。

 

 それでも、そんな中でも――



「私はユウジを信じるよ。だって約束したから――二年生になっても私は彼女だって!」



 サクラの影響力を姉妹ほどは知らなくても、ある程度分かっている彼女からすれば勇気のいる言葉だったかもしれません。

 それでも彼女は――諦めていないのです。


「だからユウジは私たちを選んでくれるよ! 好きな男の子を信じないでどうするの!」


 ユキは沈み込む皆に喝を入れるようでした。

 ……喝をいられたのは私も一緒で、私も少しだけ希望を持ち始めるのです。

 ああ、ユキは強いなぁ……負けたくないな、と思ったのです。

 ユキの”好きな男の子”と、”二年生になっても私は彼女だって!”が、私含めて琴線に触れたようでした。


「ユウジ様、選んでくれないと呪います。選んでくれたら幸せにします」

「ユウジさん! お願い!」

「信じますわよ……ユウジ」

「ユウくん! 好きー!」

「私も信じたいかな」

「――Uは私たちを選ぶ」

「ユウジー! 信じてるぞ!」

「ユウ兄! 選ばないと許さないんだからね!」


 ユキの言葉は皆の気持ちを、流れを変えたのです。

 これは強敵だ、でも私だってユウジ君を好きな気持ちは負けるつもりはないのですから。

 ずっと見てきた、ずっとナレーションしてきた私を舐めないでいただきたいですね。



「ユウジー! 愛してるー!」



 ユキの強い愛の告白は、教室内どころか曖昧な空間全体に響いていくようでした。



* *



 サクラとやり直せるかもしれない。 

 それははっきり言って反則級に魅力的な提案だった。


「そしてお兄ちゃん、この選択肢は選び直すこともやり直すこともできないからね」


 そりゃそうだよな。

 思えば桐はこのゲームを攻略するにあたって「思うままにやり直せ」とか言ってたっけなぁ。

 ……それも今回ばかりは許されないってことだ。


「だからちゃんと考えて選んでね、後悔しないように、お兄ちゃんが幸せになれるように」   

「幸せ……か」


 もし、俺があの時の告白をしないでいればサクラと今も関係が続いていたのだろうか。

 幼馴染というか悪友というか、たまに口は悪いけど憎めないような、そんないつしか好きになってしまった女の子に。

 そして誰も傷つかない、家族だってバラバラにならない、ミユが引きこもらない。

 そんな、そんな平和で幸せな世界を目指せるのだろうか。


 それでも――


「一つ聞いていいか」

「いいよ」

「――サクラとやり直した世界に、お前はいるか?」

「…………っ!」


 その質問は予想外だったようで、ミキが今までの幼くも隙のない笑顔を絶やさなかった表情を崩す。


「え、えっとね。その世界だとホニさんもいないかな、ナタリーだっていないはず、かな」

「そうか。で、お前は?」


 畳みかけるように、はぐらかすようにしているミキを追いつめるように語気を強めていた。


「…………いないよ」

「そうか」

「で、でも! 私は桐じゃないよ! この世界ではじめて会った、妹って名乗る良く分からない存在だよ! それでも――」

「桐と同じでバカなのか」

「ば、ばか!?」

「んなこと言ったら俺の中で桐は未だに”自称妹”だ。あんなのを妹なんて認められない」

「え、えぇ……」

「でもな、俺はさ――あんなやつでも嫌いじゃなかったんだよ。好きとは言いたくないがな」

「……意地っ張りだね」

「うるさーい」


 見事に俺の何周りも小さい女の子相手にムキになる俺、すっごい格好悪い。


「それでも桐が遺したのがミキなら……はいそうですかと、サクラに浮気してまで消してしまおうなんて考えねえよ」

「で、でも! これが最後のチャンスだよ!? もしかしたら、サクラとやり直すことで幸せになれるかもしれないよ! というか、皆と彼女になる世界って大変だよきっと!」

「お前は俺にサクラを選んでほしいのか」

「え、えっと……」


 それはミキなりの優しさなのだろうと思う。

 勝手に推測するなら、家族の顔を見れて、桐として遊んでもらって、私は満足だから――みたいな考えだったりするんだろうかな。


「だが悪いが」


 正直俺の心ってのをミキは分かってないな。

 サクラとやり直せるかもしれないからって、俺がもしかしたら幸せに過ごせるかもしれないからって――



「俺の大好きな人達を諦められるかよ」



「……で、でも! そしたらサクラは――」

「もう終わったことだろ。俺が無残にも振られただけだ。やり直してどうなるとも思えない」


 俺の中での、みんなへの好きな気持ちは――とっくにサクラへの好意を上回ってる。

 これからは大変だろうがそんなこと知るか、過去を振り向いてる余裕なんてないぐらいだ。

 俺は前を進む、そして出来れば皆も一緒に付いてきてほしい、叶うならば俺が好きになった女の子全員に。



「だから俺は選ぶぞ、俺は――」




 

√8 END



「もしもユウジが――」


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