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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第728話 √7-61 『ユキ視点』『二月二十日』



二月二十日



 三月に近づくと段々と気温が上がって来て、なんだか春の準備が始まったような気がしてくる。

 冬用コートも手放して、春用の薄手のコートだけでちょうどいい感じ。


 そして私は、ひょんなことからユウジの家にお泊りすることになっちゃった。

 私の家でユウジが泊まっていくのはこれまで何度もあったけど……こうして、彼女になってからは初めてなんだよね。

 そして私が――正確にはユキでなく”ユキカ”この町に戻って来てからは初めてだと思う。


「おう、いらっしゃい」

「お、お邪魔します」


 緊張気味に私はユウジの家の敷居を跨ぐ、なんだかんだで皆で来ることは結構あったのにね、緊張しちゃうね。

 そもそものユウジの家に泊まることになった発端はというと――


『なんか俺だけユキの家に泊まってばっかりなの悪いよな』

『ううん、そんなことないよ』

『そうなのか? でも俺としては、そうだな……たまには俺からも誘ってみたい、かもしれない』

『それって……』

「結婚しよう」

「唐突すぎる!?」

「あ、えと……じゃあ明日ぐらいに?」

「せめてもっと時間くれ!」


 いけないいけない、回想からの妄想で勢い付いて声に出してしまった。

 というか結婚は否定しなかったよね! 聞いたからね! 私忘れられないんだからね!

 ……ゴホン、一応正確には――


『それって……』

『俺の家に泊まらないか? その、だ……母さんにもユキを紹介出来たらいいし』

「やっぱりこれ結婚だよね」

「脈略が無い!」


 いやいやだって、彼女を紹介とかもう実質結婚だよ、婚姻届け準備しちゃうよ。

 ――という半分冗談はさておき、ユウジが私のことを義母さんに紹介してくれるということは嬉しい……ちょっと気が早かった。

 私に断る理由もなく、ユウジの家にお泊りさせてもらうことになったのだった――



 今日お泊りと言っても日曜で、明日はもちろん学校だったりする。

 じゃあお泊り出来ないよね、とお思いかもしれないけど――ユウジの家から登校すれば問題ないよね!

 ということで制服着替え一式と鞄も持ってきた、効率的だね!

 

 ユウジの家から私と一緒に出てきたユウジパシャリパシャリフライなデーにすっぱ抜かれる! ……普通だよね。

 というかユウジが私の家から登校することあったし、すっかり私たち不良少年少女感!

 でも、そういうのってちょっと……ドキドキする、かも?




 

 昼前にやってきた私は、ユウジの作る昼食を早速ご馳走になった。

 メニューはパスタで……なんというか美味しい、本当に美味しい。

 多分男子の中だとクラス一か、学校でも上位の料理の腕があるんじゃないかと思うよ私の彼氏さんは。

 麺の茹で具合から食材のチョイスと、私としても唸る万人向けのスパイスの効かせ方はびっくり。

 

「むむむ……」

「ま、マズかったか」

「むむむ……(美味しずぎて)なんか女子としては複雑」

「えぇ!? 何かやらかしたか!?」


 料理出来る男の子はモテるもんね、当たり前だよね。 

 ……というかこれまでの世界でも他の女の子にお弁当作って来て、渡してるようなこと何度か見たっけ。

 むむむ…………。





 昼ご飯が終わったら二人の時間――ではなくて。


「ゲームやろうず」

「私も私も」

「お前ら空気嫁」


 ユウジの部屋に来るのは二度目、大晦日の時にここで年を越したっけ。

 ユウジの部屋に二人きり、緊張! ……というのは完全に杞憂だったけどね。

 ユイとミユも来て四人でボードゲームをすることに。

 

 ……うん、楽しかったし盛り上がったけど! けど!


 それにしてもあんまり意識してないけどユイはやっぱりユウジと同じ家に住んでるんだなぁ、とか。

 記憶の中の小さな頃のミユも面影があって懐かしいなぁ、とか。

 何気ないことに気付く時間で。





 夕食前の一時、私は結構に緊張していたり。

 なにせユウジが私をユウジのお母さんに紹介するのだという、静寂とした和室に通されてより緊張。

 どうしよう、お義母さん認めてくれないってなったらどうしよう。


「ということで母さん、この子が俺の彼女なんだ」

「えと、篠文ユキです! その……息子さんを私にください」

「普通立場逆じゃね!?」


 ハッ、つい先走ってしまった! がっつきすぎだとか、気が早すぎると思われたらどうしよう……!


「――あげます! どうぞ持って行って!」


 ありがとうございます! テイクアウトしていきます!


「そんな近所の人に余ったものあげるみたいに、俺でも割と傷つくぞ」

「ごめんねごめんね。でもね、私としたら安心なんだよね――」


 ということでお義母さんの了解が得られたということで、お持ち帰り――



「だって、あの”ユキカ”ちゃんだもん! 安心して任せられちゃうわよ!」



 ――え?


「母さん、いや、だからな――」

「フフフ、年長者を舐めちゃいけないよワトソン君――その子はユキさんであってユキカちゃん、そうなんでしょう?」

「……っ!」


 確かにそうだった、私の名前をこの世界で……ううん私が”ユキになってから”最初に呼んだのはユウジのお母さんだったんだ。


「はい、幼稚園の頃にお世話になった。篠ノ井ユキカです、覚えていてくれたんですね」

「やっぱり! 面影ばっちりで可愛くなったなぁと思ったものよ! それにね、年寄りは昔のことはいくらでも覚えているからね」

「じゃあ今度から母さんのことをお年寄りとして敬うよ」

「うむうむ、くるしゅうない」


 なんて楽しい会話を親子でしている間にも、私は思いのほか感動していて――

 確かに私は幼馴染を望んで、その副作用的に名前が変わるのは仕方のないことだと思っていても。

 それでも、私の、本当の私を覚えていてくれているというのは嬉しいもので。


「お義母さん……」

「孫が楽しみねー」

「母さん!」

「とりあえずこの息子をよろしくね。私の夫に似て! 私の夫に超似て! モテる人だから、繋ぎとめておかないとどっか行っちゃうからね」

「そ、そんなことねえから!」

「はいっ」

「ユキもそのまま頷かないでくれ!」

 

 そうして私とユウジのお義母さんがクスクスと笑う。

 お母さんに認めてもらえなかったらとか、そんなことを考えていたのがバカらしくなるぐらいに、なんだか温かくて懐かしくて幸せな時間だった。





 夕食はホニさんが作る全体的に和テイストで、それがものすごく美味しい……料亭とかで出て来そうな感じ、すっごい。


「これ美味しい!」

「よかったです」


 私が純粋な感想を言うと微笑むホニさん、これは可愛い。 


 私としてこの世界のホニさんとはあまり面識がなくて、文化祭の時の審査員をお願いした時ぐらいだけど……これまでの私としては覚えている。

 ホニさんが藍浜高校一年二組に通って皆と過ごした記憶を、私はちゃんと持ってるいるんだ。

 きっと私以外の殆ど誰も覚えていなくても、ホニさんは私たちにとってのクラスメイトだったんだよね。


「むむ、この卵焼き……美味ですわ。こうしてはいられません、夕食を食べ終わったら卵焼き研究用に卵を買いに行かなくては!」

「クランナのその卵焼きへの執着は一体なんなんだ……」


 ユウジがクランナさん嬉々として語るの卵焼き愛に微妙に引く、それでいてなんだか馴染んだ関係に見えて少しだけ羨ましい。

 クランナさんもユウジと付き合ったことがあって……ユウジにクリスマスイブ聞いた話によればアイシアさんとユウジがクランナさんを取り合ったとか、どういう状況か分かんないけどね!

 ちなみにユウジに聞いたこれまでの世界の話はホニさんとクランナさんと雨澄さんのこと……今日機会があったらもっと聞きだしてみようかな。





 そしてお風呂の時間、どういう訳か――


「ここにボディーソープとスポンジ、これはシャンプーでコンディショナーね」

「な、なるほど」

「じゃあ私身体洗っちゃうから先に湯船入ってて」

「う、うん」

 

 ミユ、と一緒に入ることに。


 下之ミユ、篠ノ井ユキとしては幼少期に遊んだ仲ではあるけれど……それ以降は親交も無く。

 本当は中学二年生頃にもしかしたら接点を持てたかもしれないけれど、その時には幼少期程の幼いからこその曖昧さは無く――ユウジとサクラとミユで完結出来てしまっていたから。

 そしてユウジが一人になって、その時にはもちろんミユの姿はなくて、色々あって最近……というかここ直近の世界で顔を合わせるようになった感じで。


「えと、ミユさんでいいのかな?」

「浪人してますけど来年からミユ後輩です、よろしくです。あ、ほんと呼び捨てため口でいいんで」

「うん……じゃあよろしくねミユ」

「私はユキ先輩で」

「先輩呼びやめて、呼び捨てため口にして」

「はいっす」


 そういえばユウジの周りからミユとサクラが居なくなった際、少ししてサクラが引っ越してミユは引きこもったことを巷の噂で聞いた。

 実のところ、私はサクラが引っ越したのとミユが引きこもったのがどうにも結びつかなくて。

 とはいってもプライベートすぎることだから聞くに聞けないんだけどね……。



「そういえば、ユキって幼稚園頃一緒に遊んだユキカちゃんってマジ?」

 


「ええっ!?」

「あ、人違いならごめん」

「ううん、その通りだけど……どうして?」


 だ、誰から聞いたんだろう……ユウジがそういうこと話すようには思えないし。

 

「お母さんに聞いたんだ、一年間ぐらい私とユウ兄とサクラともう一人一緒に遊んだ気がするんだって。そしたらユキカちゃんだって」

「お、覚えてたんだ」


 ユウジのお母さんなら納得かな……というか私の名前は不鮮明でも一緒に遊んだことは覚えててくれたんだ、やっぱりこういうのってうれしいな。

 私はこれまでのことをすべて覚えている以上、普通の人の記憶力の尺度が良く分からなくて。

 たぶん幼少期のことなんて覚えてないのが殆どなんだろうけど、人によっては覚えているらしくて――


「一年間とはいえ、あとでお母さんに聞かされたけどお互いの家に遊びに行くぐらいに仲良かったんだもんねー」

「……そうだね」


 ミユがここまで覚えていて、それを頼りに聞いたりして私の存在を見つけ出してくれたのは嬉しかった。

 それでもワガママだし自分勝手だけど、ミユが覚えていてユウジはどうして覚えていないんだろうと、少しは考えてしまって。


「そういうことってユウ兄と話したり?」 

「ちょっと……かな、最近になってから少し。覚えてるならもうちょっと早く話してくれて良かったんだけど――あ」


 自分で言っててウンザリとしてしまった。

 私って性格悪いなぁって、酷いこと言ってるなぁって、そしてそれが本音でしかなくて、心の奥底には――その気持ちが確かにあったせいで。


「あー、最近なんだ。でもさ……ユウ兄があまり覚えてないことは責めないであげてね」

「え?」

「あれ、聞いてない? うん、なら私から話すのはやめておこうかな」

「ええっ!? なんで!?」

「ユキがよかったらユウ兄に聞いてみて、話してくれるかも」

「すっごい気になるううううう!」


 無粋かもしれないけど、すっごい興味引くところで話題切るとか酷いよ!?


 そして私は少しして、ここまできて初めてというか、なんで気づけなかったんだろうというか――ユウジとサクラとミユとのこと、その結末について。

 よりにもよって当事者で、一番傷ついたかもしれない人――ユウジに聞くことになるなんて、思いもしなくて。 

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