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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第727話 √7-60 『ユウジ・ユキ視点』『↓』



 まぁ男心としては期待してしまうわけですよ、彼女のバレンタインチョコレートというものは。

 それが手作りでも、手作りじゃなくても、例えそれがカレー味のチョコだったとしても……!

 いやいや考えすぎだ……俺の中でのユキがスパイスマニアになりすぎている件に関して、印象だけで語るのは良くないなと反省。

 ともかく彼女がくれるなら、本命チョコレートならばどんなものでも嬉しいと、要は言いたかったのである。

 たまたま前日に読んだラノベの……タイトルはなんだっけ、アニメイツ? スイカブックス? ゲーマーっす! みたいなタイトルの金髪ヒロインが主人公を模したフィギュア型チョコレート~図書館風味~という強烈なものを贈っていた描写を読んでしまったからなのか、妙に警戒してしまっていただけなのだ……他意はないのだ。


 そうしていつものようにユキと朝の登校待ち合わせをしているのだった。


「おはよーユウジ」

「おはようユキ」

「いこ」

「ああ」


 そうして二人いつものように手を繋いで歩きだす、まったくもっていつも通りで何ら不思議なことが無い。

 そして何気ない世間話をしながら学校を目指す、これまた平常運行な風景であり何の問題も無い。

 ……もっとも、教室に付くまでチョコのチの字もなかったこととユキ自体が本当にいつもと同じ調子だったことを除けばだが。

 あれっ? バレンタインデーって存在しなかったっけ? と思うほどの雰囲気と空気の普通っぷりに逆に驚く。

 まぁ確かに彼女の手料理でよくカレーは食べさせてもらってるし超うまい、まぁ色合いも似てるし同じようなものか……ということは毎週がバレンタインデー! という彼女なりの考えだったのかもしれない!

 そうとは知らずに俺はカレーを無神経に口に運んでいたことに――ええ、ちょっと微妙にショックで現実逃避してただけですとも。




 

 男下之ユウジでありユキの彼氏の俺、焦っちゃいけないよ。

 バレンタインデーははじまったばかり、つまり俺たちの戦いはこれからなのだ。

 ……そこで次回にご期待ください、という文言が浮かんでくるあたりわりと動揺しているのかもしれない。


「はい下之君チョコですよ」

「おう、ありがとう委員長」

「私のチョコはリバーシブルでしてね、二つの味が楽しめます」

「おお、手が凝ってるな」

「つまりは――私がその気になれば本命チョコにも義理チョコにもなるということ可能だろう……ということ!」


 なんだか教室がざわ……ざわ……してきた。

 あ、バレンタインデーで皆浮かれてるだけで深い意味はないっす。


「……うん、まぁ有難くもらっておくわ」

「市販品ですし賞味期限も長めですけど――次の世界には持ち越せないのでお早めに」


 そう言い残して去っていく委員長、去り際になかなかズシリと来る言葉である。

 そう……例え分身体がバイトを頑張って稼いでも、次の世界にはお金を持ち越せない――宵越しの金は持てないということ! 

 まぁそのことに関しては割とどうでもいいことなのだが。


 今は二月の中旬、この世界は最長で三月三十一日までしか存在し得ないのだから……終わりは目と鼻の先まで迫っているのだ。

 そんなことを改めて意識させられる、ほろ苦い委員長との出来事であった。





 その後も――

 「おうユウジやるぜ! 男気と言えば汗、汗といえば塩、だから超塩チョコだぜ!」とくれた福島の塩チョコ、その言い方だと塩分過剰そうなんだけど大丈夫?

 「――いっぱい、どぞ」と「あ、あのよろしければっ!」の雨澄と井口も一緒にやってきてチョコを持ってきてくれた、雨澄は一口チョコの業務用大入り袋で井口は綺麗にラッピングされたチョコを貰った。

 「大人買いしたのでおすそ分けぞ」とここにきてユイから駄菓子の本来の主役だがおまけのチョコウエハースのジップなロック入り詰め合わせを貰った、正直押し付けられた感じがするのだが山林に投機しないだけオタクとしては良心的だろう。


 そして――




 正直内心的には少し気まずい子からもチョコを貰うことになった。


「ユウジ様、バレンタインチョコです」

「ああ……ありがとな」


 大き目の紙袋に入ったチョコを受け取ると俺はお礼を言う。

 今の姫城とは普通に仲良くしている、もちろんそれは友達として親友の範疇としてで――

 しかしそれでも俺の心の中には姫城の告白を断ってしまったこと、内心では確かに姫城への好意があることから時折姫城との距離感を決めあぐねてもいた。 


「もちろん本命チョコです」

「でも姫城、あのな――」

「分かっています私たちは”友達”ですから、そして振られた以上恋人にはなれません」

「うっ……」


 姫城は別に皮肉を言っているわけでも、嫌味を含んでいるわけでもないのに心に来る言葉だった。


「ただ――来年の今頃はどうでしょう、それでは」


 そうして姫城は宣戦布告したのち俺と……ユキの方をちらり見てから自分の席に戻っていったのだった。

 ……優しくも手ごわいな、姫城は。


「ん?」


 そう思いながら姫城のチョコを取り出してみると手紙が付いていた。


『私を模した十二分の一スケールチョコレート製フィギュアです。ユウジ様、おいしく食べてくださいね(ハート)』

 

 チョコの箱を取り出してみると――完全にフィギュアのパッケージですありがとうございました。

 そして姫城の見た目が再現された上に素材はチョコレート、箱も良くて笑顔なメーカーから出てそうなパッケージ外見が再現されている。

 赤飯の時といい斜め上の方向に手がこみ過ぎだろ……!


 それをクラスで少し出したらさぁ大変、クラスにいるマイファンクラブメンバーとおぼしき男子生徒が「一万まで出す!」「バカ安すぎだ! 俺は三万出すぜ!」「いやいや価値を分かっていねえな、十万!」

 めっちゃすごい値付いているけど絶対売らないぞ、俺ことスタッフがおいしくいただきました……姫城やユキには内緒だがあまりの完成度に色んな角度から写真を撮って残してしまった。


 



 こうして俺と関わった……というより以前の世界で付き合ったことのある女子限定なのだが、その子達からチョコを多くもらったバレンタインデー。

 正直嬉しいものだ、今からお返しはどうしようと考えるぐらいで、義理メインとはいえ三者三様のチョコは楽しくもある。

 しかし俺としての大本命のユキはといえば、本当にいつも通りすぎて何もなく放課後を迎える。


「ユウジかえろ」

「おう」


 ああ、とかいつも通りに言ってるけど内心劇的ショッキングである。

 そっかー、ユキからはもらえない感じかー。

 正直彼女だからもらえるという驕りがあったんだろうな、俺ってヤツは最低な男だ。

 勝手に期待して勝手にショックを受けているのだから世話無い、だから少なくとも俺が割かし落ち込んでいることは顔には出さないようにする。

 そして何事もなく明日が来るのだ、いいじゃないかそれでも、別に彼氏彼女の関係が終わるわけじゃないんだしな……。


「じゃあまたねー」

「ああ、また明日」


 そうしていつものように登校時の待ち合わせ場所で下校時も別れる、こうしてユキとの時間が終わる。


「あ、そういえば」

「ん?」

「はい、チョコ。いれとくね」

「え」


 そういえば、でワンフレーズ開くことなく俺の学生カバンを開けて突っ込んだのだった


「じゃあねー」

「お、おい――」


 そして俺が呼び止めることなくユキは走り去っていった、ってか速っ!

 ユキはすぐさま姿を消し、呆然とした俺だけが取り残される。


「…………え、今のバレンタインデーチョコだったの」


 あまりにも呆気なさ過ぎて、ある意味ショッキングなんだが!?

 いやでも、実際のところは――好きな女の子からのチョコというのは嬉しいもんだな、家への帰り道そんな思いを強くしながら歩みを進めたのだった。





 家に帰ってすぐさま自分の部屋に逃げ込むと、真っ先にユキのチョコを開ける。

 前に話したマスキングテープなども用いて可愛くラッピングされており……これ保管しておこう。

 そしてユキからのチョコということで当初は懸念していたスパイシーな味は、口に入れると――


「お」


 しなかった。

 というかむしろ普通に美味しいというか、めちゃくちゃ美味しい気がしてならなかった。

 このカカオとも砂糖とも違う、鼻に抜けるような心地いい甘さはなんだろうと考えて――


「ああ、シナモンか」


 スパイスと一口に言うと、辛かったりするのが真っ先に浮かぶのだが――

 シナモン、これもスパイス。

 ユキらしい、ちゃんとユキのチョコになってるんだな。


「……うんうん」


 チョコとシナモン、合うんだな。

 ハートや星に象られた手作りチョコを頬張りながら、俺は至福の時間を迎えていたのだった――。

 


* *



「はぁ……はぁ……」


 走って自分の家に逃げ込んで来ちゃったけど、ユウジ変に思ってないかな!?


「はぁ……」


 私ことユキは彼氏に送るチョコを、逆にそっけなく渡してみたのだった。


 ……いや、だってさ! 学校にいる間も私の彼氏さんというかユウジモテすぎでしょ!

 というか彼女公言したのに誰も遠慮しようとしないよね!?

 みんながアグレッシブすぎて、普通に照れながらも渡すつもりがそうもいかなかったよ!

 

 そしてタイミングも重要で、きっとユウジは家でも女の子にチョコを貰っているだろうし、バレンタインデー初チョコはたぶん無理。

 それこそユウジの家に泊まるか、私の家にユウジを泊めるか――


「そ、その発想はなかった……」


 そうすれば初チョコ確定だったじゃん! それでも十分アリだったじゃん!

 なんで浮かばなかった! ああ、前日ギリギリまでチョコ作ってたからですとも、どっちにしろ無理でしたとも!


 だからユウジの中で重きをおくような、インパクトを残すとしたら最後に渡す。

 そしてそれも意外性があるべきだと思ったんだよね。

 彼女からの本命チョコが、めっちゃあっさり……これしか思いつかなかったんだよ、ずっとユウジドギマギさせてごめん。

 ユウジはドギマギしてない風装ってたけど、私には分かってた、それ分かっててスルーしてた私ほんとごめん。

 やっぱり……好きな男の子がモテモテだと嫉妬しちゃうんだよ、だから他の女の子に負けたくなくてこんな変なことしちゃったんだよ。


 それでも……自分勝手でも! 


「食べてくれると……いいな」


 世に売り出されてヒットする商品はおいしいものだと分かること。

 だから私らしくスパイサー(?)としても曲げられない気持ちもあって、ヒントそのままに手作りチョコに挑んだんだ。

 そしたら上手くいった……と思う。

 美味しい、と思う。

 喜んでくれるといいなぁ、と思う。


 ユウジの感想は気になるけど、今のユウジがチョコを食べてるかもしれない様子を想像して少しだけ幸せになる。

 そんな私の不器用なバレンタインデーなのだった。


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