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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第726話 √7-59 『ユウジ視点』『二月十四日』



 二月十四日


 

 バレンタインデー当日。


 お菓子会社の営業が実を結んだ結果、この国では二月十四日という日は女子が好きな男子にチョコレートを贈るのが当たり前な日になった。

 もっともチョコの日的な捉え方もされるので、女子グループ内での友チョコなんてのもあるらしいのだが。

 

 俺のバレンタインデーのチョコの歴史と言えば、基本的に家族から貰う”温情チョコ”な印象だった。

 姉貴は気合を入れて作る、母さんは割と高いのを買って来る、ミユに関してはほぼ毎年タロルチョコを押し付けて来ては三倍返しを要求してくる悪徳金融だ。

 すべてを覚えているわけではないのだがサクラは気が向いた時に義理感マシマシの板チョコをくれた、もちろん俺のお返しは板チョコ三枚である。

 他の女の子からチョコを貰うということはなかった――ということを一度喋ったらクラスの男子にボコボコにされたミルクチョコのように甘くはない、ほろ苦い思い出は残っていたりする、世界は優しくない。


 そんな俺に晴天の霹靂、モテ期到来である……もっともギャルゲー主人公ブーストでしかないのだが。

 というよりこれまでの世界で女の子と付き合っているのだから、付き合っている女の子にチョコを貰えない状況というのはなかなか無く、心情的にもなかなか悲しい。

 かといってすべての世界でチョコを貰えたかと言えばそうではなく、少なくともユイの世界ではチョコを貰っていなかった。

 というのもバレンタインデーが来る前に世界が終わる、というまったくもってどうしようもないことによるもので……単純に俺が貰えなかったわけじゃないからセーフ。

 もっとも世界によっては義理チョコマシマシマシな時もあった、世界によってまちまちであり確定的ではない。


 バレンタインチョコを女の子から貰うこと自体は嬉しい、それが義理であったとしてもタロルチョコ一つであったとしても関係なく嬉しい。

 そしてそれぞれの世界で俺は無意識に趣向を変えて、ホワイトデーのお返しには味や形などがそれぞれ異なるクッキーを焼いたようだった。

 バレンタインデー当日にお返しのことを考えているのは変だろうか、適当な男子に話すもんなら「チョーシノッテンナ?」とボコボコにされそうである。

 しかし今から考えないと、なんとなーくだが今回の世界のお返しは大変なことになりそうなのだった。

 それはもう今も分身体の俺がバイトを続けていて良かったと思うほどの、結構な出費になりそうなので今のうちに考えておくほかないのだった――



 朝も五時半目が覚めると。


「おはようユーさん、はいミニチュア鉈チョコです」


 そこにはあまり見慣れないレア女子が立っている、というのは月に一回で会えるかどうかの――


「お、おう……ありがとうナタリー」

「たぶん私がチョコ一番乗りですね」


 一分の一ナタリー。

 鉈の妖精となった中原アオ改めナタリーなのだがユミジに付与された特典で月に一回人間サイズになれるというのもの。

 本来曖昧な空間の記憶を現実に持ち越せない俺は覚えていないはずなのだが、この世界ではそのプロテクトが外れてしまっているようでそれはもう覚えていますとも。

 曖昧な空間の教室で何度過去ログ(過去世界の俺の映像)を朗読させられたり、疑似授業やってみたりさせられたっけな……。


「ところでナタリーへのお返しってどうすればいいんだ」

「私を持ち歩いてくれることで手を打ちましょう」

「まぁそれぐらいなら全然構わないが」 


 ナタリーは形に変化を付けられるので妖精体からキーホルダー風まで、刃をくるんでポケットに突っ込めばいくらでも連れ出せるのだった。


「あ、ちなみに本命チョコですからね」

「…………意地悪言うなよ」

「あはは、ごめんなさい。じゃあ、そろそろ――」


 そうしてナタリーはアクセサリーサイズ鉈型チョコを机に置いて部屋を去っていく、少ししたら鉈に戻っているだろう。





「いっちばーん……じゃない?」

「まぁそうなるな」


 そうしてやってきたのは、まさかのアイシアだった。

 ……そして割ととんでもない恰好をしている。


「ユウさん、私の今着ているスク水がホワイトチョコレートなら食べちゃいますか?」

「食べません。というかスク水は紺色以外邪道」


 白スクを着た上にどうやらホワイチョコを塗ってやってきたのだろうが……スク水は紺色以外認められないわぁ?

 

「まぁ拒否権ないけどね」

「っ!?」


 突然俺は膝から崩れ落ちたかと思えば、俺の身体が金縛りに会ったかのように硬直したところにアイシアが飛び込んでくる。 

 丁度アイシアのお腹辺りに俺の顔がうずまる恰好になりベトっと、そしてミルキィでスイートな味が顔全体に広がる……マジのチョコ塗ってたのかよ!?

 

「JKのホワイトチョコ美味しかった? あとで感想聞かせてね」

「おい」


 感想とか言いようがないだろと言う前にアイシアが去っていった。

 ……俺の顔が触れているところだけスク水に穴が開いていたか、肌が見えていた気がするが気のせいだろうきっと。

 あのチョコが水着に塗っているわけではなく肌に直塗りなんてこと……いやいやまさかな寝ぼけていたんだよキットカッター。

 動揺して語尾がチョコレート菓子になってしまった。



 


「早起きしてきたわしじゃよ!」

「十分遅いぞ」 

 

 俺が起床して大体十分後、既に来訪者は桐で三人目で十分に遅い。


「なぬ!? 朝起き初チョコでめろめろ作戦が……」

「メロメロにはどうなってもならない」


 というかなれない。


「まぁしょうがないの。ほれチョコじゃ」


 すると桐はショッキングにも天変地異の前触れを感じさせるほどにも驚きと恐怖もって――


「ふ、普通だと!?」


 普通にチョコボンボノを何個かくれた、これ結構うまいよね……じゃなかった!


「こうアイシアがやったように体にチョコを塗りたくるとか、チョコスティックゲーム的にチョコを仕掛けてくるものかと」

「アイシアはそんなことをやっておるのか!?」


 まぁアイシアがそんなことをやってるなんてこと桐ぐらいにしか言えないが。


「まぁ良い、たまには普通に渡してみたかっただけじゃ。三倍返し期待してるからねっ、おにいちゃんカッコハートトジ」

「ハートを自分で言っちゃうのかよ」


 桐の思考は読めないが、好物のものをくれるのは悪い気分じゃないし、桐が普通にくれること自体喜ばしい。


「まぁありがとな桐」

「……じ、じゃあの」


 とお礼を言ったら微妙に照れた表情のレア桐は部屋を去っていった。




 

 それからダイジェストで失礼するが。

 クランナからはチョコ――風味の卵焼き、いや俺とずっと練習してたの卵焼きだけどバレンタインデーでもソレなのは卵焼き芸人過ごしてるの? 俺たべりゅ教じゃないよ。

 姉貴は予想外にチョコ風味食パンを朝ご飯に振舞った、ブレッドメーカーを使ったというが普通に美味くて仕方なかった。それ以外にも家族全員にチョコを配っていた……俺のチョコだけ四倍くれたけど。

 ミユは黒い稲妻的お菓子をくれた、関係ないけど黒い稲妻的なお菓子をくれる加藤のシーンの前後は最高だったと思う。

 ホニさんからは羊羹、ほんのり甘いのに水っぽくは決して無くてめっちゃうまい、老舗の高級羊羹顔負けの味わいだ。

 母さんは海外製の高そうなチョコをくれた、ちょっと果実酒が入ってそうなヤツで毎年割と楽しみにしていた。


 これで我が家も打ち止めかと思いきや携帯に何か着信したかと思えば、from:ユミジで『義理チョコ』という文面でチョコを再現したアスキーアートを作っていた。人工AIからバレンタインチョコを貰う日が来ようとは思わなかった。

 ……既にこの時点でチョコorチョコに類するものを八個貰ってる、このペースだとホワイトデーまでにユウジーのクッキー工場作った方がいいかもしれない。

 そう思いながら学校に行くべく、いつも通りに家を出るのだった――

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