第724話 √7-57 『ユウジ視点』『二〇一一年一月一日』
二〇一一年一月一日
「「あけおめー」」
「あけました」
「あけましておめでとうございます」
「あけおぬ」
「おけあめ」
俺とユキだけが揃い、委員長。姫城とあとの二人はテキトーな挨拶をしていつものメンバーで年を越したのだった。
思えば皆で年越しというのは本当に初めてのことだろう、最近こそ家族も増えて賑やかになったとはいえ――これはこれで、な年越しだった。
そして深夜も〇時過ぎ、もぞもぞとコートを着込んで下之家から人が出て来る。
「うぅ~寒いぞな」
「寒いです」
ユイと委員長が揃って自分を抱くようにしてプルプルと震えていた。
「割と問題ないかな」
「慣れてるし」
一方マサヒロとアイシアはピンピンとしていた、アイシアの祖国は雪国だったりするのかもしれない。
ちなみにアイシアがいるのに居ないクランナはというと、クランナたっての希望により姉貴に着物の着付けをしてもらっているらしい。
桐は「わしはとくにいいのじゃが」と、ミユも「別にジャージで……」と呟やいていたが姉貴やホニさんに巻き込まれて着物とのこと。
という下之家の着物組五人と母さん以外が先に初詣に行くことになったのだった。
俺とユキと姫城とユイとマサヒロと委員長の、いつもの六人だ。
もちろん六人共々コートを着込んでいるのでお正月的な雰囲気はまるでない。
「……ユウジは私の着物見たかった?」
「…………まぁ、うん」
ユキの着物姿は夏に見たが何度だって見たいものだ、しかし俺の家から直行なので現実的でないことは良く分かっているつもりだった。
ユキ、そんな俺の反応を少しだけ楽しむように――
「じゃあ、また来年ね」
と微笑んだのだった。
「ああ、また来年よろしくな」
「よろしく、お願いされました」
ユキの意地悪なようでいて、本心から出たのかもしれないそんな言葉に俺は頷くのだった。
お祭り気質な藍浜町と何度言っているか分からないが、初詣も絶好のイベントである。
それでもまだ「家の中でファミリーパーリィ」派と「初詣に行っちゃうYO」派に別れるので、町民全員が初詣に向かうわけではなかった。
それでも深夜の〇時とは思えない人通りであり、突然この町にこのタイミングで紛れ込んでしまったら相当驚くだろうに違いない……まさに零時迷子!
「今日のコートに”それ”似合ってるな」
「そう、かな? ありがと」
俺のクリスマスプレゼントの雪結晶のブローチの一つを付けていた。
クリスマス当日の白コートだと紛れてしまう可能性、はたまた雪原に輝く一輪の華――になる可能性に二分されてしまう難しい組み合わせだったように思える。
……そこ、唐突にポエムみたいなこと言ってんじゃないとか言わない。
とにかく今のシックな黒いコートに白系で雪結晶をモチーフにしたブローチはよく似合っているのだった。
「ユウジもそれ……」
「ああ、温かいぞ。ありがとな」
ユキの手編みのマフラーも早速活用させてもらっている、丁寧に編まれたことで保温効果もバッチリで首に巻いているだけで温かいものだ。
「温かい? そう……なら、ちょっとユウジ止まって?」
「ん?」
すると俺が巻いているマフラーをほどき――
「私も入れてっ」
「お、おお?」
長めに作ったことで、二人巻けるこのマフラーで俺とユキの距離がぐぐっと近づいた。
「うん、温かいね」
「ああ」
まぁ、二人で一つのマフラーまきまきしていれば――
「……温かいというより熱いですね」
「ヤケドしそうです」
「リア充末爆」
「はは」
姫城や委員長には冷ややかに見られていた気がするけど……気づかなかったことにしよう。
だって俺たち付き合ってますしぃ? ……ごめんなさい調子乗りました。
神社に向かうべく商店街を通っていくのだが大半の店は閉まっているものの、初詣客の為に出店が幾らか出ていて盛況なようだった。
縁日にあったような出店がある一方で――
「はぁ……あったまる」
「美味く感じるな」
俺たちは甘酒を貰って飲んでいた、ほんの少しだけお酒っぽいクセの香りとほんのりとした温かい甘さが寒い中歩いてきた心と身体に染みわたる。
「ここにトウガラシ入れたらもっとあったまる」
「それはやめて」
温まるかもしれないけど飲めなくなるから!
「はふはふはふ」
「あのくじ引きハズレしか無い気がするぞい!」
委員長は綿あめ焼きそばたこ焼きを片手にじゃがバター食ってる、縁日でもよく食べてた印象だが……この時間の炭水化物と脂肪と糖分は身体に効きそうだ。
ユイはくじ引き的な出店に挑戦して見事ハズレを引き当てる、あのピューとなりながら伸びるアレこと吹き戻しをくわえながら不満げに叫んでいた。
そんな俺たちは参拝待ちで並んでいるのだった……こんな深夜〇時に参拝にくるなんてもの好きな人らだ。
と、そんなわけで各々出店で調達したものなどで時間を潰しながら並んでいるのが現状だった。
「すっごい混んでるねー」
「こりゃ遅く来る姉貴たちが正解だったか」
年明け早々の初詣需要を読み違えていた、というかこの神社の混み具合は町民皆同じ発想をしていたからこそだろう。
これだと一〇数分差で家を出たはずの着物組との合流は難しそうだな。
それから二〇分近く並んだのち――
「もう少しでアタシのターンだぜ」
「全部食べ終わったいました、ちょっと買ってきていいですか」
「いや委員長、流石にもう控えなよ」
ついツッコミを入れてしまったがその出店にかける委員長の情熱なんなの、君前の世界でそんなことおくびにも出さなかったよね?
「それでは賽銭出しておきましょうか」
「……ちょ姫城!? その額はやりすぎだろ!?」
なんと姫城が取り出したるは諭吉さまであった。
賽……銭?
「いいえユウジ様! 私の野望を叶える為には安いぐらいですっ!」
「叶うから! 神様はそんな現金主義じゃないはずだから!」
「……ユウジ様がそう仰るのなら、そうしたら責任取ってくださいね」
「なんだか理不尽!」
と、一応諭吉さまから野口様にに買えたようだった……それでも高いと思うんだが。
他の参拝客が「俺五円で良かったのかな」的な顔してるし、なんかごめんなさい他の俺らは多分普通に五円とかなんで気にしないでください。
そうして俺たちがようやく賽銭箱の前にやってきて、俺は充電させてもらえるかもしれない電動スクーターな旅で見た二礼二拍手一礼してみる……正確な名称は二拝二拍手一拝だけど気にしない。
そして手を合わせながら目を瞑り、俺も神頼みしてみるのだった。
――攻略後も、出来ることなら皆と仲良く幸せに過ごせますように。
なんとも自分勝手な願いかもしれないが、俺は攻略後も彼女たちと友達以上では居たいと思ってしまっていた。
もちろん大前提に皆が幸せであってほしいというのがあって、たぶんそれが第一のはずだと思う。
そうして俺は目を開けると、両サイドのいつもの面々はまだ長々と手を合わせていたのだった。
……何を願っていたのかは気になるが、迷信的にも自分以外には言わない方がいいというし、聞くことはしない。
こうしてあっという間の初詣も終わり――
「それではまたユウジ様」
「次は学校で」
「じゃあまた」
姫城と委員長とマサヒロとはここで別れる。
「アタシはちょっくら出店回ってミナさん達と合流してから帰るじゃんよ。ユウジは責任もって彼女送っていけじゃんよ」
「そうさせてもらうわ」
「う、うん」
ユイは気を遣ってくれたのか、俺とユキを二人きりにさせてくれるようだった……心の中でお礼言っておこう。
そうしてユイと別れて、ユイの家まで二人の時間がやってくる。
またマフラーを二人で巻きなおし、二人手を繋ぎながらそこそこの人通りながら人の流れに逆行するように俺たちは歩みを進める。
そしてユキの家の前までやってきた。
「送ってくれてありがとね――」
マフラーで近づいていた距離をさらに詰めて――ユキからのキス。
「今年もよろしくね、ユウジ」
「ああ、よろしくなユキ」
そんな新年最初のキスを終えて、ユキは手を降りながら家に入っていくのだった。