第722話 √7-55 『ユキ視点』『↓』
雪華模様――雪を花に見立てて名付けた雪の結晶模様。
私の本当の名前は篠ノ井ユキカ――雪の華と書いて雪華。
篠文ユキの誕生日は十二月十二日だけど。
篠ノ井雪華の誕生日は三月九日だった。
お母さんに聞いたけど、私の産まれた日を前後してしばらくの間季節外れの雪が降ったらしくて。
だから私には雪にまつわる名前が付けられたんだって――
「キラキラして綺麗だね……ブローチかな? うん……これすっごく嬉しいな、とっても……嬉しいなぁ」
私はユウジのクリスマスプレゼントを手に取って、傾けてみたり店の照明に透かしてみたりして。
雪の結晶を象ったブローチはキラキラと光って綺麗で……そして、そんなユウジの何気ないチョイスが私には本当に、本当に嬉しくて。
私はユウジに自分の本当の名前を名乗ってはいるけれど、自分の名前のユキカにどんな漢字を当てるかは教えていなかった。
正確には教える機会なんてなかっただけなんだけど、それでも、それでも――
私の名前がユキでユキカだからと、それに関連付けて選んだだけでユウジにはもしかして特に意図は無かったのだとしても――
私の”名前にまつわるもの”をくれたことは、あぁ嬉しいなぁって思えて仕方なくて、なんだか幸せだなぁって心が暖かくなって。
とにかくユウジにもらった二つのプレゼント、電動ミルも正直すごーーーーーーーーく欲しかったし、私が好みそうなものを選んでくれたのが超嬉しいけど!
雪結晶のブローチは超超超超超超超超嬉しくて! ユウジ、ありがとーーーーーーーー! って声を大にして言いたくて。
でも今は言わない、私内心今変なテンションだし、落ち着いた頃に……そうだ、私とユウジが思い出話をする時に実は~こうだったんだよ、って言えれば嬉しいなって。
だから今は”彼女が彼氏さんにプレゼントをもらった嬉しさ”だけに留めておいて。
ちょっと意地悪かもしれないけど、私だけが分かることでしばらく一人だけ勝手に幸せでいようと思って――
* *
それからユウジとはいつものようにウィンドウショッピングを中心に、合間には恋愛映画も見に行って。
楽しい時間が過ぎる、クリスマスデートはもう終わろうとしていて――でも、私はそれを終わらせたくなくて。
「夕飯どっかで食べていくか……ん? ユキ?」
「ユ、ユウジ! あのね!」
終わらせたくないなら、どうすればいいかなと考えて……思いついっちゃったんだ。
「今日は私の家でご飯食べて、それから……と、泊まってかない?」
「え……!?」
「お母さんもお父さんもいるけど、大丈夫」
「大丈夫……なのかそれは」
「うん、だって晴れて私の彼氏ですって紹介出来るもん!」
「ユキ……そうか、分かった。でもいいのか? 俺が泊まっても」
「もちろんだよ! もっと……ユウジと一緒に居たいから!」
「……分かった、じゃあお言葉に甘えようかな」
「う、うん! そうして!」
それからユウジは家に連絡と、それとは別にどこかに電話しているようで……もしかしたら夕ご飯の店決めてたりしたのかな。
なんだか悪い気がしてくるのに、ユウジはそれについて一切話そうとしなくて。
優しいなぁユウジは……今はその優しさに甘えちゃおうかな。
そうして私はユウジを連れて自分の家に帰ってくる。
ユウジを誘ったのは二度目になるよね、最初の時は手料理を振舞えたことだけに満足して……何もなくて。
でも今日は違う、だってユウジが私と一緒に――私の部屋で一緒に過ごしてくれるのだから。
「あらあら下之さんのユウジちゃん」
「ハハハ! 大きくなったな!」
「まさかまさかユキとユウジちゃんが御付き合いしてるだなんて」
「ハハハ! これ以上ない相手だな!」
「そうそう大したおもてなしは出来ないけれど気兼ねなく過ごしていって」
「ハハハ! 自分の家と思ってくれて構わんぞ!」
「……ユキ、私たちは私たちであららうふふさせてもらいますから。気にせずどうぞ」
「……そうだぞユキ、俺たちのことは気にすることなく――既成事実だ」
「や、やめてよお母さんお父さん!?」
ちなみにユキとしての記憶だと、私のお母さんとユウジはは体育祭などで顔を合わせているみたいだけど、お父さんの方とはかなり久しぶりみたい。
……なんだか二人ともいつも通りすぎて恥ずかしいなぁ!
「そうそうお風呂は沸かしてあるから、二人とも一緒にどうぞ」
「え!?」
「一緒にしないから! ユウジも、お母さんが変なこと言ってごめんね!」
「あらあら小さい頃は一緒に入っていたのに」
「もう幼稚園の頃の話でしょ!」
大体私は覚えちゃってるけど、ユウジは流石に覚えてないことだろうし!
……ちなみにユキカとしての記憶に存在することで、親子で付き合いがあった頃には双方の家を訪れて一緒にお風呂ざぶーんなんてことがあったのは確かだけど。
「もう! とりあえず夕ご飯作るからね!」
「まあまあ助かるわ。ケーキは用意してあるから、料理は適当な食材を使ってね」
「ハハハ! ケーキ以外出前の予定だったが、娘の手料理とはツイてるな!」
……確かに私今日遅くまで帰らないとか言ったけど、出前のつもりだったんだ。
私のお母さんは基本的にお父さんとの”イチャラブデー”はあまり働こうとしない、日によっては私に丸投げな時も多い。
スペシャルなクリスマスイブとなれば……帰って来て良かった、ほんと。
「あ、じゃあ俺もユキ手伝います」
「あらあらお客様なんだから座っていて」
「俺もちょっとユキとご飯作ってみたいんで、いいですか?」
「まあまあもちろんよ、ユウジちゃんすっかりしっかり者になったのねえ」
「ハハハ! 将来が楽しみだな!」
そうしてユウジが私の夕食作りを手伝ってくれることになって。
これって何気なく夫婦の共同作業的みたい、とか思ってしまうと嬉しくてちょっと恥ずかしくて、でも悪くない気持ちで――
そのあと四人で食事をして、ユウジ担当料理を食べて両親が一言。
「……ユウジさん、婿に来てくれないかしら」
「……我が家の食卓が一気に豪華になるな」
私も頑張ったんだけど、確かに……確かにユウジのご飯美味しいんだけどさああああああああああ!
「……あらあらあなた、私の料理がしょぼいようで」
「HAHAHA! ママの手料理が一番さ! 愛してるよ、ママ」
「私もよパパ」
この人達ほんとケンカにならない、仲良すぎ。
そして私とユウジの前でちゅっちゅするのやめて……やめて。
……それから二人お風呂に入って。
一緒に入ってないからね! ま、まだそういうの早いと思うんだよね! うん!
そして私の両親は本当に二人の時間の入ってしまったようで、二人の寝室に籠りきりになってしまったみたいで。
私たちもその……初めて私の部屋にユウジを招待する!
「ど、どうぞ」
「お、お邪魔します」
掃除はいつも以上にキチンとしたし、別に変なものがあるわけでもないのに、なんでこんなに緊張するんだろう。
「そういえば泊まってって言っちゃったけど、家の方は大丈夫だった?」
「ああ、ちゃんと彼女の家に泊まってくるって言ってきた――母さんに」
ああ、両家族公認に!
「母さんも半分酔ってそうだったけど」
「大丈夫なの!?」
「……少なくとも家の電話に姉貴が出たら、一度家に帰って説明した上に夜間外出許可証を発行してもらわなきゃいけなかったな」
……寮生活なのかな?
というかミナさん、なんかすごい。
「まぁなんとかなるさ」
「ならいいんだけどね……」
そうして私たちは二人の時間を過ごして、テレビみたり……ちょっと思いついた頃にキスしたりして。
あっという間に寝る時間がやってきて――
「そういえばユキ、俺はどこで寝た方がいい?」
「……ここ」
「え? じゃあユキはどこで……」
「ここ」
…………来客用の布団なんて用意してないし、我が家に来客用の部屋もベッドもないし、お客さんを居間のソファで寝かせるわけにもいかないし。
しょうがないこと、なんだよね!
「……マジか」
「いや?」
「俺は嫌じゃない……が」
「私がしたいから――今日はいっしょに寝よ」
「…………分かった」
普通なら照れてしまうような恥ずかしいセリフも話せてしまえそうなぐらいに、今の私は上機嫌で気分が上がっていて――
枕だけはもう一人分持ってきてあって、少し狭く感じても……それがよりユウジとの距離を縮められる言い訳にもなって。
ユウジの顔が目前にある、時折ユウジの吐息が聞こえてくる、距離はそこまで変わらないはずなのにキャンプのテントよりもユウジを近くに感じられていた。
そんな時、私はとあることをずっと聞きたいと思っていて――
「ね、ユウジってさ……ほかの世界では他の女の子とどう向き合ってきたの?」
「え、え?」
「実はマイとか委員長から聞いちゃってるけど。ユウジからも聞きたいなって、ユウジの口から聞きたいなーって」
「まじ?」
「大まじ。出来ればマイと委員長以外の他の子でもいいよ。ね、ね……ユウジの世界を教えて?」
「……分かった、じゃあ話すよ。そうだな、ホニさんとのことだとな――」
それからユウジから思い出話のようでいてノロケのような話を聞いて、時々嫉妬してユウジの唇を理不尽にも塞いじゃったり。
まるでそれは今の彼女は私なんだぞ、と主張しているみたいで後から思うとすっごい恥ずかしかったり。
それからも長い夜をユウジは物語のような話を続けてくれて、私もドキドキしちゃいそうなことも話の中にあったりして。
「ね、ユウジ。私ね、私――」
自分で話してと言っておいて、それを遮るようにキスをして。
そして身体を重ねて――クリスマスイブの夜は更けていく。
マナカ「続きは年齢制限版で」
ミユ「は!? もうちょい、もうちょい見れるでしょ」
マナカ「なお年齢制限版の執筆予定はありません」
ミユ「それは詐欺だよ! ユウ兄の●●●見せろおおおおおお」
マナカ「……相手が自分でなくてもいいんですか、ミユは」
ミユ「ユウ兄が●●●してれば、脳内変換余裕だし!」
ミユはレベルの高い、プロのブラコンかもしれません。