第198話 √2-3 G.O.D.
ここら辺はオマージュ
追記
1-1~1-9までのニューアル完了! 少しは読みやすくなったかと思いますー
四月二二日
そうあれは……俺が気にも留めなかったことだった。ただ昨日、偶然に彼女の筆箱に体が擦れて落としてしまっただけ。
クラスメイトな彼女との接触はそれが、昨日が初めてだった。
マサヒロ曰くユキと双璧を成す一年二組どころか学年否、学校レベルで知れ渡る美女らしく、どこぞのギャルゲかと言わんばかりにファンクラブまで存在するとのこと。
……というのが、マサヒロから聞いた話だ。ユキの人気っぷりに驚愕するも、こんなに可愛く明るければ納得が行く。
一方の彼女に関しては名前さえ知らなかった。接点が無ければ話す機会も無い。ただすれ違って行くだけのクラスメイトの一人。
――そう思っていたのは俺だけで、彼女は俺の名前を知っていた。いや、確かにクラスメイトではあるけれども。
……ここまで前振り、ここからが本題だ。
役得的なユキとのラッキーイベントが巻き起こった。
そのイベントは脳内メモリーに保存して家に帰ってから脳内再生したりして個人的に楽しむだけなのだが――そのイベントが着火点だったのだ。
そんな光景を目撃した人がいた。そう、それが彼女こと――姫城舞だった。
見られただけ――ただそれだけのはずだった。
しかしその後俺は余りに唐突な展開に遭遇する。
「あなたを殺すためです」
それだけ聞いたら誰がなんのこっちゃと思うかもしれないので、経緯を説明する。
俺はあのイベントの後、突然拉致られた――いや、拉致られたとか……表現は間違っていない。なにせ犯罪よろしくご丁寧に俺の意識を失わせてから運んだとのことだからな。
拉致されて目が覚めれば、そこは階段を下りた先にある半地下倉庫前のちょっとした空間だった。
彼女――姫城舞は、短刀を光らせて俺にこう言った。
俺が好きだと、それでいてユキと抱き合う場面を見て危機を感じた。
ストーカーまがいのことをして俺のことをずっと見ていて、それ故に思った。
このままでは私の想いは遂げられない――ならば結ばれる前に殺してしまおう。
……どんなスプラッタな発想だよ、こいつはおかしいと内心思った。でも、彼女が俺に向ける気持ちは強く熱く真っすぐなのは確かな事だった。
しかし、彼女はそれでいてそんな気持ちを上回る程に猟奇的だった。果てには、自分が死ぬとも言いだす始末。
だから俺は自分の気持ちをぶつけた、彼女の気持ちに応えることは出来ない――でも、ここでどちらかが命を絶っていいのか、と。
「だから、生きてみろよ」
死ぬよりも生きることに希望がある。生きれば、生きていればこれからは――そんなメリットを説教のごとく語り続け。
そして”俺を好いている”ことを利用して。
「……知りたいですっ! ユウジ様のことを! 教えてください! ユウジ様のことをっ!」
生きる意味を、生きる希望を彼女に見出させた。
まあ、その後は告白撤回されて少々残念に思うも……なんだろうか、この感覚は。
こんなことが前にもあったような気がする。
そして、そんな彼女の言葉や発想も――何か懐かしい。
おぼろげで、確実にあったとは言い切れないほどにあまりに弱弱しい感覚だった。
けれど、俺は彼女と出会ってばかりのはずで……そんなことは有り得なかった。
気のせいだと、思い違いと言い聞かせ――それは記憶の海へと沈んでいった。