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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第二十章 この中にもう一人、幼馴染がいる! ーなかおさー
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第729話 √7-62 『ユウジ視点』『↓』



 俺としてはユキの家に泊まってばかりで悪いとも思っていたのだ。

 もちろん両親は歓迎してくれるし配慮もしてくれるし居心地もいい、そしてユキと限りなく長く一緒に居られるのが良い。

 ……まぁその度に俺は昔の世界のことを聞き出されて、たまにユキがムッとしたタイミングでキスしてくるのはビックリしてしょうがないのだが。


 そんなこともあって、今度は俺の家にも泊まってほしいと思う考えはおかしくないだろう。

 それに、だ……母さんにもユキを紹介しておきたい。

 ユキの考え次第、母さんのリアクション次第ではあるが――俺が最近になって思い出せたユキカのことも話せたらいい。

 きっと母さんはある程度ユキカのことを覚えていて、だからこそユキを一目見てユキカと呼んだのだろうと思うにしても。

 母さんの考えというか覚えていることをちゃんとはっきりさせておきたい、そんな思惑もあって俺はユキを家に呼んだのだった。

 

 


 …………いや、本当情けない限りだよ。

 俺とかいうのは「思惑もあって~」とか良く言えたもんである。


 探りを入れるまでもなく母さんがユキカのことを切りだして、更には現状もちゃんと認識出来ていて。

 それにユキもちゃんと答えていて……俺の介入する余地無し!


 いやさ、ここまで来てなんだけどこの世界の俺っていつにも増して基本受け身な上に役立たずじゃね? これまでのこと覚えてるメリットがまるで無くね?

 ユキばかりに色んなこと考えさせて奔走させている気分というか実際そうだろうし、本当に本当に……男として彼氏として情けねえ。

 元も子もないけどこの世界の俺ユキに好かれる要素ないと思うんだよ。

 大体ユキというかユキカのことを今になって思い出す俺、それもきっと俺が自発的に思い出したわけでなく、なんか委員長あたりが絡んでそうな気がする…………なんかヘコむ。


 もうせめて……こんな情けない俺だが、覚えていることだけはやたらあるし。

 聞かれたことは出来るだけ答えることにしよう――





「あの……さ。ユウジって、昔のことってどれだけ覚えてる?」

「えっ」

「えっとさ、私一応幼馴染っぽくなったけどさ。ユキカとしての私は引っ越している間良く分かってなくてね」


 ……とか言ってたら、なかなか核心突いてきたユキさん。

 正直俺としてはあまり触れたくないことであって、というのも一部は記憶が欠けているからこそ人によっては話すとボロが出てしまうのだ。

 

 それでも……それでも……お、男の二言無し! 

 出来る限り誠実に、素直に答えよう。


「すまん、実はあまり昔のことは覚えてないんだ」

「……そうなんだ」

「いや、その、なんというかだな……正確には思い出せないというか」

「え」


 確かユキはこれまでのことを全部覚えているんだっけ、それだとなんだか俺はユキと相反するようだな――



「頭打ったら記憶飛んじゃった、テヘペロ」


 

 テヘペロいらなくね!?

 茶化したつもりが大滑りしてねえか!?

 ああああ、なんというか裏目るなあ!


「えっと……どゆこと?  あ、でも聞きづらいこと……かな」

「うーん、そうだな、いや……話せる話せる余裕余裕」


 余裕だ、これでもきっと誰かさん達のおかげで記憶を取り戻せた方なのだ。

 だから今は――そこまで辛くない。


「まあちょっと事故ってな、強く頭打ったら局所的に記憶が無くなってさ。だから覚えていることと覚えていないことが歯抜けみたいになってんだ」

「…………」

「だから、実はユキカのことも思い出せたのも最近でさ。覚えてるのも……ユキカと出会ったこと、一緒に遊んでいたらしいこと、ユキカが事故りそうになった時とかは、あとは別れの時ぐらいで他はさっぱり……でな」

「そう……なんだ」

「……だからスマン、まだ思い出せてないことがあるんだ」


 俺が思い出せた事柄は基本的には大事な場面だったりするところぐらいで、日常風景などに関しては殆ど出てこない。

 それは幼少期のみならず中学三年になるまでのことは不完全に違いなかった。

 だから、俺が覚えていないことでも重要なことはいくらでもあるはずで、でもそれはどうしても思い出せなくて、だから申し訳なくて――

 


「私は……嬉しかったよ、ユウジがユキカとしての私を思い出してくれたこと」



「っ!」

「特にちっちゃい私のことを助けてくれた時のことはね、私もずっとずーっと思い返してたんだ。だから今でも言うね――私をあの時助けてくれてありがとう、そして――」


 なん、だろうな。

 ユキが優し過ぎて、俺のことを気遣ってくれすぎて、それが嬉し過ぎて――



「これまでの世界、何度も何度も私を助けてくれてありがとう……ユウジ」



 ああ、ああ。


 こんなに、救われちゃっていいんだろうか? 

 ユキ一人だけを好きになれない、皆を好きでいることに嘘をつけない、そんな優柔不断で不誠実な俺がこんなに……こんなに!

 最初こそはゲームだと思っていても、時間が経てば俺なりに彼女たちと本気で向き合ってきたつもりだった。

 でも結ばれてもその度に俺は何も知らず忘れていて、彼女たちも俺のことは覚えていなくて。

 ようやくこれまでのことを思い出せたこの世界では、むしろ俺は大したことも出来なくて。

 それでも認められて、お礼を言われて、優しく言ってくれて――


 ああ、ユキのこと好きだなあって。


 ちょろい、んだろうか。

 今までもユキのことは好きだったけど、これはそれよりもずっと本気な気がしてならなかった。

 ……全員のことを同じように好きと言う気持ちが、ほんの少しだけ揺らいでしまうぐらいには。


 前からユキのことは好きだった、一番このギャルゲーと現実なハイブリッドな世界で初めて会って、可愛くて元気で、出来ることなら付き合いたいなと思った。

 でもユキは俺が知るよりも前からずっと見ていてくれたのかもしれない、でも覚えていないからということを言い訳にしてもそれに俺は気づけなくて。

 それで、なんというか、その――


「好きだ」

「私も好き」

「好きだ!」

「私も!」


 感情が溢れて来て、ああこの子と出会えて良かったなぁと思う。 

 せめてものユキカのことを思い出せて良かったなぁと思う。

 

 こんな最高の女性を好きになれて、良かったと思う。


 そして今日は……今夜の俺はユキにひどく甘えてしまったのだった。

 とことんいいとこ無しの俺でごめん、でも今だけは――

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