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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
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第197話 √2-2 G.O.D.

盛り上がってきた?

四月二一日



「…………!?」


 俺の瞳に映るのは、交差点でタクシーに撥ねられるユキの姿。

 発泡スチロールが弾かれるかのように彼女の華奢な体は宙を舞う。

 地面に落ちる頃には鼻や口から出血し地面へと衝突した時には体がぐにゃりをとひしゃげる――

 腕が有りえない方向へと曲がりアスファルトの灰色の地面に染みてゆく血だまり。

 変わり果てた彼女の姿に悶絶して、そして俺は――


「ユキイイイイイイイイイイイイイイイ」





四月二一日



「……!」


 目が覚めた。今までの事は、ユキが事故に逢った事は夢だったのだろうか?

 いや、違う。今までのは――


「おはよう主人公」


「……何してんだ、桐?」

「あれ、リアクション薄い」

「言ってるだろが、俺の部屋勝手に入るなって」

「……言ったよな、わし」

「何を?」


「おはよう主人――」


「どうもルリキャベの主人公です」

「自覚あるのか!?」

「ええ、まあ」

「……どこから、どこまで?」

「そりゃ……胸糞悪いユキが事故に遭うところから、前にお前がこんな登場したことまで」

「……まじ?」

「ああ」


「……お主にはまだ言っていないはずなのじゃが」


「は?」 


 桐は何を言い出すんだ? 


「このユキの事件はこれで一回目――」


 のはず……ん?

 

 一回目?

 

 ちょっとまて、なんで一回目とか、まるで次があるかのような表現を俺はした?

 この夢を見たのは今日が初めてのはずで……それなのに俺は、ユキの交通事故を”事件”と明確に表現している。

 意識せずに、桐が聞いて来たから俺は答えた……なのに、俺はその答えを知ってはいなかった。

 しかし、俺は言った。それも無意識に。 

 それに俺は何と名乗った”主人公”? それも、ルリキャベの……?

 ルリキャベは昨日買ったばかりの中古ソフトで、開封してプレイしようとして――そのゲームの、ルリキャベの主人公と俺は名乗ったのか?

 そして俺はこの桐の登場の仕方を知っていて――


 ……そんなこといつ俺は知った? 


 いつだ? いや、そんなこと過去にはなかったはずだ。

 四月の初めにこの高校にユイやマサヒロとユキ共に入って――それからは普通の日常だった。 

 桐はなんというか、俺にだけは変な口調で変な思考で……度々困らされていただけ。 

 どこにもそんな漫画の延長みたいなことは無かったはずだ、それで――


 俺は何か大切な事を忘れている気がする。


「あー、あー! とにかく、お主はユキを殺さない方法を考えなければいけないのじゃ!」

「…………?」


 言っている意味が分からない、ユキを殺さない?

 方法が見つからなければ、ユキは夢のように死ぬってこと……なのか?




「ユウジー、遅いよ?」

「ああ、悪い悪い」


 ユキは俺が遅れたせいで少々不機嫌であった、そんなふくれっ面かわいい! ……なんて、思っている余裕などなかった。

 ここまで、ユキの表情も会話の内容も時間も風景も天気も音も色も肌に感じる春の温かさも――


 ほとんど夢と同じだった。


 こんな偶然があっていいのだろうか? いやダメに決まってる。

 もし、これが夢と同じなら数分経たずして――そこで桐が言っていたことを思い出す。


『ユキが殺さない方法を考えなければならない』


 ユキを殺さない。つまりはユキが死ぬのが仮定事項にあるということなのだろう。

 あの夢のような、文字通り悪夢のような光景を、俺は見て……彼女を失ってしまうのか。

 それなら桐の言う、殺さない方法ってのはなんだ? 歩き方を、行き方を変えればいいのか、それとも――


 おい。


 なんで、ここまで考えられる? 

 もっと動転してもおかしくはない、もっと危機を持ってユキにそのことを伝えてもいい……いや、それは不審がられるか。

 だとしても、なんでここまで冷静なんだ?


 まるで、今までに同じ事があったかのように。ある種淡々と――


「待てっ」

「ユウジーっ! 手首なんて掴んでどうしたの? 遅刻しちゃうよ? わわっ!? な、なにするの、ユウジっ」」

「こういうのもたまにはいいだろ?」

「へっ? で、でも高校生だよ? こんなことして――」

「いいじゃんっ……それとも俺がこんなことして気持ち悪いか?」

「ううん! 別にいいの! いいんだよっ! うん、じゃあ手繋ご!」

  

 なんで、俺は手を繋ぐ? 考えるより先に体と口が動いてるじゃないか……なんでだよ。思考だけ取り残されっぱなしじゃねぇか。

 なんでこうも自信あり気にすたすた俺は歩くのか? ……足は止まらない、見えない誰かに操られているかのように俺は歩いて行く。


 そして走った。そうして交差点を越えた。


「……なんで走るのよぅ」

「いやー準備体操?」

「はやいよね!?」

「いーじゃないか」

「いや……悪いとは――」

 

 積極的だろ俺。なんというか俺は蚊帳の外で別の俺が積極的に動く。

 分からない、なんでこんなことになっているのか。そしてタクシーは後ろを通り過ぎてさりげに事故を回避してるし……

 なぜかユキの顔は紅潮してるし、わけわかんね!



 

 学校に着く頃までは俺の意識は届かず、昇降口で手が離れた時にようやく俺の意識が体へと戻った。

 まあ、そんな時には周囲のじとーっ、とした視線を頂戴する訳で――




 その後も色々あった。いや”色々”と省略するには躊躇するほどに、あまりにも様々な事があった。

 まず、一つ桐がやってくる。二つ男子勢に襲撃される。三つ嫌な程に視線を感じる。四つ桐、再来。

 そうして不機嫌そうな桐を連れて、家に戻るもとにかく絡まれた。色々やって追いだし、夕食風呂を終えて、やっとのこと自分乃時間。そうして今日の出来事に耽る訳だ。


「……なんだったんだ? 今日は」


 なによりユキが事故に遭う夢を見たことが俺にとって衝撃だった。それから体が誰かに乗っ取られたのも――


「とりあえず、寝るか」


 なんか今日は疲れた、もう眠気も迎えにやってきた。

 ユキが事故に遭うような悪夢に見舞われないことを願いつつ、俺は眠りに着いた。


 しかしこの時”明日は色々な事がありませんように(起きませんように)”と願うのを忘れていたのを大いに後悔するハメになる。

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